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前回に続き、岡画郎の展示についての話になりますが、開郎一周年を迎えた頃から、展示内容を定例会に集まった人たちの話し合いで決める(共同制作)という方針に変わって行きました。
ここでも、やはり、ミニコミ「ラ・岡っぷり」第8号の記事を参考にしますが、展示によっては自分が見聞きしたことに応じて手を加えています。
・1996年5月 池澤雪子(原案)「バードウォッチング」
池澤さんは、「バードウォッチング」というタイトルで、生きた鳥ではなく鶏肉を窓に置いて腐っていく様子を観察するという展示を提案したところ、当然のことながら岡さんにダメを出され、展示を降りてしまいました。
そのため、バードウォッチングをテーマに定例会で展示内容を週替わりで決めることになりました。
写真記録に残っているのは、道向かいに設置された双眼鏡に鳥のおもちゃをくっつけるという案ですが、私の記憶が正しければ、それ以外に決まった案は展示に結びつかなかったかも知れません。
3月の「休郎展」も作家が見つからず休郎するところを、休みをテーマに展示内容を決めることにしたこともあり、6月に岡画郎の展示方針について会議が開かれることになりました。
・6月「OKサミット」
4月に提案された「OKアート宣告」を討議しました。岡画郎の周辺に双眼鏡を100個設置したのですが、大半はすぐに紛失しました。
定例会は週替わりでゲストを呼んで、組織をテーマに話し合いを行いました。
6/1 園子温:東京ガガガ(都合により欠席)
6/8 だめ連(神長恒一 小倉虫太郎):ミルプラトー
6/15 小沢剛:相談芸術
6/22 小川てつお:ロシアノーパンギャルズ
6/29 荒木瑞穂:きんじハウス(京都大学におけるスクワット)等
「OKアート宣告」については、写真をご覧ください。
この写真は、私の撮影ではなく、展示の記録をしていた本多晃子さんの都合がつかず、私のカメラで岡さんが撮影したものです。
窓ガラスの反射を避けて、斜め下から撮影したものを、読みやすくなるように歪みを補正しています。
討議は7月に入ってからも続き、「OKアート宣告」は採択され、岡画郎の翌月の展示のテーマや内容を、定例会で集まった人たちが出したアイデアの中から、話し合い(多数決)で決めることになりました。
岡画郎が共同制作に向かったのは、展示のアイデアを出すのに一個人では限界があると考えられたことや、定例会にやって来る人の関心を展示に向けさせようとした面もありました。
ですが、月ごとに展示する作家を見つけるのが難しくなってきたことがいちばんの要因だったように思います。
実際、これ以降の展示の発案がすべて共同制作によるものだった訳ではなく、半数の展示は個人の発案によっています。
また、多数決によって展示を決めるにしても、それが民主主義的だったかと言われれば、必ずしもそうではありませんでした。
つまり、定例会の参加者は一定しておらず、翌月の展示が決まるまで少なくとも四回の定例会があったため、定例会を重ねる中で前の週の案が覆ることも多く、展示直前の定例会にたまたま参加した人のアイデアが展示案として採用されることもありました。
なので、民主主義というより偶然性によって展示が決まる側面が大きかったとは思います。
・7月「あさがお日記」
「OKアート宣告」の会期が延長されたので、7月後半のみの展示でした。窓にあさがおを置き、みんなで観察し日記をつけたとありますが、期間が短く、気がつくと終わっていました。
・8月 広瀬勉「Hey!帳」
ブロック塀の原寸大の写真に穴を開け、すだれのようにして展示。台風で作品が飛ばされる事件も。
広瀬さんは今年(2017年)の3月に私が個展を行なった、高円寺の写真Bar「鳥渡」のマスターです。当時の話を伺ったところ、国内数か所で同時に写真展を行う計画があり、その東京会場が岡画郎だったとのこと。
そのため岡画郎の展示が間に合わず(広瀬さんは帰京できなかった)、1週目は定例会で帳(とばり)をテーマに話し合い、カーテンを窓の外に吊るすという展示案が採択されました。
その展示は大家のクレームにより即日撤去され、2週目以降は上述の様な写真展になりました。
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今回は、1996年8月後半に岡画郎で広瀬さんの展示「Hey!帳」を撮影した写真を紹介します。
定例会の後で岡画郎に泊めさせてもらった翌朝、写真に開いた穴を日の光が通過する様が美しく、撮影しました。
この写真も記録行為を始める一つのきっかけにはなりましたが、前回書いたAKIRAさんとの関わりが本格化するのが、1996年の後半から1997年にかけてになるので、このあとしばらくは岡画郎の展示の写真は撮影しませんでした。
【せきね・まさゆき】sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。