武&山根の展覧会レビュー コントと思えばよくわかる──【会田誠展 天才でごめんなさい】を観て
── 武 盾一郎&山根康弘 ──

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武:こんばんは!

山:こんばんはー。

武:ああ、今展示中なんだ! 代官山と取手と鹿児島と上尾。あと、多賀城だ!

山:さっそく宣伝かいw しかし、いっぱいやってるね〜。


武:代官山はARTS RUSH『クリスマス展〜For you〜』
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20121209/1355050986
>

取手は『祭りか?山か?』
60人(組)出展者がいて、駅のガード下通り、長屋、バー、一軒家が展示会場。
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20121209/1355051800
>

鹿児島は『ART INSIDE HOUSE,KAGOSHIMA』
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20121201/1354326576
>
民家に作品をというコンセプトで活動するピカレスク主催の展示です。
< http://www.facebook.com/picaresquejpn
>

上尾の原市アースカフェ
< http://d.hatena.ne.jp/Take_J/20121025/1351195085
>

そして宮城県多賀城市のGaong
< http://www.gaong.net/
>


山:あ、そう言えばめずらしく僕も展示してた。まだやってるんちゃうかな。

武:へー、どこそれ?


山:心斎橋の「チルコミタリ」ってお店ですね。もう3回ぐらい出させてもらってるんかな。ここはとにかく飯とワインがほんとにおいしいので、近くの方は是非食べに行ってみて下さい!
  < http://www.circomitali.com/
>

武:うまそうだねw


山:という訳で、今回は森美術館、会田誠展に行って参りました!
< http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/index.html
>





●【会田誠展 天才でごめんなさい/森美術館】


武:行ってきましたギロッポン。現代美術ど真ん中、大竹伸朗以来だよね?
  < https://bn.dgcr.com/archives/20061122140200.html
>

山:そうやったっけ。


武:あんまり現代美術のレビューやってないじゃんw

山:草間彌生は見たぞ。
  < https://bn.dgcr.com/archives/20120516140200.html
>


武:あー、草間彌生かーw なんか「過去の人」なんだよなあ。。会田誠さんはど真ん中だと思うよ、ニポンの現代美術。

山:ってか、美術館での初個展なんやな、それは意外。個展はいっつもミヅマでやってたってことなんか。
  < http://mizuma-art.co.jp/top.php
>


武:へー。全然知らなかった。会田誠さんは確かに「スター」なんだけど、特別な存在というよりかは当たり前の存在に近いので、どう書いたらいいのかちょっと考えてた。

山:最近特に何も思わないんよなー、展示見ても。


武:ぶっちゃけながらすんごく深いところまで言及しようとあれこれ考えてたんだけど、もう酔っぱらってるので忘れてしまった。。よし、ちょっと酒とってくるw

山:もう酔っぱらってんのか!


武:もどりましたw さてどうしましょうか。

山:どうしよっかね。まずはタイトルですかね、「天才でごめんなさい」。

武:会田さんって多分自分のことを天才だとは思ってないよね。打合せで「そのタイトルはオモロい!それで行こう!」とかなったのかなあ、「興行的にイイ!」みたいな。


山:「奇を衒(てら)うことで逆に普通感を出して、結果すごいと思わす」みたいな。

武:おー、うまいこと言うねー!

山:そうおもた。


武:もう、それで今回のこと全部言っちゃったじゃん!

山:会田誠作品って全部そんな気がするが。

武:チャット終わってもたw


山:おつかれさんした〜

武:おつかれ〜、いやあ、酒が美味い! ...いや、そういう訳にも行かないだろ!

山:そうすかw


武:不思議なのは、では、なぜ今、スターなのか。


山:売れるから。

武:なぜ売れるのか?

山:買う人がいるから。


武:三潴さんの尽力かw ビックリするほど混んでたじゃないですか。そして作品を観ようとする観客の集中度も高かった気がするんですよ。みんな興味津々と観てたのが印象的だったよ。


山:そんなびっくりするほど入ってたか?

