ローマでMANGA[2]壮大な計画
── midori ──

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ローマのみどりです。

前回、こんな風に終わりました。

日本にイタリア、ヨーロッパのコミックスが入ってこないのは、知らないから。この絵の強さで物語を進めていく読み方に慣れていないから。

日本に絵の強さを紹介する。イタリアにMANGA文法をもっとわかってもらう。これを一人でがんばらないで、組織立てて行ったら、新しいマンガ構築という夢がかなうかな……と思い始めました。

学校に日本の新人賞に応募するコース、というのを提案してみました。これについては次回………


●紆余曲折

ご存知のように、日本のマンガ雑誌には必ず新人賞があって、デヴューに直結している。これに、イタリアの漫画家志望者たちの作品を送ってしまおうというわけ。

今までもこれを試みたことはあるのだ。MANGAセミナーで「新人賞っていうのがあるよ」と言ってみたりした。わずかな人数が、勝手に作ったものを仕上げてくる。レベルは低いが、とりあえず条件は満たしているので、言った手前訳して送った。結果は、今、イタリア人の作家が日本で活躍していないことを見てもお分かりだと思う。

勝手に作ってもらってもだめだ。MANGAの構築法や見せ方をもっとわかってもらわないと。作品を作りながら手直ししていかないと、個人個人で状況が違うから、十把一からげに説明するのは無理。

それで、私の講義に最後まで出席した子と、講談社海外支局時代に知りあった子を招いてグループを作ってみた。住む場所がまちまちなので、ネットを介することにした。そこでそれぞれ作品を作って、ラフの段階からアップしてみんなの意見を聞く。誰が見てもわかる作品に仕上げて行く。……という段取りのはずだった。

ネット環境が十分でない子、生活のための仕事が忙しくて作品に全然とりかかれない子、熱心な一人が言った言葉にえらく憤慨してしまった子……などでこの6人グループはあえなく空中分解。

だいたい、片手間にやるっていうのがまちがいなのか……。そうだ、MANGAセミナーを発展させて、私も仕事として新人を育てるということをすればいいじゃないか! とやっと思いついた。

●「いい事だらけの計画よ」

日本のマンガアニメを見て育って日本に憧れる漫画家志望者達。でも、どうやってコンタクトを取っていいのかわからない。

MANGAセミナーに来てくれる学生も、2年生になって授業時間が合わなくなると来なくなる。7ヶ月の間、週に一回来たり来なかったりで、言葉で説明できることだけを一通り聞いただけでMANGAの構築法が身に付くわけではない。だいたい、コマ割りなんて、何度も何度も何度も何度も作品をつくらなければ、体でわからなければわからない。ないないだらけで、MANGAセミナーはあまり効果を出さないできている。

学校の授業の一環ならば、学生に作品を作る時間がない、とは言わせないし、定期的に顔を合わせるから丁寧にサジェスチョンを与えることができる。翻訳作業やその他の事務的なことを、私は用事の合間をぬってではなく、ちゃんとその場でできる時間があるということになる。

正直言って、新人賞に入賞して日本でのプロデヴューになるとは思っていない。少なくもすぐには。感覚的な問題なのだけど、MANGAがもつ読みのリズムをすぐに表現できるようにならず、日本の編集者はまずざっと読んだだけではね除けるだろうと思うから。

これに対処するのは、制作する側としての歴史作りと、卓抜した絵の技量の持ち主を送り出して編集者の度肝を抜くことだと思う。

この度肝を抜く、事を繰り返して、少しづつでも日本の漫画界のプロにイタリアの漫画を植え付けて行く……。イタリア人MANGA家志望者の作品を一点、また一点とこの世に出現させることでイタリアのマンガ界にも少しづつ少しづつ影響を与えて行く……という壮大な結果につながるはずの「新人賞応募作戦」なのだ。

そしてなんとも都合がいいことに、3月23日に講談社モーニングから特別エディションの雑誌「MANDALA」が出る。日本、韓国、中国、シンガポール、フランス、イタリアの作家が参加し、ストーリー性よりも絵の強さをコンセプトにした、ヨーロッパコミックスに近い雑誌だ。

このお手伝いをした時に「絵のうまい新人はいませんか?」と編集さんに言われて、一も二もなくMANGAセミナーに顔を出したDE LUCAを推薦して、彼の作品も載っている。

講談社という総合出版社から出るから、日本での認知度に期待できる。イタリアの大御所達が描いているから、イタリアコミックス界への波紋も楽しみ。何だか私の思惑を進めるのに都合の良い出来事ではないか!

後は、ちゃんと学校側と話をつけて日本の新人賞応募コースを立ち上げるのみ!

【みどり】midorigo@mac.com
春ですねぇ。春は草木がよく伸びて、広大な果樹園を内包するわが家では、作業に事欠きません。冬の間にリンゴの木が二本、桜が一本、杏が一本枯れてしまったのを発見。リンゴの幹には大きな溝ができていて、虫がついたらしい。後は理由がわからない。ただ水をあげてればいい……というわけではないらしい。農作業は奥が深い。

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