講談社のモーニング編集部が日本人以外の作家を起用して、描き下ろしを掲載するという、前代未聞の企画を進行した時に、イタリア人作家と編集部の仲介をするという嬉し楽し仕事をしていました。その時の記録の意味を込めて書いているシリーズです。
今は、「幸運が服を着て歩いている」楽天的なヨーリとの関わりを書いてます。
今は、「幸運が服を着て歩いている」楽天的なヨーリとの関わりを書いてます。
●契約書事始め
1992年の7月に話が出てから三か月を経てヨーリと編集部で掲載作品の詰めがドンドン進み、ネームのOKが出始めるようになった。
前回、「欧米では契約が基本。カトリックでは生まれて洗礼式、10歳頃に聖体拝受の式、14歳で堅信の式を経てキリスト者となるけれど、神様との契約のようなものだ。結婚の宣誓も神様との契約だ。だから離婚は契約違反となり、離婚した人はミサの終わりに行われる聖体拝受(キリストの肉を象徴するパン。これを口にすることで神と一体になる)をできないし、再婚の場合は教会で式が挙げられない。で、編集部は慣れない契約作成という作業にはいり、11月から12月半ばまでは契約書作成に関するFAXが主な内容だった。」と終えた。
「12月半ばまでは契約書作成に関するFAXが主な内容だった。」としたけれど、その後、翌年1993年の1月のFAXを、ブィーーン、ブィーンとスキャンしたところ、ほとんどが契約書に関することだった。
2月はまだ二日分の3枚しかスキャンしてない。1日と19日で、日が開いてるのはその間、病院で出産し、子どもに黄疸が出て入院が長引いていたのだった。記憶が一気に山の中の病院の病室やら、小さく丸まっていた息子の面影に飛び移ったが、ヨーリの契約書には関係ない。
私も人並みに日本で社員になったことがある。でも、その時に会社と契約書を交わした覚えはない。50人ほどの規模の会社で社長と面接して採用になり、月々の給料の額とボーナスは夏と冬に一か月づつは最低保証する。会社の景気が良ければプラスがあり得る、と口頭で伝えられた。そしてそれはそのとおりに履行され、2年間勤めたうち、一回ボーナスに約束の一か月分+上乗せになったことがあった。
このシリーズの最中、エッセイ漫画を同じモーニング誌に描いていたけれど、それに関しても原稿料その他の契約書を交わさずにいた。口頭で伝えられた原稿料はちゃんと払ってくれた。
今、長年イタリアにいて契約書なしで仕事をするなんて信じられなくなってる。なんだか、今は日本でも契約書を作るよね? 作るでしょ? と考えてしまう。信頼が基盤の社会ってすごいと思うけど、これもまた別の話だ。
なにが言いたかったかと言うと、編集部ではこの海外作家の企画を通して初めて契約書を作ることになったということだ。ヨーリの前に仕事を始めたイゴルトとも契約書を作ったはずだけれど、この頃一斉に契約書を作ることにしたのかもしれない。私に対しても契約書を作ってくれた。
初めてのお仕事だからモデルがいる。当時国際室と呼ばれていた国際版権の部署の助けを借りて、英語でできたさる作家との契約書を基本にすることにした。
●初めてお目にかかった契約書
正式契約書は英語で作り、日本語訳とイタリア語訳をそれぞれ内容把握のために持つことをパリ会談で決めていた。
イタリア語訳は私が担当した。日本語の契約書なんてお目にかかるのは初めてだ。イタリア語では、例えば電気や電話の契約に契約書が付くので見たことがある。あ、大事な契約書といえば家を購入した時、何枚にも渡る契約書を見てサインすらした。
でも内容を事細かく読んだわけではない。イタリア人の旦那が読んでOKしたのだから大丈夫だろうと絶対的信頼を置いていた。日本にいたときは被扶養家族だったから、電気やガスの契約などは親が担当していてそうしたことには関わっていない。
だから法律用語なんて日本語でも知らないのに、イタリア語訳には大いに頭を悩ませた。眉間のシワが深まったのはこのせいに違いない。ググるなんてことができない時代の話ですよー。それでも、むしろこうした用語のほうが辞書に文例として出ていたことが多かったような記憶がある。英語版も送ってくれていたので、これも参考にした。英語の70%はラテン語起源だそうなので、確かに学問用語などはむしろイタリア語に似てたりする。
話は横道にそれるけれど、こういう作業をすると、意味を表す漢字と音を表すひらがな・カタカナ併記の日本語ってすごいな、と思う。読み流すだけでも大体何が書いてあるかわかる。漢字が目に入るだけで意味がわかるからだ。ひらがなと混ざっていてキーワードは漢字だから、漢字の意味が判れば文の内容がおおよそわかる。
ヨーロッパ語の場合は全部アルファベット。全文ひらがなかカタカナだけで書いてあるものを想像してもらえばわかる。音声だけを示しているのだから、ぱっと見ても意味はわからない。
