ローマでMANGA[78]ヨーロッパでアニメ化の構想/midori

投稿:  著者:  読了時間:11分(本文:約5,300文字)


90年代に講談社の「モーニング」が、海外の作家の書き下ろし作品を載せるという、前代未聞の企画を遂行していたときにローマで「海外支局ローマ支部」を請け負った。そのときのことを、当時のファックスをスキャンしつつ、それをもとに書いているシリーズです。

前回は夏休みで、番外編ベントテーネ島でのおじさんバンド演奏会について書きました。今回、また飄々とした作家ヨーリとの絡みにもどります。




●「ネームで打ち合わせ進行」がどうしても頭に入らないヨーリ

前回は1995年2月のミーティングの様子と、担当編集者からの苦情メールの話をした。正確な日付はおぼえていないけど、前年末に編集者がミーティングのためにボローニャへ赴いて、先に始めた大河物語「不思議な世界旅行」と、後発だけど連載を始めた1ページから4ページのカラーショート「ミヌス」の話し合いをした。

・ローマでMANGA[76]MANGA制作システムも変わるのか
< http://bn.dgcr.com/archives/20140619140100.html >

かいつまんで言うと、「不思議な......」に関して、話を進めるうちに、第一話を締めくくる顔をターバンで隠した巨大な黒人女がキャラとして深くなりそうなのがわかって、二人共ノリノリでアイデアを出していき、特に編集者はこの物語全体の構成のベースになる「読者に伝えるもの」にまで及んでいった。

でもそのへんがヨーリには伝わらず、結局欧米コミックスの基本である「何をするのか」というアクションに重点を置いたネームを送ってきて、編集者をがっかりさせた。

次のファックスはヨーリからの返事で、編集者の苦情メールからほぼ一か月経った翌月3月の20日になっている。「今度は僕のほうが返事が遅くなってごめんなさい」で始まる手書きのファックスだ。

手書きにしても、ヨーリの前に扱ったイゴルトの手書きとは趣が異なる。イゴルトは几帳面な小さな字で引用部分は大文字だけで書いたり、行間が字の縦の長さとほぼ同じくらい開けてあるので読みやすい。
< http://bit.ly/1qiOA4l >

ヨーリの手書きはすべて大文字で、しかも字が大きいので読むのに苦労はしない。ただ、行間が詰まり文字列がななめになったりして見た目が美しくなく、そうしたコトに頓着しない性格が現れておもしろい。
< http://bit.ly/1qiOI3W >

「遅くなってごめんなさい」の後は、「過酷な運命が日本への仕事はいつも二回やり直させる」とふざけてるつもり。ここに来ても、ヨーリはまだ、ヨーロッパでの仕事のやり方と日本は違うのだとちゃんと認識していない。

ヨーロッパでは始めに大まかなストーリー、キャラデザインでゴーサインが出れば、後は作家の孤独な作業でともかく原稿を上げていく。日本では、まずネームを出し、そのネームを元に編集者と作家が話し合うと言うやり方をどうしても理解しないヨーリだった。

今回も、編集者が言うからストーリーボードを出したけど、ヨーリにとっては中途経過報告。その中途報告で直しを要求されるとは、なんという悪夢! というわけだ。

ヘタな冗談には、ヨーリのおおらかな性格とともに、やり直しを要求された驚きが「過酷な運命は」の中にひとつまみの嫌味となって入っている。

おおらかなのに意外と頭が硬いのか、それほど育った環境というのは大きいのか。お友達のイゴルトの理解度を見ると、制作態度の違いとも思える。イゴルトは自分の作品を広げようとし、ヨーリは自身の内部を探ってアートするタイプなのだ。

●ヨーリ折れる

ファックスは続く。「確かにミーティングで『性の女王』は巨人にすることになっていた。物語の進行に気持ちを奪われていたので、それをうっかり忘れていた」。あのキャラのインパクトは巨人であることにも拠るのに。「やり直します。次はあなたが受け入れざるを得ないほどスペクタクルな絵になります!」