武:俺、もっとガラガラだと思ってたw

山:そりゃないやろw 好きな人は多いんやろうな。あ、僕も別に嫌いじゃないですよ。


武:俺ね、会田さんの噂を聴いたのは新宿で描いていた時だったんだけど、最初に絵を見た時の印象が「あー、好みじゃないなー」だったんですよ。モチーフやテーマや思想はすんなり受け入れられるけど、絵の雰囲気。絵心を刺激しない絵、感性や情緒に訴えない絵の描き方、というのかな。

  無機的な説明図で、面白さはその説明の内容にある。けれど「絵」にはない。そんな感じが「好みではない」かったんですよ。それが第一印象だった。ただ、会田誠さんという人には興味を抱きました。

山:確かに言語的な絵やね。ダンボールで作った『新宿城』も展示されてたな。


武:ああそうそう、『新宿城』。あれは当時、新宿西口地下道段ボール村があって、コミュニティーが存在してて、そこに絵が描かれた事実がなければ作らなかっただろうね。ソースは俺たちじゃん。まあ、結果として事象を持っていかれたわけなんだけど。

  当時は「俺たちに触発されて作品を作った人がいたんだ」という解釈だった。「段ボールハウス絵画>>>>(その事象に乗っかって作られた)新宿城」だったよ。今、こんなこと書くと負け犬の遠吠えみたいで胸が痛いけどさ。まあ、でもホントにそうだったよ。

山:ふむ。


武:で、今や押すに押されぬ大スターの展覧会を観て思ったのが「面白いじゃん!」。というよりか、なんだかちょっと嬉しかったな。かなり深い所にまで思考の「入れ子」を作ってるのも分かってよかった。


山:たぶん、酔っぱらっていろいろ難しいことやくだらないことを喋ってるかのように、描ける人んなんやろね。

武:まあ、そうだとすると「天才」なんだけどね。

山:そうやなw


●会田誠=20年後に美術界に来た「だめ連」?


武:会田誠の雰囲気を一言で説明すると「だめ連」なんだよね。
  < http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A0%E3%82%81%E9%80%A3
>
  働いてるし、家族も持ってるけどね。どういうことかというと、学歴エリートが学歴エリートらしからぬ行動をとった時の落差ダイナミズムによって学歴エリートが解放される運動ってことなんだよ。

山:ほう。


武:「だめ連」って名の知れた大学を出た人たちだけが解放される運動なの。面白く見えるから無学歴の連中も群がったけど、結局そこには目に見えない壁があるわけさよ。「だめ連」の運動自体がエリート主義を前提とするものだったからさ。

  会田誠さんってまさにこの「だめ連」なんだよね。だらしなく見せても「学歴エリートがそんなことやってるんだ! カコイイ!」とむしろオシャレに見えるのってあるじゃん。若いアートエリートたちはほとんどが会田誠さん大好きなんだよね。そこにはそういった「だめ連」的な要素があるからなんだろうなあって感じるよ。


山:でも実際には会田誠の周辺には美大出身じゃない人も多いな。

武:その状況もだめ連と一緒じゃん。

山:でも、だめ連とは違うことになってるなw


武:だめ連と会田誠さんは関連がないように見えるけど、なんつか、匂いが一緒なんだよなあ。90年代に起こっただめ連ムーブメントが20年遅れて美術界に漂流して来た感じはする。エリート主義を前提とするエリート性の瓦解。というか、解放。

山:じゃあある意味、起こるべくして起こったと。


武:そう考えると趣きがあるよね。だめ連って風穴を開けたわけだけど、その先駆者は今も貧乏w その後が高円寺「素人の乱」てのは、だめ連の(見えにくい)核である左翼性を払拭して、食えてる人たちになって、リア充になって有名になってる。

  これはまるまる会田誠さんの弟子筋の「チンポム」にあてはまる。会田さんの東京芸大主義的なるものを払拭させてリア充に有名になっている。まあ、会田さんはだめ連の人たちより全然食えてるけどさw

山:それはそれで、よくわかるけど。


●画家の個展として


武:あと感じたのは、「六本木ヒルズで個展をするってのはきっとエキサイティングだろうなあ!」てこと。有名な外国人の展示だったら「へー、おもしろいじゃん(またはつまらないじゃん)」で済んだけど、個展になる作家の気持ちとか、そういうのを感じてドキドキしたな。


山:けっこうな量の作品あったからな。

武:残ってるからね。俺は残ってないからな。なんだか勝手に自分に引きかえて観たよ。


山:いっつもだいたいそうやないかw 僕はもう、そういう風には感じなくなったからなあ。今はそうは観れない。

武:まあ、それはそれでいいじゃん。

山:そうやね。嫌ではない。


武:で、今の山根はどう見たわけさよ。

山:どう観たんかなあ。

武:感想ないんかい!


山:二日酔いでめっちゃ喉かわいて腹減ってたからねー。その割には長くいたけど。っていうか、武さんとはぐれたから、武さんを捜してたんやった!携帯をなくしてたからなw


武:俺は面白かったんであちこちのアトラクションに引っかかってたwそうそう、画家の展覧会というよりかは、アミューズメント・パークだったよね。見世物小屋的な。そこが面白かった。アーティストとして食えて、デッカイところで個展できて、羨ましいなあ。


山:あ、むしろ最後の山城知佳子さんの映像作品が良かった。
< http://www.mori.art.museum/contents/mamproject/project018/index.html
>

武:会田誠じゃないじゃん!!


