ローマでMANGA[104]編集者はつらいよ/midori

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行きます。

●長過ぎるセリフで説明している

前回のコラムで、生まれてまだ一年のアッパーコミックスの編集者を引き受けたと書いた。私が受け持つ4作について、Facebookのメッセンジャー上に4つのグループを作ってチャットができるようにした。

アッパーコミックスのこれら13作品のシステムはとても今風。ネットのキックスターターみたいなサイトを利用した、若手の新しいmangaです。応援してくれる人を募集します。とお金を集めて作家たちに報酬を払えるようにした。登録してくれた人にパスワードを渡して、今月から毎月ネット配信する。

私が編集者(サジェスチョン係)を引き受けたときは、第一回目の配信分はすでに原稿が出来上がっていた。




出来上がった原稿とセリフが書いてある脚本を、メッセンジャーを通じて送ってくれた。4作品とも共通して、主人公たちが特殊なパワーを持つ話。そういうのが好きなのは分かる。好きなものを描いた方が、ワクワク感みたいなものを作品に込めることにもなるしね。それはいい。

でも、問題ありすぎ。4作品に共通してセリフが長過ぎる。セリフで説明してしまってる。長い割にフキダシが小さい。必然的にフォントが小さくなって読みにくいことこの上ない。

第2回配信分はストーリーボードの状態で送ってきた。漫画界では「ネーム」と呼ぶのが普通で、この若者達も小畑健・大場つぐみの「バクマン」から「ネーム」という言葉を知っている。そして使いたがる。本当の漫画家に気持ちの上で近づきたいのね。

でも私はあえて「あなた達のストーリーボード」と言った。なぜならば、吹き出しの中にセリフが書き込んでないからだ。ネームと呼びたいなら、セリフも入ってなくては。ストーリーボードを見ながら、横に脚本を置いて読むのは本当にやりにくい。

「ストーリーボードにセリフを入れてネームにして」とアドバイスした答えは「無理。だって入らないもの」

「ぬぁんだとぅ! だからそれはセリフが長過ぎるっていう証拠じゃぁないか」とは言わず、優しく「だからね、ストーリーボードのフキダシにセリフを書き込んでみて入らなかったら長すぎ、フキダシが小さすぎっていうことでしょ?」と諭した。「えー、でもそんな小さい字は書けない」と、まだグダグダ言って納得がいかないようだった。

ここで匙を投げてはいけないと、既成のmangaを適当に見繕って1ページスキャンし、フキダシ全部に彩色し、セリフの部分だけ色をぬいた。こうして画面には変形の六文銭みたいなものがならんだ。

「フキダシの各コマに対する大きさを認識せよ」「各フキダシに文字部分が占める領域を認識せよ」「フキダシとセリフの間に程よい隙間があるのを確認せよ」と、「読みやすさ」というテーマで例をあげてみた。どのくらいわかってくれたかは疑問。

送ってくれたストーリーボードと脚本をざっと見て 、大きく手直しが必要だなと思い、その事を言うと、代表者のガエターノがあわてた感じで「ちょ、ちょっと待って。もう読者には1月9日から配信開始って伝えてあるし、楽しみに待ってくれている。もう払ってくれているのだから待たせられない。」と悲痛な叫びが上がった。チャットは昨年12月始めのことだ。

おもしろかったのは、チャットを始めた時は、メンバーが次々と顔を出して「面白い」とか、「ためになる」とか言っていたのが、だんだん静まり返って私だけがあーじゃこーじゃと発言していた。そしてガエターノの悲痛な叫びと相成ったのだった。

もうストーリーボードまでできてるものに関しては、あまりいじらないで、できる限り読みやすくなるように手を加える、と言うことにした。

ストーリーボードをプリントアウトし、フキダシの中にセリフを書き込んでいく。書き込みながら気づいたことをボールペンで記入し、デジタルで再度気づいたことを記入していった。

デジタルだとレベルを変えることで同じページの上に、フキダシの注意、アングルや大きさなどコマ変えた方がいい部分、など、項目別にサジェスチョンを作成できる。

でも、4作品について、全部のページを見直したわけではない。どの作品も60ページから70ページもあり、セリフで色々複雑な事情を説明し続け、その説明を基盤に次に進む構成なので、大幅な変更なしで読みやすく変えるのが無理になってくるのだ。

