ローマでMANGA[24]「デ・アゴスティーニ」一色の年
── midori ──

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毎年繰り返しているけど、「えっもう12月? 今年も終わりなの? はや〜」を言う季節になってしまった。他の筆者の方が、今年を振り返るとか10大ニュースとか、年末にふさわしい話題を提供されているので、わたしもそうします。

と、言いつつ脱線。節を設けて、始めと終わりに区切りをつけるという考え方がイタリアにはない。ヨーロッパにないと思う。例えば、日本ではないことが考えられないであろう学校の入学式や始業式、終業式、卒業式なんていうのはない。本当ですってば。

今なお記憶に新しい、息子の小学校初日。いきなり授業で、涙の跡も生々しいノートに「Roma 14 settembre Daniele Luly」とたどたどしく書いたものを見せてくれた。

イタリア(多分西欧では)では、文書を、それを書いた場所と日付けで始まるのが常識で、国語の時間にまずその習慣も教わったわけ。これは、初めて学校というものに行き、今までと全く違う環境におかれる幼い子にとっては暴力にも等しいと、入学式、始業式がある国から来た私は強く思ったのだった。



入学式では、校長先生はじめ先生方と顔合わせをし、学校を案内され、物理的に新しい環境と対峙すると同時に、心理的に「さぁ、新しい世界が始まるぞ」という覚悟ができる。これは大きな意味があると思う。ちょっとよそ行きの服を着て気持ちが改まり、よそ行きを着た父兄に連れられて新しい環境へ。

ちょうど、教会の結婚式で、父親が花嫁の手をとっててバージンロードを進み、神の前で娘の手を婿の手に渡す儀式のように、父兄の手から学校の手に渡すという覚悟を、父兄も子供も先生方も気持ちに刻むことができる。そして、翌日の始業式では普段着で、でも授業はなく特別な日。これから立ち向かうことについて漠然とした認識をすることができる。

初日からサックをもち、ノート広げて「Roma 14 settembre Daniele Luly」はないでしょう。昨日まで自由に歩き回っていた子を、一時間椅子に座らせて。

そういうわけで、大晦日に新年という感覚は日本のように大げさではない。大晦日のちょっと前にクリスマスという大イベントを終わらせて、あとはおまけなのだ。二日から平常だし。冬休みは学校だけで、「お屠蘇気分」なんていうのは元旦を限りに終りです。終りと始めをきっちり味わうことはない。

幼い頃「初こぼし(醤油瓶をたおしたりして)!」「初おなら!」などと弟と騒いで、いちいち新鮮に感じていた国から者にとっては、なんともだまされたような気分を味わう年末年始でありまして、年末に今年を振り返るなんてとんでもない! とぼやいてないで、せめてここで、振り返るとします。

仕事関係は、なんといってもデ・アゴスティーニ一色の年だった。本社編集部の口うるささに閉口して、この仕事をくれた編集者が抜けてしまい、実際の製作を担当するグラフィックデザイン事務所の人と直接やり取りするようになった。この事務所もこうした週刊誌の仕事は初めてで、オーガナイズがうまくいかず、予定よりも製作に時間がかかって、何度もスケジュールを調整しつつ、今年の終りにようやく分担をはっきり決めて、誰が何をやってるのかよく分からない状況を抜け出せた。

私もあれもこれもやらされていたのを、レッスンの執筆、それにともなう絵描きさんとの調整、日本人作家のページの編集業務に収まった。来年もこの仕事はまだ続くけど、今年のようなひっちゃかめっちゃかな作業ではなく、スムーズに、日曜日はちゃんと休んで家事ができたりする状況になるとおもう。

デ・アゴスティーニの仕事に関連して、「Partita IVA」という「付加価値税の納税者登録番号」を申請した。複雑なイタリアの税務に関する法律の海を渡るのに必要なのだ。

イタリアに住む人は外国人(イタリア国籍を持たない)も「税務番号」を所持するのが義務づけられていて、携帯や車や家を買う時、オンラインで電車や劇場の切符を買う時、病院で手当を受ける時、今や外国に荷物を送るときも記入を求められる。子が生まれると、出生届と同時に適用される。

で、法人になるとPartita IVAがいる。私は会社組織じゃないけれど、「自由業」という個人法人になる。これがないと、被雇用者でもなく、法人でもない人の(一般税務番号を所持するだけの人)「偶発的業務」年間収入5000ユーロ(約65万円)を超えると税金がぐんと高くなるよ、とデザイン事務所の人に脅かされて、会計士のところに出向いてとってもらった。

