本来ならば前回の続きで、2004年に撮影したヨパクラの写真を紹介するところですが、2003年の小川てつオくんの誕生パーティーで披露された、パフォーマンスの写真が印象に残っているので、紹介します。
てつオくんは居候ライフを行なっていた時から、毎年12月11日前後の土曜日に、居候先で誕生パーティーを企画しました。
代々木公園のテント村に住むようになってから、てつオくんは自分のテント付近で開いたカフェ(エノアール)で、誕生パーティーを行うようになります。
特に2003年は、テント村に移ってからはじめての誕生パーティーで、大勢のお客さんが集まったように思います。
そのパーティーで写真家の富永剛総(ごーそー)さんと、ダンサーの十亀脩之介(かめ)さんは、朗読パフォーマンス「『なまず先生』を読む」を行いました。
てつオくんの父親(迫柳二)は、楡井耀三という筆名で小説を書いていました。迫さんは2007年に亡くなるまで、60年にわたって「死の中」という題名の小説を書き続けていたそうですが、未完に終わりました。
てつオくんと兄の恭平くんは、それまで迫さんに小説の発表がなかったことから、迫さんの口述を元に「なまず先生」という小説を完成させました。そして、「なまず先生」は恭平くんが運営しているキョートット出版から、2003年に出版されました。
http://kyototto.com/archives/174
そこで、ごーそーさんとかめさんは、てつオくんの誕生パーティーで「なまず先生」の朗読を計画したようです。ごーそーさんとかめさんは二人羽織のようになって、一人が小説を朗読し、もう一人が背後からライトを照らしました。
朗読するごーそーさん。ライトを持つかめさんも写っています。二人はときおり朗読役とライト役を交代しましたが、交代の際にライトを受け渡すようなことはしませんでした。
朗読役がそろそろ交代したいと思うと、すかさず、ライト役からライトを奪い取りました。そして、ライトを奪い取られた側は朗読役に回る、という形で役を交代しました。
とはいえ、ライト役は簡単にライトを奪われる訳でもなく、小競り合いになる場面もありました。
私は、パフォーマンスが始まった直後から面白いことが始まったと思い、二人にくっついて写真を撮りました。しかし、テント村は真っ暗だったため、簡易的な三脚を使用した以外、ほとんど手持ちの状態で数秒シャッターを開けました。
また、他の人が時折焚くフラッシュも頼りにしました。
朗読するかめさんを照らすごーそーさん。かめさんが本を激しく動かしながら朗読するので、ごーそーさんも本を追いかけてライトを動かしています。
今思うと、かめさんの動きは「なまず」を意識していたのかもしれません。
【せきね・まさゆき】
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http://sekinema.com/photos
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な、自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