「もうこれ以上は無理」と匙をなげ、ともかく、作家は見直してなるべくセリフを削って少しでも読みやすくするように心がけてくれることをお願いして、4作品の見直しから解放してもらった。

正直、本当につらかった。まだ素人さん。お金を取るプロなのだから、少なくとも、プロになりたいと思っているのだから、「ああ、うまいじゃないの」とよいしょするのは意味はない。だから、真摯に直すべきところ、どうしてそうした方がいいのかを解説した。

イタリアはマンガ界の底辺が小さい。mangaに影響を受けた絵柄で描く子達がその底辺を広げている。少しづつ。そのお手伝いをできるだけしたいと決意を新たにする2017年なのだった。

●アッポペーン

ちょっと話は変わって……

昨年、ちょっと収入が良かった時に念願のiPadを購入した。iPadproとApple Pencilの組み合わせすごさを聞いていたので、ちょっと割高のproを奮発した。

色々と検証しているサイトを読んで、9.7インチに決めた。先に出たもっと大きい画面も魅力だったけど、性能が後出の9.7の方が上だということがわかったから。

奮発すると言っても出来る範囲は限られているので、wi-fiのみ、16GB。だって、容量が増えると値段がぐんと上がるんだもの。買えるだけでも有難や。

Apple Pencilも購入し、お絵かきソフトを入れて試した。すごくスムーズで紙に描くのとそれほど違わないなめらかさ、自然さ。

https://www.amazon.it/clouddrive/share/TMzGsw9L18dUuQmCbSpfwfhZQ0ttl8g9hQ3frTfr66r
↑iPad Pro+Apple Pencil+Sketchesというソフトのコラボ。ダウンロードした絵を最下のレベルに置き、上のレベルにソフトの筆で描いた。

本当はiMacに繋げてグラフィックタブレットとして使いたかったのだけど、いまだにスノーホワイトのデスクトップでは、iPad Proと繋げるソフトが使えない。スノーホワイトの上のバージョンにしてもいいんだけど、使えなくなるソフトがあるとかの話を聞いて、調べるのが面倒臭くてそのままにしている。

今年、収入を上げて新しいMacを買えば済むのでそれを待ってる。この件は、ここ何年も自分に言ってるのだけど,一向に実現しないのはなんでだろう?

当然iPad Pro用のカバーとキーボードも購入。アップル純正だと高いので別のもの。使い勝手は良かったものの、イタリア語を使う上で困ったことがあった。

イタリア語には母音にアクセントが付く。英語並びキーボードでも使えないことはないけれど、配列を暗記しないといけない。イタリア語配列キーボードがあるのならそれに越したことはないのでそうした。

でも日本語入力が困難。キーボードから入力できるけど、なぜか文字の選択窓がファイルの上部に出る。書き進めて下へ行くと、その窓が見えなくなってしまう。そして、数か月でキーが二つ使えなくなった。やっぱり純正の方が良かったのか。

キーボードはあった方が便利なのでキーボードだけ再購入した。アップルのデスクトップで選べる、小さい方の仕様にそっくりなキーボード。これもイタリア語配列にした。

こちらも日本語入力が不便。窓はファイルの上部に止まらずに降りてきてくれるけど、いちいち矢印キーで選択して、改行キーで選択する必要がある。長い文だと自分の思った選択がしにくい。

今、これをiPad Proの画面内のキーボードで書いている。この方使い勝手がいいから。画面の半分をキーボードで覆われるのが気にくわない。日本語って特殊すぎるのかなぁ。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

インフルエンザが大流行のイタリア。聞く人聞く人、高熱で倒れている。年が明けてから息子が倒れ、治ったら私が風邪の症状が出た。でも熱は出ないので、インフルエンザじゃなくてただの風邪だろうと、重い頭を抱えていた。

寒波が襲って軒並み零下になったイタリア。ナポリ在の元教え子が「29年生きて来て初めて零下と雪をここで体験した!」とFacebookで騒いでいた。その日、熱が出た。久しぶり。

MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/

主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
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