ローマでMANGA[31]日本のMANGA言語とイタリアの才能を混ぜて新しい漫画を作る!
── midori ──

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●あ〜〜、ついに中途退職!?

前回、デ・アゴスティーニ「MANGAの描き方」シリーズのアート・ディレクターとの食い違いの話をした。

私はテーマに沿った内容から入ろうとする。あるテーマで漫画を作るときに、どうしたらいいかと考えようとする。ディレクターは絵から入る。テーマに沿ったキャラを「でっち上げ」、その背景を「でっち上げ」る。それがデ・アゴスティーニの欲しいものだから仕方がないのだけど。

電話でグチグチと1時間半から2時間かかって文句を言われるのに、若干というか、だいぶ嫌気がさして、ボスに「違った認識で書かなければならないようですと、私には難しい仕事です」とメールを書いたせいか、しばらくグチグチはなくなっていた。しばらくおとなしかったディレクターから7月頭に電話があった。またもや、グチグチと怒り、だが、今回は1時間半ではなく30分で「良い日を!」という嫌みで電話が切れた。

「いかにもやる気のない文章だ」などというのは、まったくその通りなので、それについての反論はない。ただ、ああ最早これまで! と思ってしまった。このシリーズを実際に制作している、グラフィック・スタジオのボスにメールを書いた。



「各号のテーマの切り口などディレクターと話し合い、互いの意見を言います。それで結局採用されるのは彼の意見。提出されたラフの点検をし、その後私がオーケーを出して、それに対してさらにディレクターが直しの要求をする。私の文章の切り口が彼の意見と違い、長短についても間違いだとされる。つまり、双方で時間の無駄。私は使えないものを作って報酬を泥棒しているのと同じこと。そちらさえよければ、私がこの仕事から手を引くことを提案します」と書き送り、めでたく承認された。

仕事を中途で放棄するのは、なんとも気持ちが晴れないけれど、どう考えても双方無駄なことをしているのは事実なので、選択は間違ってないと思う。

同時に受け持っている同じシリーズのウエブサイトの方では、私(と、コミックス・エージェンシー「ネコノアシ」の相棒ジョルジャ)はスタッフ、登録者ともに受けが良く、ミステリーである。冊子ではこんなに仕事ができないのに。こちらでは、私たちへの更なる参加要請ともに、報酬アップが決まった。

ウエブの報酬は、額で言えば冊子のほぼ並みの月給から見ると1/3であったのが、並みの月給の半分くらいまであがる。つまり、月額人並みの給料+1/3だったのが、人並みの給料の半分、ということになる。正直生活に不安があるけれど、思うように仕事をして評価されるのは嬉しい。

これを基盤に、ますますMANGA好きのイタリア人のために、知っていることを惜しみなくお届けして、新しいMANGAが生まれる基盤を作りたい。さらに人並みの給料が得られるようなお仕事に発展すれば言うことなし。

●MANGA言語解説ビデオを企画

デ・アゴスティーニの冊子は、今やめてもやめなくても、100号で完結。永遠の仕事ではないので、その先を考えているところだった。今すぐ報酬とは結びつかないけれど、MANGA言語を解説する10分程度の動画を作成して、YouTubeで順次アップししたらどうかというアイデアが生まれた。

ジョルジャと二人でおしゃべりしながら、なるべく簡単にMANGA言語を解説し、それに関連する日本文化にまで言及してしまおうというもの。YouTubeでアップしたものをコンテンツとし、それをDVDや本にする。

と言ってたら、ウエブのスタッフがこの話をおもしろがった。そのビデオブログをサイト内でやらないか? と言ってきた。私たちは本も絡めて、一緒にやらない? と持ちかけている。自分たちで小さな出版社を探して細々と出すよりは、デ・アゴスティーニというネームバリューを利用できるなら願ったり叶ったりだ。