この「個人法人」は年間収入3万ユーロ(390万円)まで税率が変わらない。しかも普通の法人のように、必要経費を落とすことができる。最近、大きなものを買って「法人領収書をお願いします」というのが得意で仕方がない。会計士への支払いが生じるけどね。まだ年度末を経験してないので、税金をさらに払うことになるのか、逆に返ってくるか、まだ分からない。初めてのことでちょっと楽しみ。

コミックスエージェンシー・ネコノアシの活動はデ・アゴスティーニのみになってしまっているけれど、MySpaceとサイトを通じて日本から二人コンタクトがあった。ひとりは小説、漫画、ペーパークラフトの作家さん。もう一人は漫画関係の企画出版をする出版社に務めていたけれど、イタリアにも興味があるのでローマで語学留学をする、という方で「何ができるかわからないけれど、是非お手伝いさせてください!」と元気な25歳の女性。「まだ、仕事らしい仕事がなくて、報酬は払えないと思うんですけど...」にもめげないので、ぜひとも将来に向けて、コンタクトをとり続けていこうと思う。こうやって、期待されるのは嬉しい。

仕事に関連して、個人のニュースとしてはiMacをついに買ったこと。二年越しでいつかいつか、と思っていたのでニヤニヤ笑いが耳まで裂けてしまっています。ついでに息子も大きな画面と大容量に喜んで、動画を入れたりゲームを入れたりしています。おいおい、息子よ、君はMacBookを使うんじゃなかったのか?21.5インチの横長モニターは今までの15インチとは比べものにならないほど見やすい。ファイルをたくさん開けても、必ず隅っこが見えるので迷子にならない。ちょっと画面が明るすぎる気がしたけど、一か月たったら慣れてしまった。

MacBookからすべてのデータを移行して、使い勝手もそのまま。ただ、MacBookはHDDが壊れて入院させたとき、アップルショップの人がHDDを取り替えてHDDの名前をMacBookにして、それもそのまま移行されたので、私のiMacのユーザ名はMacBookで、それが気に食わない。名前を変える方法はあるのだろうけど、私の手には負えませんのでそのまま。

個人ニュースでは、6月の年度末に理数系高校に通っていた息子が3年に進級できなかったこと。イタリアの高校は5年制で、専門に分かれていて、手に職がつくようなカリキュラムになっている。例えば、観光業、電気電子工学、ホテル・料理、教師、航空、航海、会計・税務などなど。

それ以外だと、大学進学を前提とした理科系高校(シェンティフィコと呼ばれる高校。「科学」というわけ。偉そうでしょ)と文学系(こちらはクラッシコ「古典」)と芸術系の三種があって、これは手に具体的な職がつかない。いわば進学校。バシバシ落とす。ほとんど国立だから生徒はお客様ではないわけ。息子は特に何になりたいという希望もなかったので、中学時代につるんでいた友達が行く理数系高校に決めて、散々な成績をもらってきていた。

もうラテン語はいやだ! と、留年ではなく、ラテン語のない専門高校編入に決めた。決めた先は電気電子工学高校(これも国立)。電気電子に興味があるわけじゃないんだけど、息子としては、勉強が厳しくなく、ラテン語がなく、バンドが続けられればそれでよい。そういうわけで、もう一度2年生をすることになった今年。10点満点で6や7を取るようになって、親も心静かに暮らせるようになった。

来年の抱負。ネコノアシで何か、新しい漫画の動きを作る土台になるようなことをしたい。デ・アゴスティーニの仕事のスケジュールをどうにかして、日曜には庭木の剪定とか、果物摘みとか、炭火オーブンを使ってパンを焼くとか、田園生活を楽しめるようにしたい。

さ、どこまで出来るかな。というわけで、今年一年ありがとうございました。来年もローマから新しい漫画への道を発信します。

【みどり】midorigo@mac.com

11月の末、ローコストでデンマークへ、さっと旅行をしました。日にちは選べず、夜着いて朝出発なので、2泊でも実際に動けるのは1日だけ。でも往復2700円だから何でも許せてしまう。私も旦那も南志向なので、北欧はこういう機会でもないと行かない土地。ぱっと決めてぱっと行く、というのが気に入って、またやるかも。コンピュータは持っていっても起動する暇もないので置いていった。おかげで頭と目を休めることができて、これも気に入った。

では、皆様、良いお年を?! こちらではクリスマスを控えて、カロリー摂取への覚悟を決めております。イブは魚、クリスマスは羊です。

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