シンプルな絵柄でブラックユーモアの「ミヌス」についても、ミーティングでは「家族の話」ということで決着が着いたはずなのに、まったく違う設定でストーリーボード(ヨーリにとっての中途経過報告、編集者にとってはたたき台)を送ってきた。これに対する編集者の抗議にヨーリは、「家族に専念します。降参です」と答えた。

私の見方では、降参です、というより、ミヌスの三人家族という設定をボローニャのミーティングで決めたということをあまり重く考えてなかったか、忘れていたかだと思う。なかなか扱いにくい作家だ。すごく感じが良くて付き合うには楽しい人だけれどね。

●ミヌスのアニメ化

ヨーリの降参ファックスと同時に、他の二枚のファックスが届いていた。それはミラノのアニメスタジオがヨーリに送り、それを私に転送してきたものだ。

ヨーリが私にファックスしてきたのは3月20日、アニメスタジオのファックスの日付は3月8日になっている。つまり、アニメスタジオは言われたとおりに急いで見積もりを出してヨーリにファックスをし、ヨーリは「ストーリーボードができたら一緒に送ればいいや」ということで待っていたのだと思う。

ミラノのアニメスタジオ「Gertie」
< http://www.gertieproduction.com/ >

が、なぜ急に出てきたのかというと、実はイゴルトの時にも出て来ている。イゴルトはマルチプレイヤーだから、「YURI」を企画した時にMANGAだけでなくグッズ化やアニメも視野に入れていた。話を受けた編集長も担当編集者もそのつもりでいて、少しづつ話を進めていたのだ。

イゴルトはあの「AKIRA」のレベルのアニメにしたいけれど、アートディレクターを兼ねるとすると(誰かに任せるのは嫌)直接話が通じるのほうがいいので、イタリアのアニメスタジオと仕事をしたい......ということでこの「ゲルティ」を見つけてきていた。

イゴルトのおトモダチのヨーリも便乗(?)してアニメの話を始めた。講談社も集英社に負けず、アニメ化ができる作品をどの編集部も探していたからアニメに合いそうなキャラを見つけてアニメ化を模索するのはやぶさかではない。シンプルな形状でカラフルなミヌスはまさしくアニメにうってつけだ。

ゲルティのファックスには、大雑把に誰が何を担当するのかという提案とスポンサーについて書いてあった。アニメ制作にはスポンサー探しが重要だ。ゲルティはヨーロッパ側でイタリアの国営放送RAI、フランスのU.G.C.テレビシオン、チャンネルフォー、カナル・ピュルスと話をする用意があると言っている。

さらに、ゲルティと原作者のヨーリが講談社の監修の元、脚本、ストーリーボード、セリフ、音楽、レイアウト、演出、色の選択、アート・ディレクション、動画、背景、撮影、エフェクト、編集を担当する。講談社はヨーロッパの他社とともに経済面と広報を担当する。

この担当分担に対するご意見をお待ちするとし、このコラボに対する喜びの声も書いてあった。

担当分担に問題がなければ試作に入りたい。それについて(このファックスの日付の)翌月にボローニャで開催される国際児童図書展か、5月にフランスで開催されるアニメ・フェスティバルの機会に一度ミーティングの機会を持ちたい、ともあった。止まらずにどんどん進むアニメスタジオだ。見習いたい。

この後、イゴルトの「YURI」もゲルティがアニメ化を担う話のファックスがある。二作のアニメ化に関するファックスには、両方とも試作を10月の末までに制作できるとかなり具体的に話を進めている。

●消えたアニメ化の理由は日本的

しかし、アニメの試作を見た記憶はない。このアニメ化は消えてしまったのだった。このへんの経緯は、イタリアにいる私としては、つまりイタリア的メンタリティとしてはわかりにくいものがあった。

つまり、イゴルトが「YURI」企画を提案した時に、マルチで展開できると言ったのは編集部の方だった。イゴルトは同時展開を考え、アイデアを出し、編集者もそれに応えていった。特にYURIの場合は、読者プレゼントで様々なYURIグッズを作ったから、イゴルトから見ればマルチ展開が始まったと考えても無理からぬところだ。