●画家は自分で絵を描くものなのか?


山:えーと、なんか思わんかったかな、思い出そう。あ、初期の方が、絵がうまい、と思った。うまい、というのか、面白かった。

武:初期は自分で描いてるからだよ。

山:え? 今自分で描いてないの?


武:なべちゃんこと渡辺篤が描いてたw 会田さんも描いてるけどね。

山:え? そうなのか! アシスタント使ってるのか。なるほど。それは知らなかった!

武:普通知ってるだろw 村上隆さんだって自分で描いてないじゃんw


山:知らんかったわ。会田誠はずっと一人で描いてんのかと思ってた。

武:会田誠さんは画家のテイで売ってるところあるからね。そういうイメージにしておきたいんじゃないのかな。


山:そうかー、なんかそれはちょいと残念ではあるな。

武:あと、デッカイ作品プリントだったじゃん。プリントの上から描き足してたよね。

山:それはわかったけど、なーんも思わんかったw


●画家の立身出世術


武:それにしても気になったのはどうやってあのだらしがないスタイルで立身出世していったのか、「処世術のすごさ」、だよね。チンポムは会田さんにステージに乗っけてもらったから、アイデアで勝負するわけだけど、会田さんはそもそも「どうやってスターダムにのしあがるか」、からやったわけで。村上隆さんや奈良美智さんはジャパンポップとかで集団の力を使ったでしょ。会田さんはそこら辺はひとりな感じする。


山:"村上隆さんや奈良美智さんはジャパンポップとかで集団の力を使ったでしょ">これは海外に見せる時に、ってことちゃうの。会田誠もスーパーフラットに出てたし。村上隆キュレーション、か。

武:スーパーフラットなんだ。そう考えると村上隆すごいなw


山:なんと言うのか、思いつきの的確さ、みたいなんがあるんかな。こんなの描いちゃったらおもしれーな、とかをきっちり描いちゃう、描けてしまう。誰かやってそうでまだやってないこと、ってのをどんどんやってた、とか。それが的確だったから、ウケる人にはちゃんとウケる。

  アホそうに見せて、ちゃんと考えられてたりするので、喜ばれる。ちゃんとしてたんやねw いや、ちゃんとしてるんですよ。近作はよくわかんないんだけど。


武:バランス感覚とても優れてるよね、会田さん。

山:そうなんやろね。


●美術作品のライブ感


武:会田誠にしろ村上隆にしろ、作品そのものにはドキドキしないんだよね、無感覚な仕上がりというか。作品の意味で見せるというか、現代美術ってそういうものかもしれないけど、作品そのもので感覚が揺り動かされたいんですよ。

  あ! 分かった!「好みじゃない」ってのは、絵が意味っぽいとか、ナンセンスでエログロだからとか、オタク文脈利用しすぎだからとか、乗っかり系だからとか、そういうんじゃなかったんだ。音楽が聴こえないからなんだ。

  会田さんの絵からは音楽は聴こえてこない。パウル・クレーからは聴こえてくる。俺の好みってそういうことだったんだ。村上隆も聴こえない。奈良美智のは聴こえる。チンポムってちょっと音楽なんだよね。そういう感じで、俺は美術作品の好き嫌いを判断してるんだ。


山:単純にライブ感なんじゃないの。

武:会田誠ってライブなんだけどね、今回の展示を見て改めて分かったけど結構ライブだよ。ライブなんだけどコントのライブね。コンセプトと言葉のライブ。音楽じゃないんだよね。


山:だから武さんは「線譜」って言ってんねやな。自分の絵を。

武:天才でごめんなさい。

山:誰がやねんw

【会田誠展 天才でごめんなさい/森美術館】
< http://www.mori.art.museum/contents/aidamakoto_main/index.html
>
会期:2012年11月17日(土)〜2013年3月31日(日)
会場:森美術館(六本木ヒルズ森タワー53階)
開館時間:10:00〜22:00(火曜日のみ17:00まで)
※ただし1/1(火・祝)は22:00まで 会期中無休
※入館は閉館時間の30分前まで
入館料(税込):一般1,500円、学生(高校・大学生)1,000円、子供(4歳〜中学生)500円

【武 盾一郎(たけ じゅんいちろう)/私は売れっ子画家になる最中です】
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