もう20年も前のことだけれど、講談社の「週刊モーニング」が海外作家の作品を掲載していた事があった。
既出のものを日本語に訳して掲載するのではなく、日本の作家と同じように打ち合わせをしながら、書き下ろしを制作してもらうという企画だった。その折、ローマの海外支局として、わたしがイタリア人作家のお世話をしていた。
企画は時期が早すぎたのか、読者に受け入れられる事なく終わってしまったが、プロの漫画家たちには大いに刺激になったようだ。そして、参加した海外の漫画家たちにも。文化的にも意義のある企画だった。
その企画の中にいた者として記録を残しておく意味で、イタリア人作家と編集部のやり取りを中心にこれを書いている。
あっけらかんとした、画家であり漫画家であるマルチェッロ・ヨーリが自分をキャラにした「不思議な世界旅行」が出発しようとしていた。
既出のものを日本語に訳して掲載するのではなく、日本の作家と同じように打ち合わせをしながら、書き下ろしを制作してもらうという企画だった。その折、ローマの海外支局として、わたしがイタリア人作家のお世話をしていた。
企画は時期が早すぎたのか、読者に受け入れられる事なく終わってしまったが、プロの漫画家たちには大いに刺激になったようだ。そして、参加した海外の漫画家たちにも。文化的にも意義のある企画だった。
その企画の中にいた者として記録を残しておく意味で、イタリア人作家と編集部のやり取りを中心にこれを書いている。
あっけらかんとした、画家であり漫画家であるマルチェッロ・ヨーリが自分をキャラにした「不思議な世界旅行」が出発しようとしていた。
●ヨーリに許した焼き直し
海外作家を起用する企画では描き下ろしが基本だったが、ヨーリの作品はすでに発表された作品の焼き直しを許可した、数少ない例だった。
すでに発表した作品は15ページのオールカラーで、男性向けファッション雑誌に掲載された。ヨーロッパでは基本的にすべての版権は作者に属するので、一度掲載された作品をどこへ売ろうと自由なのだ。
15ページでとりあえず完結している。物語構成が変わっていて、このシノプシスを日本の新人が編集に見せたらボツにされるんじゃないかと思う。
ちゃんとした始まりがなく(主人公ヨーリが何処の誰なのか、なぜ旅に出たのか説明なし)、ただひたすら状況が変化していく。ヨーリはアクティブに何かするのではなく、状況に翻弄されつつ結果としてヒーローになる。
ヨーリは状況が変わるたびに妙な存在と関わる。今、書いてて思ったけれど、わらしべ長者のような構成なんだ。
わらしべ長者は、主人公が道に落ちている藁を何気なく拾うことから始まる。アブが飛んで来てそれを捕まえて藁に結びつける。子どもが面白がって欲しがるのであげたら、親からお礼にみかんをもらう。さらに進むと牛車が止まっていて、中にいる貴族の女性が渇きで苦しんでいるとのこと。持っていたみかんをあげるとお礼に絹の反物をもらう......
ただ、わらしべは一つのものから次の段階へつながりが説明されるけど、ヨーリの物語にはそれがない。
キャラのヨーリが出会った存在は以下のとおり。
北海で飛行競争をする鳥と酔ったくじら。
疲労した兵士を笑わせる特訓を受けた黒人の子ども。実は笑い死にさせる兵器。
アフリカで訪れる旅人に子どもを孕ませてもらう絶世の美女。
その美女から生まれた子どもたち(母と旅人の行為の後、旅人を殺す)。
赤い湖の象(美女は死に至る病の病気をうつす。この象の鼻から放射される水を浴びると助かる)。
青いシャーマン。
最後に出会ったシャーマンが、ヨーリがなぜ不思議な旅行に誘い出されたのか説明する。
男性ファッション誌に掲載された話は、この後ヨーリが自宅にいて、奥さんが妊娠9か月の場面で終わっている。いつの間にか戻っていて9か月も家を空けていたのかといぶかしんでいる。戻りたかった場所に戻れて幸せだが、何故かつねに監視されている感じを持っている。
編集部に持ち込んだ時は、この最後が変わっていて、ヨーリはこの不思議な旅をして生き残った唯一の存在で、シャーマンに儀式を教わってヒーローになる。
話として面白いかどうかはともかく、ヨーリの頭から出てきた妙な存在達は、確かにぶっ飛んでいて興味をひかれる。
担当編集はすぐにこの部分に気がついて、「主人公が世界旅行をしながら次々と様々な驚異を経験していく」という構想自体は面白く思えるので、これを基に日本向けに構成しなおし、次々に物語を描いていく気持ちがあるならば検討に値する」と言ったのだった。
そして条件を三つ出した。
1:各話読みきりで、カラーなら8ページ、白黒なら32ページ以内。
2:主人公の存在をはっきり描く。主人公が経験するものとして描く。
3:すでに描いた話は描かない。
この条件、特に1と2を守ることでMANGAの構成に近づいていく。
ただし、前回にも書いたけれど、アフリカの絶世の美女と息子の話はぜひとも残したいと懇願して許可を勝ち取った。ついでに、鳥と飛行器の空中戦もちゃっかり新構成に組み込んでいる。
アフリカ女性は、編集の助言を得て、その姿に不思議さを増しグラフィック的に魅了されるキャラに成長して、感心しきりだった。
●再構成に登場する妙な存在。
一話読み切りで各話でキャラ・ヨーリは妙な存在と出会うので、作者・ヨーリは13回分の妙な存在を創設した。
1:ヨーリを家から連れ出す黒尽くめの謎の男。
2:巨大な赤いサメ
3:空飛ぶエイ
4:パイロットになったヨーリと空中戦を交える鷲
5:アフリカのワツシ族と暮らす叔父
6:顔をベールで覆ったワツシの女
7:ヨーリの両親(思いで話)(母の体内を旅する父)
8:黒豹に囲まれている絶世の美女
9:絶世の美女の去勢された息子たち
10:赤い湖の象
11:寺院
12:青いシャーマン
13:ある存在ではなく、風変わりな儀式。
8から12まではオリジナルの物語にあったものだから、ヨーリの中ではとても重要なものだったのだろう。
このシノプシスがそのまま作品になったのではなく、編集との話し合いを経て、少し形を変えていく。それは次回に。
【みどり】midorigo@mac.com
主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>
参院選、終わりましたね。ねじれが解消されてホッとしてます。これで、様々な法整備が着々と進み、日本の沈没が免れる公算が大きくなって来ました。
自民党信者ではありませんが、日本の現状、世界の現状、特アの現状を見るに、本当に日本のことを考えている国会議員を多く抱え、外交経験の豊富な、そして命を賭して頑張っている安倍首相に期待して自民に入れました。
息子が高校を卒業。イタリアの高校は専門にわかれ、5年制。ほとんどが公立で、学費がかからないけどバシバシ落とします。息子も一年ダブりました。5年生の学年末の通信簿上で可が出ても、その後に控えた全国一律高校卒業試験に通らないともう一度5年生。
100点満点で66点にて無事通過。良い成績ではないけれど、卒業できて息子も親もホッと一安心です。今、心置きなくリラックスして夜遅くまで映画鑑賞、翌朝はお昼ご飯時に起きるという怠惰をしてます。卒業試験に備えて、日本の大学受験生並みに根を詰めて勉強していたので、許してます。
9月から大学へ進む予定。大学生活や就職やひょっとしたら結婚など、人生の問題はまだまだ次々と出てくるけれど、子どもの成長を見る幸せを味わっています。