ローマでMANGA[162]ローマでコロナ/その10 マスクと消毒剤が普通になった
── Midori ──

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ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりして行くのが普段ですが、この時期、周りのコロナ情報もお伝えします。

●ステップ3を過ぎて

イタリア生活の軸ともいえるBARが営業を再開、レストランも再開。教会での葬式も可。映画館も再オープン。各種店舗も営業再開。久々に郊外の我が家から街へ出ると、空気が排気ガス臭い。生活が元に戻ってる実感がする。

しかしながら、すっかり元の姿に戻ったわけではない。様相の変化はまずマスクだ。日本以外で、冬場の感冒流行時にマスクをする習慣のある国はほぼ無い。マスクは医療関係者のものだった。それが街中で5割以上の人がマスクをして歩いている。マスクを顔につけていなくても、ポケットやバッグに入っている。





日に何度となく入る習慣のBARに入りたかったら、マスクが必要。飲むときは外すにしても。他の販売店舗も同様。スーパーマーケットも、入場にはマスクの着用が義務。だから外出時にマスクは絶対に持っていないと、コーヒーを飲めないし、店に入れない。

医療用不織布使い捨てマスクは一時の品不足が解消して、買うのに問題がなくなったのはイタリアでも日本同様。手作り、あるいはネットや洋装店で様々な柄の布製マスクを手に入れて、気合が入っている人も多々見かける。

老眼鏡をあちこちに置いてあり、一つはバッグに入っている。同じようにマスクもバッグに一つ、車に一つ置きっ放しにして、マスクがなくてコーヒーを飲めないとか、買い物ができないという事態が起きないように、準備万端にしている。

もう一つは消毒剤。どの店舗にも入り口には手の消毒剤が置いてある。熱を測る設備を設置したところも多々。マスク同様、品不足だった消毒剤も普通に買えるようになった。マスクと消毒剤が普通、という状態がしばらく続くんだろうな。

●開店状態

BARも店舗も、入口と出口を分けているところが多い。店舗の規模によるけど。マスクをつけて入店してください、とのお知らせと、消毒剤。床には入店方向を示すテープ。BARは普通、カウンターなのだけど、カウンターの端から1mのところにテープで印があり、背伸びするようにしてコーヒーカップを受け取る。

久々に学校へ顔を出した。友人の校長の娘と、しばらくぶりに食事を共にしようということで。学校もコロナ仕様。マスクを着用のこと、の表示があり、地下のメイン階へ続く階段は中央に仕切りがあって、足跡シールで下りと上りを分けている。

階段の横にデジタルの検温計があって、挨拶をしようと近づいた秘書課のエリーザに「ミドリ、すぐに検温して!」と、まず言われた。36.5度。入場許可が出た。そして、手の消毒剤、と手順は他の店舗と同じ。受付&秘書のカウンターには透明アクリルの仕切りがあるのも、店舗と同じ。

コロナ対策があちこちで整備され、普通の状態になりつつあるということか。町行く人のマスク顔にも慣れてきたし、テレビのコマーシャルでもマスク顔が見られるようになった。トーク番組では、ゲストのリモート参加か、1m以上離れた椅子に座ってのマスク姿が普通になった。

●空港もオープン

以下のビデオは、ADR(Aeroporti Di Roma・ローマの空港)社のもの。
ADR: Ripartiamo insieme.


再出発に向けて、対コロナ対策を完璧にしましたよー、という宣伝動画だ。

6月18日にヨーロッパ内の移動が可能になった。元教え子の一人が、母が住むブリュッセルへ遊びに行って、コロナ規制に遭って3か月母と暮らすことを余儀なくされていた。お母さんは喜んでいたみたいだけど。彼もやっと戻ってこられる。

短期間契約でADRで仕事をする息子も、3月にまた契約が更新されるはずだったのが強制待機となっていた。7月に大陸横断便もいくつか再開となる見込みで、やっと仕事に戻れそうだ。

息子の場合、短期契約を繰り返しつつも労働規約で年功は蓄積している。6か月契約がされない場合には、年功がゼロに戻るというのが規約なのだが、コロナ禍での強制待機で6か月を過ぎてしまった者(息子が最後に仕事をしたのが12月)に関してはこの規定に縛られない。