実現すれば、初めて日本人(と、日本とMANGAを理解するイタリア人)による、イタリア人のためのMANGA解説書になる。デ・アゴスティーニのウエブ担当者が乗っても乗らなくても、ともかく自作ビデオ→本はやるつもり。

●相棒ジョルジャのプロデュース能力

コミックス・エージェンシー「ネコノアシ」を一緒に立ち上げたジョルジャは、プロデューサーの能力があるみたいなのだ。彼女は、ローマのコミックス学校の校長の娘で、教務課長として次々と新しいアイデアを出していった。今、毎年行っている東京のアニメーター学院への二週間の体験留学も、発案から実施までジョルジャが原動力になっている。

30歳過ぎて、途中で放棄してい大学卒業を目論み、仕事の合間に勉強をして、次々に単位を取り、あと2単位を残すのみになった。その中で書いた論文を手直ししてあちこちに売り込み、興味を持つ出版社を見つけ、今年9月に出版が決まった。まず、自分へのプロデュースを行ったわけ。

次に、学校で「視覚コミュニケーションの歴史」を教えている先生に、本を出さないかと持ちかけた。この先生の授業には私も何度か出席したことがあり、わかりやすい解説から得た「ものの見方」は私の授業にも役立っていて、私も「本を出せば?」と言ったことがある。

ただ、彼は頭がすごくアーティストで、思いや知識やアイデアはたくさんあるけれど、現実に結びつけるのが今ひとつ下手。いま彼の能力を知るジョルジャがお尻を叩き、思いと知識を言葉に出させ、本にすべくイントロとエンディングを決め、その中間のつながりを埋めつつある。

イタリアMANGAの描き方の本も、ジョルジャのプロデュースで動き出す。いつかやりたいと思っていたことのひとつだ(いつかやりたいことは他にも、地球を外から見る、というのがある。これはまったく別の話だ)。ジョルジャは動くとなると、方法論を組み立てどんどん動くから、きっと実現する。娘といっていい年齢の友人と組んで、実現に向けて動くのは楽しい。

エージェンシーも、当初はイタリア人作家の作品を日本に売り込むことを主な業務にと考えていたのだが、日本の現在の市場では、ほとんど現実的ではないことは、何度か日本でいろいろ出版社と話してみてわかった。

コミックス・エージェンシー「ネコノアシ」はイタリア内部に向かおう、ということになり、MANGAの描き方の本とビデオを手始めに、やっと私の夢である「日本のMANGA言語とイタリアの才能を混ぜて新しい漫画を作る」プロジェクトが動き始めた。

【みどり】midorigo@mac.com

はいはい、そうです。民主党のおかげで私はすっかり保守に目覚めました。「保守」というと「右翼」で、目を吊り上げて、はちまきして日本刀持って、自分の主張だけ声高に押し通す、通らないとキレる──というようなイメージを漠然とお持ちの方もいらっしゃいましょうが、日本を日本として保ちたいという素朴な思いに目覚めただけ。

米世論調査機関ギャラップの調査によれば、デンマークが世界で一番幸福な国となったそうだ。消費税25%、所得税45%、でも出産費用はじめ、小学校から大学までの教育費、病院の入院、治療費、葬儀代まで国家が負担する。食料自給率は300%、エネルギー自給率156%を達成している。支払った税金が、確かに自分たちの生活を支えているという信頼があっての高税。そして投票率は80%を毎回下らないそうで、国民のほとんどが政治に関心を持っている。学校では歴史の授業に重きを置き、「正しい歴史」教育を通して自国の成り立ちを知り、次世代が何をすべきかと若者自身が考え、若いうちから政治に関心を持つ、のだそう。

それが私の言う「保守」。国民が政治に関心を持てば、多数を嵩に懸けてマニフェストにない闇法案の成立を謀る政党や、つまらない揚げ足取りばかりで、政治家を正しく評価しないおかしなマスコミのあり方にも疑問を持ったりするだろうに。

(『なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか』ケンジ・ステファン・スズキ著/合同出版)

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