ゲルティが出てきて、資金の話が出てきて、そのへんからアニメ化話しは少し怪しくなってきた。モーニングは漫画雑誌だから、まず雑誌掲載して、かつ読者に受け入れてもらえるように努力をする。その上でアニメ化の話が何処かから出てくれば後押しするのにやぶさかではない、というような話になったと記憶する。

モーニング編集部が方針を変えた、というよりも、編集部はMANGA雑誌を作るところであって、これまでも率先してアニメ化を進めたり、プロデュースしたことはないのは確かだと思う。アニメ化されれば本誌の売上げにも好影響を与えるので、例えば原作者である漫画家との権利関係に奔走したりするなどはやると思う。

こういうのができますよと、どこかに話を持って行くこともあるうるかもしれないけれど、そこまで編集部内部に立ち入ってないのでわからない。いずれにしても、間に入って翻訳と通訳をしていた私も、編集部が中心になってアニメ化を推進しているような印象を持った。それが段々トーンダウンしていったのも事実だ。

これには「異動」という、日本の大手会社の習慣も大きく関係していたようだ。担当編集者の堤さんはかなり長いことモーニング編集部にいて、この頃、毎年3月から4月の異動発表時期には反応が鈍くなったのだ。

これは私の想像に過ぎないが、ヘタにアニメ化という大きな動きに手を出した後に異動辞令が出てしまったら、果たして後続者が同じように考えていくかどうかは大きな疑問だったのではないだろうか。トーンダウンを考えると、堤さんの意識に何かが起こっていたとしか考えられない。

このあたりの話は次回に。

【みどり】midorigo@mac.com

朝日新聞とは実は「朝鮮日報」新聞の略だとどこかで読んだけど、確かに。慰安婦問題捏造記事削除の件です。

何年か前に、熟年のメーリングリスト(懐かしい!)で「従軍慰安婦は嘘だ」という話を投稿したら、メンバーの女性が「数多く性行為を強要された結果、子供を産めなくなった人だっているんですよ!」と怒りだしたのでびっくりした記憶がある。

そういう仕事をしてそういう結果になったことと、日本軍が強制連行したかどうかという話とをごっちゃにしてて、まるで話にならなかった。そういう人を多く作り出して、日本を守るために戦ってくれた同胞を穢し、外国や国連にも日本を貶める広報をした32年間の罪を、朝日新聞社は償うつもりが全くないみたい。一度解体していただくしかないと思う。解体してもその罪は消えないけど、少なくも日本国民の怒りを内外に知らしめなくちゃ。

また新しいこと始めちゃった。COMICO 無料マンガ 「私の小さな家」
< http://www.comico.jp/manage/article/index.nhn?titleNo=1961 >
(要ログイン)

縦スクロールでPCでもスマホ、タブレットでも読める無料漫画サイトだ。誰でも作品投稿ができるので、デジタル・ネット配信のMANGAに興味があったから試してみた。

ここ数年、寡作ながら日本に興味あるイタリア人のお友達向けに描き始めた私の幼少時の思い出を元にしたショート・エッセイだ。普通の紙媒体用の原稿にしあげている。これをスキャンしたものをそのまま投稿するのでは、せっかくのデジタルMANGAなのに芸がない。そこで、すべて分解して縦スクロール用に配置換えし、カラーにした。

紙媒体原稿ではコマの大きさやセリフの位置で読みのリズムを作って、読者に作中人物の感情を作り上げる。縦スクロールではどうやるのだろう、というのが興味の中心だ。

8月8日に第一話、17日に第二話を投稿したところ、第二話投稿の翌日には合計閲覧数が794も得ることができた。無名の作家で、スマホやタブレットでMANGAを読む層は若い人だろうから、その層にアピールできるような絵柄でも内容でもないと思うので、この数字はかなり大きいと思う。

閲覧数の他に「オススメ」というハートマークがあって、クリックされると数が増える。他作品はオススメの数しか見ることができない。ランキングトップの作品は3万個以上のオススメがついていて、ちなみに私は二話で20だ。
< https://picasaweb.google.com/102936978768158289322/xEckIB#6048966383808647650 >

「イタリアで新しい漫画を作る大冒険」(げー、全然更新してない)
< http://p.booklog.jp/book/77255/read >

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/ >