ローマでMANGA[86]パルンボ「CUT vs ○○」シリーズがE-mangaでスタート
── midori ──

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使えなくなってきた前口上をとりあえず......。

90年代に講談社のモーニングが、海外の作家の書き下ろし作品をのせるという前代未聞の企画を遂行していたときにローマで「海外支局ローマ支部」を請け負って、そのときのことを当時のファックスをスキャンしつつ、それをもとに書いているシリーズです。

時代が進んで、Macの一体型Performaが作業用に入ってきたので、ファックスはPerfomaの中なのだ。あ、Performaの当初はメールではなく、内蔵ファックスを利用していた。

その頃登場したイタリア人漫画家三弾目、パルンボの話を前回から書いている。南イタリア出身の辛抱強いパルンボは、堤さん、竹中さんと担当が代わり、何度もダメを出され、それでも頑張って何度でもネームを出してきた。

そうこうするうちに、モーニング編集部内に変化が起こる。大手会社には異動というものがある。外国人作家企画が始まってから、担当編集者が何度か、今度は自分の番かもしれない......と、リアクションが悪くなることがあった。

外国人作家企画の縮小が始まり、竹中さんが異動になった。もう一人モーニングから出された編集部員がいた。新さんがウェブ現代に異動になった。

電子版が話題になり始めた時期で、講談社も「週刊現代」のウェブ版を実験的に作っていた。その中の特別版でE-mangaのページを製作した。

外国人作家の縮小が始まって、紙のモーニング誌にはスペースをもらえなくなってきたが、ウェブだったらスペースの心配はない。




竹中さんがいなくなって、担当が不在のパルンボに対して新さんが手を上げたのだ。新さんの性格で、おずおずと、という感じでパルンボに初めてコンタクトを取ったメールは、他の探検者が価値がわからずに見落として行った宝ものを拾ったインディアンジョーンズという感じだった。あるいは、片想いの相手が失恋したところで、おずおずと告白した感じ。

初めてパルンボの作品を「ピエ友」で見たときから、パルンボのユーモアセンスが気に入ったのだそうだ。いつか一緒に仕事をしたいものだと思っていた、と編集者としての喜びに溢れたメールだった。紙ではなくてウェブ版だけれど、という申し出にパルンボに異議はなかった。

新さんは編集者としてちゃんとパルンボ作品「CUT」の構成を考えていた。CUTは「スラップスティックコメディ」として捉えたいというものだった。

主人公の髭もじゃ長髪CUTを仕返し魔として描いたらどうか、各エピソードでなにかされて、必ず仕返しをする物語にする。結果として美女にモテても構わない。

毎回「CUT vs ○○」とする。なるべくアクションを多くして、台詞は最小限度にとどめる。一話16ページ。このアイデアはパルンボの意にもかなって、大いに乗り気だった。

たくさんの編集者がいる週刊誌と違って、E-mangaは新さんの一人舞台だ。編集会議を通す必要がない。だから、パルンボと作品の傾向を決め、長さを決めたらウェブに掲載されるのにさほど時間がかからなかった。

パルンボはパルンボで、前の二人の担当とのやりとりで「ネーム」についてわかっている。仕事が早い人で、ネームも結構描き込むけれど、直しも早かった。そうして出てきた、新さん版第一弾CUTが「vs タクシードライバー」だった。

ある道でCUTと美女が同時にタクシーを止める。タクシーはCUTを無視して美女を乗せて出発してしまう。CUTは、猛烈ダッシュでタクシーを追いかけ、ドアノブにつかまる。

タクシーは構わず突っ走り、ゴミの入ったポリバケツなどを蹴散らしながら進みCUTの髪にはバナナの皮などが刺さる。CUTはタクシーによじ登り、フロントガラスからタクシードライバーを脅かす。

タクシーはそのまま走り、目的地のホテルに着く。そこはCUTの目的地でもあった。CUTは美女と手に手を取って中に入る。

イタリアで出版されたCUTの表紙。(サイトはフランス)
< http://www.bedetheque.com/BD-Cut-Palumbo-Cut-240466.html
>

しっかりしたパースの背景と、正確な解剖学知識に基づいた人物描写のリアルな表現でのありえない状況の物語は、そのギャップで、ギャグマンガにありがちな滑稽な絵で表現するのと違う効果があった。担当の新さんも満足だった。

パルンボが出してきたアイデアから、アクションをもっと派手にして、例えばバナナの皮がCUTの髪に刺さったりしたらどう? というサジェスチョンをしたのは新さんで、パルンボはそれをすぐに受け入れた。

そして、パルンボも乗って、どんどん大げさなアクションアイデアを出して新さんを喜ばせたのだった。

そして、このE-MANGAでは、新しい試みをした。それについてはまた次回。


【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】midorigo@mac.com

人並みにスマホを手に入れた。NOKIAのLUMIX。TRE(3)という名の電話会社の商品で30か月浮気できない代わりに、月に10ユーロで電話が手にはいり、2GBのネット使用で電話し放題。

これはダンナがすでに「3」を使っていて、家族の誰かの携帯を「3」にしたら、あなたと同じ条件で......という宣伝電話がかかってきて私がそれに応じたのだ。申し込んで一週間後、宅配で電話機がやってきた。

へー、電話であれもこれもできるんだ。小さな画面なのに老眼の目でも文字が読みやすい。言語も選択でき日本語で入力もできるように設定できた。へー、これはすごいね。

ところが、差し込んだSIMカードがブロックされてて、電話器として使えない。二日ほど待ってみたけれど埒が明かず、土日になってしまって作業がお休みになるイタリアだから週末は期待してもダメだろうと、おとなしくして週明けを待った。

それでもブロックされたまま。「3」の販売店に二か所行ってみたけれど、どうしてブロックされているのかわからない。ダンナが「3」のお客様サービスに電話してみると「調べてますからもう少しお待ちください」。

一回目の電話から二日経って、もう一度「今晩中にどうにかしないなら、解約して送り返す!」と抗議していたけど、「調べてますからもう少しお待ちください」。

そして復活祭に突入してしまったのでまた待っている ←今ここ
さすがイタリア!!!

復活祭の翌日の祭日。友達夫婦が二組やって来て色々飲み食いした。お客さんが帰った後、スマホが見当たらない。いや、友達が持って行ってしまったというわけではなく、私がぼーっとどこかに置き忘れたのだけど、電話が使えないから「呼び出し音で行方を探す」手が使えない......  さすが私!!!

・MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
< https://www-indies.mangabox.me/episode/25382/
>

・主に料理の写真を載せたブログを書いてます。
< http://midoroma.blog87.fc2.com/
>