つまり、年功はそのままになるそうだ。年功は年金の計算に反映されるし、正規雇用への段階を上がる規定にも反映される。

●リモート授業で今期を締める

6月最後の金曜日で、わがユーロマンガコースの授業が終了した。交通事故で大怪我をした一人と、理由がわからないけど来なくなった一人を除いた精鋭8人は、リモート授業で欠席することなく全員参加を貫いた。

仕事があるからと、遅刻と早退を繰り返したマルティーノ君も全授業を参加した。仕事はフィットネス講師なので、仕事へ行けなかったしね。

私はこのリモート授業を大いに気に入った。一人一人、対で接しているように感じるのか、生徒側の集中力が上がっていたように感じる。私は通勤時間と駐車場所探しのストレスを感じないで済んだ。

ただ、卒業試験(講評)が9月になったため、製作時間が例年より多くなり、結果、生徒の気が緩んで、製作スピードが猛烈に遅くなり、プログラム通りに仕上げたのは一人だけだ。

ネーム制作の状態で放り出すわけにいかず、7月いっぱいは面倒を見る、ということにした。学校から残業代は出ないけど。

10月から始まる新学期では、これまでの3時間授業から4時間授業にすると学校からお達しがあった。その上で、ウィルスの状態がどうなるかわからないので、半分対面で、半分リモートで、とミックスで授業構成をすることにしたそうだ。

自粛の影響で、経済的な問題が大きくなった家庭が増えたのは想像に難くない。義務ではない専門学校では、「お客さん」が減ってしまう可能性が大いにあるわけだ。学校では、リモートで誰でも参加できるワークショップを盛んに開催して宣伝に努めている。

先日、2年生を対象に、3年の専門コースを選ぶためのコース案内をリモートで行った。予め、生徒は説明に参加したいコースを選んで申し込み、参加希望者の名前とメールアドレスが秘書課から担当講師に送られる。

我がユーロマンガの説明参加希望者は11人だった。そしていざ蓋を開けてみると、実際に参加してきたのは8人。

来期からイタリアマンガコースを外すから、希望者が増えると思うよ、と学校側から言われていてちょっと期待したのだけど、思惑からはずれた。

コースに参加する生徒が多くなると、クラスを一つでは足らずに二つに分ける必要が出てきて、すると講義時間が増えて、報酬も増える、という皮算用を一瞬したわけだ。でも、増えると、ストーリーボードを見直す量が増えて、時間外労働が増えるから、やっぱり少数精鋭でいいのだ、と思い直したり。

自主企画作品にかかる時間を増やしたいしね。

●目に見える過渡期

新コロナで生活がちょっとづつ変わって来ているのは、最初に書いた通り。これは移動にも及んでいる。政府が自転車、電動自転車、電動スケーター(キックボードっていうのかな?)の購入に補助金を出すことにした。イタリアでは電動スケーターやセグウェイで、公道を走ることができる。

排気ガスを増やさず、公共交通機関の密を少しでも緩和しようという作戦とお見受けした。これを受けて、多分、各市で○○%の道路に自転車専用レーンを作れというお達しが政府から出たものと思われる。我が、ローマ郊外の市でも盛んに道路整備をして、自転車専用レーンを作っている。

いつだって様々な分野で過渡期なんだけど、コロナで目に見える過渡期を体験してる気がする。意識してその見える部分を気にして行くと、変化がどう起こるのか、どのように浸透して行くのかがわかって面白いかも。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】
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○九州地方の豪雨で被災した方、お気の毒です。お見舞い申し上げます。人ごとと思わずに、ぜひ皆さんも事前に対策を。日本は河川の多い国ですから。気象予報士・防災士の資格を持つ弟のブログで、7月4日にアップした「自宅の災害危険度の事前確認:気象災害編」が参考になるかもです。
http://web.sugiyama-u.ac.jp/~yamane/


○ソーシャルネットで知り合った若者から、作品の批評を頼まれることが多くなってきた。時間が取られるわ、消費した時間に対する対価は出ないわ、と思う反面、mangaが広まってくれるのは嬉しいので、ちゃんと応えるようにしている。ちゃんと答えて、その若者がちゃんとわかってくれて、別の人に伝えていってくれればいいなーと思いつつ。