時々、ローマのコミックスフェアでワークショップ等やらせてもらう時、解説文のメモはイタリア語と日本語を併記しておく。喋りながらチラッとメモを見れば、日本語の漢字ですぐに目指す項目を見つける事ができる。そしてその横に配置したイタリア語を見る。
ざっと(「ざっと」と言う言葉が醸し出す素早さとは程遠い)訳した後、旦那にも見せてイタリア語としておかしくないようにしてもらった。
契約書は早い話が責任と義務と権利を具体的に明文化することだ。作家の責任と義務は作品を提供すること。出版権を講談社に与えること。報酬を得る権利を有すること。
出版社の方は、作品を刊行すること、受け取った生原稿を保管し、作家から要請があったときにすみやかに返還すること。これはデジタルでやりとりできる今だったら心配のない事項だ。
出版社のほうで明確にしておかなくてはならないのは、宣伝などに使用する場合にさらなる報酬を発生させないこと(二次使用とは別)。雑誌内の掲載予告を含む宣伝で作家に報酬が発生すると制作費がかさんでしまう。
それと掲載の都合によってセリフの変更などをする場合、それを作家が許諾すること。日本とイタリア(ヨーロッパ)では社会事情や習慣、メンタリティが違うからそのまま訳しては意味が通りにくいこともあるし、言葉遊びをしてもらっても訳しきれなかったりする。
もう一つは、出版後に他者と権利関係のいざこざが起きないこと。作家に、提出された作品がパクリではないことを保証してもらう項目は絶対に必要だ。
さらに、出版社が対価を払って、つまり投資をして作品を制作するわけだから、なるべく出版社に得になるような権利関係を築く。著作権はあくまでも作家にあるけれど、日本国内外の出版に関しての権利を主張しておく。
後は、具体的な作品タイトル、作家と出版社の正式名称と住所、対価の具体的価格、対価の受け渡し時期とその方法、そして銀行のデータが銘記される。
と、要約してしまうと実に簡単だ。それでも英語をもとに編集部が制作した日本語版を私が訳し、作家に見せて、気になる箇所をあげてもらい、編集部と折り合いをつけ、それをまた日本語版にして、それをイタリア語に訳して、正式に英語版を国際室に作ってもらって、無事に提出にこぎつけるまで実に3か月かかった。
次回はまた作品制作に戻る。ヨーリの大冒険が進む。
【みどり】midorigo@mac.com
こちらはお小遣い稼ぎ大冒険だ。アフィリエイトは稼げるかもしれないけど、稼ぐためのプログラム購入が必要とわかったので断念した。
「家でできる仕事」などと適当にキーワードを入れて検索してて「ウエブライター」なるものの存在を知った。それで見つけたのがこれ。「女性の美学」。web企画というところが出しているサイトだ。
< http://josei-bigaku.jp/writerrec/
>
顔出しできること、100文字55円からで、1000文字から1800文字程度の記事を書くこと。少なくも週に15時間は作業時間が取れること、という条件だった。すべてクリアできるので、すぐに応募要項に記入し、テスト記事を書いて送った。審査の結果が来て採用を見送るとのこと。理由は社外秘だそうで教えてもらえない。「バーさんだからだめ」ということかもしれないと憤慨しつつ、別のウエブライター募集を見つけた。
「たった数分でお小遣い稼ぎができる」まぁ、なんと魅惑的なキャッチ。
< https://www.blogrepo.net/
>
早速登録して4つほど記事を書いて送った。募集テーマがいろいろあって選べるけれど、自分の知識の範囲が狭いのとキーワード二つだけ(例えば「wifi」と「世界」)で500文字をでっちあげるって、簡単そうで難しくてテーマを選ぶのに悩みまくり。これも審査があって二週間くらいかかりますということだけど、まだ音沙汰がない。
もう一件手を出したのは電子書籍だ。いろいろ電子書籍に関する電子書籍を買って読んだりしたところ「電子書籍で儲けようと思ってるならそれは無理」らしい。でも昔から出版には興味が大有りなので、手を付けずにいられない。
とりあえず、「長く書けるテーマで解説本」が売上を狙えるとのことなので、ここで書いていることを下地にパブーで本を作り始めた。まともな量になったらPDFかePUBにして(どうやるのかまだわからない)アマゾンで売るつもり。これは月一の更新(予定)。
「イタリアで新しい漫画を作る大冒険」
< http://p.booklog.jp/book/77255/read
>
で、結局お金にならないのにやることだけを増やすというドツボにはまっていくのだった......。
これもそのひとつ↓
主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>