Scenes Around Me[02]写真を撮り始めるきっかけ/関根正幸

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今まで撮影してきた写真をどのように紹介していくかについてですが、単独に紹介できるものはともかく、多くの写真は撮影した場所や人物との関わりがあるので、時系列に従うのが良いとは思います。

ただ、最初期の写真は個人的な思い出はありますが、ここで紹介するのは気がひけるので、今回は高円寺岡画郎に通い始める直前に撮影した写真を紹介して、記録行為を始める以前の経緯について記すことにします。






現在、ほぼ毎日カメラを持ち歩いて何かしらの写真を撮影していますが、このような生活は、もちろん子供の頃から続けていたわけではなく、実は、20代前半までは写真自体を毛嫌いしていました。

もっとも、今と違って写真撮影に対する敷居は高く、相当の金を必要とする趣味だったし、父親もそれを知ってか知らずか、子供にカメラを触らせようとしなかったので、機械としてのカメラへの関心も持つことはありませんでした。

加えて、10代の頃は太っていることを気にしていて、写真になるべく写らないようにしていたのですが、それにもかかわらず部活の合宿での寝姿を同級生のカメラ小僧に撮られたことで、写真自体が嫌いになったのでした。

そのような状態から、写真に興味を持ち始めるようになったのは、次のような経緯でした。

元々クラシック音楽に関心があったのですが、上京後、現代音楽を聴くようになり、その関係で1987年の秋、ドイツ文化センターに「ベルント・アロイス・ツィンマーマンと戦後ドイツの音楽」という講演会を見に行きました。

そこで、テオフィル・マイヤーという声楽家がダダの音響詩(シュヴィッタース「原ソナタ」)を紹介、ダダイズムを面白いと思うようになりました。

Kurt Schwitters - Ursonate Kurt Schwitters - Ursonate


特にコラージュ(ツィンマーマン自身も様々な時代の音楽をコラージュする曲を作っていた)に関心を持ち、自分でもコラージュを作りましたが、素材として使うために証明写真機でセルフポートレートを撮影したことがあります。

Bernd Alois Zimmermann: Musique pour les soupers du roi Ubu(1966)


また、写真発明150年に当たる1989年に、伊藤俊治氏がNHK市民大学で写真の歴史を紹介するという番組「写真表現の150年 ファインダーは何をとらえてきたか」の放送がありました。

その頃は写真への関心が低かったこともあり、最終回をたまたま視聴したに過ぎなかったのですが、ジョエル・ピーター・ウィトキンという写真家の"The KISS"という写真を見て衝撃を受けます。

画像はネットで見られますが、グロに耐性がなければ閲覧しない方がよいので、リンクは貼りません。人体の頭部の標本で、中が見られる様に正面から二つに切断されたものを、キスしているように唇を重ねて撮影した写真です。

その番組で、他にシンディ・シャーマン、ロバート・メープルソープ、サンディ・スコグランドといった写真家の名前を知り、当時、現代音楽のCDを買うため通っていたart vivant(池袋西武の地下にあった)で、これらの写真家の写真集も購入しています。

こうして、写真に対するわだかまりがなくなったのですが、個人的に写真を撮り始めたのは、それとはまったく関係がなく、当時読んでいた雑誌の投稿欄に、トマソンや路上観察的なネタが紹介されていたことから、投稿のために「写ルンです」を使い始めたのがきっかけでした。

その後、大学のサークルの合宿に自転車で伊豆までツーリングした際、弟のカメラ(Pentax Zoom70X)を借りたまま使い続け、旅先の風景を撮影するようになります。

特に、前回触れたように中山道の道筋に興味を持ち始めると、中山道の周りの古くからあるものを撮影するようになりました。

そうして1990代の前半は、東京〜京都間の中山道をツーリングしながら写真を撮影していましたが、そのうち自分のカメラを欲しいと思うようになり、小型で写りの良いカメラを物色、Contax T-VSを1995年に購入しました。

当時のことを思い出すと、美術としての写真表現には関心があっても、それが自分が撮っている写真と地続きであり得るとは、まったく意識していませんでした。



今回、紹介する写真は1995年9月に「水の波紋'95」でのハプニングを撮影したものです。

「水の波紋'95」はベルギーのキュレーター、ヤン・フート(1936-2014)によって企画された野外美術展で、原宿〜青山の周辺の路上、団地、公園、寺、公衆トイレなどに作品が展示されました。

ちょうど、現在、全国各地で開催されているビエンナーレやトリエンナーレの先駆けともいえる展覧会です。

今回、ネガを見返したところ、「水の波紋'95」は、少なくとも二回展示を見にいって写真を撮影しています。

手元の資料が見つからないので、確かなことが書けないのですが、スタンプラリー的なものがあって、コンプリートした記念としてポストカードを貰った記憶があります。



上の写真はワタリウムの近くにある、原宿幼稚園の敷地内に展示された作品です。作家と作品名は不明ですが、おそらくFRPで作られた、子供の背の高さの男性の像が八体ほど並べられているのが確認できます。

下は、別の日にワタリウムのガイドツアーに参加した時の写真です。



原宿幼稚園に到着したとき、数名の園児が像と取っ組み合って、像を投げ飛ばしていました。像は大きさといい、重さといい、幼稚園児の遊び相手としては都合よかったのでしょう。

園児たちは私達がやって来たのに気づいてこちらに近寄って来ました。その時撮影した写真です。

ガイドツアーだったのでその場で多少の解説があったのかもしれませんが、記
憶にはなく、覚えているのは、園内のブランコに腰掛けて園児に注意されたことでした。

確かにブランコは大人の体重には耐えられない作りだったので、園児に詫びて立ち上がりました。

現在、現役の幼稚園を美術展の会場にすることは不可能だと思われ、その意味では時代を感じさせる写真ではあります。


【せきね・まさゆき】sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos

1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。