これまで、高円寺岡画郎、のざらし画廊、ワークショップ・ガロの思い出話をしてきました。
今回から、廃寮問題の最中にあった東京大学駒場寮との関わりについて書くことにします。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/東京大学駒場寮
駒場寮廃寮問題については、Wikipediaにもあるように、1991年に廃寮の計画が立ち上がり、1995年に大学側が入寮者募集を停止、1996年に廃寮宣告がありました。
(Wikipediaの記述は、自分の記憶と食い違う箇所があります。例えば、2001年8月22日にあったとされる強制執行は、その2週間前に行われたと記憶しています)
私自身は学生時代、駒場寮以外の学生寮にいたこともあり、当初は廃寮問題については無関心でした。
1996年頃から駒場寮がおしゃれな場所になったという噂は聞いていたのですが、1995年以降に駒場寮内に入ったのは、1996年10月にワークショップ・ガロのフライヤーを置かせてもらった時と、1997年5月に石川雷太さんの個展のオープニングに顔を出した時の2回しかありませんでした。
そんな私が1997年の後半から駒場寮に頻繁に出入りするようになったのは、武盾一郎さんがきっかけでした。
1997年8月のことでした。当時、私は大学の非常勤講師の仕事以外に、世田谷区池尻にあった測量会社で、コンピューターのオペレーターのアルバイトをしていました。
特に8月は、大学は夏休みで授業がなかったため、毎日池尻まで自転車で通い、昼休みは近くにあった東京大学駒場キャンパスで食事をとっていました。
その日は月曜日だと記憶しているので、8月11日だったと思います。昼食を終えて会社に戻ろうとしていたところ、「キョージュー」と声を掛けられました。
武盾一郎さんでした。以前にも書きましたが、武さんのことは1996年11月、AKIRAさんののざらし画廊に参加してはじめて知りました。
その後、武さんは、私がAKIRAさんのパーティーで酔いつぶれるまで飲んでいるのを見て、私に興味を持ったのかもしれません。
私が非常勤で数学を教えていると知ると、勝手に「キョージュ」と呼ぶようになりました。
それが、駒場寮界隈の人たちが、私のことをキョージュと呼ぶキッカケになるのですが。
武さんは北寮の入口にあるギャラリー(オブスキュアギャラリー)の個展「世紀末とのコラボレーション」で、新宿夏まつりの舞台背景の絵を描いていると言い、よかったら見にこないか、と誘ってくれました。
ところが、その日は昼休みが終わりそうだったのと、おそらくカメラを持っていなかったので、次の日に見に行くと約束して、翌日の昼休みに駒場寮に向かいました。
思うに、新宿西口の段ボールハウス村には、自転車で入ることができなかったので、武さんたちが絵を描いている現場を一度も見たことがなく、この時が武さんの絵を見るはじめての機会でした。
オブスキュアギャラリーは北寮を入ってすぐ右側の部屋で、入口の扉から見て正面と右側の壁に窓がありました。
駒場寮の他の部屋は24畳で、幅5.4m、奥行き7.2mといったところだと思いますが、オブスキュアギャラリーは他の部屋と作りが違っていたので、それより一回り大きかったのかもしれません。
武さんの絵は巨大な段ボール製のキャンバスに描かれていて、高さ4mの天井付近から吊るされていました。
絵は壁一面では収まりきらず、両側の壁にも折り曲げられていたので、幅7〜8メートルはあったのでしょうか。
驚いたのは、私が見に行った時(火曜日)には絵が描き上がっていて、武さんは別のキャンバスに絵を描いていたことでした。
これ以来、展示期間中の昼休みと仕事が終わった後、駒場寮に通うことになります。
次の写真は、火曜日もしくは、水曜日の晩に、のざらし画廊で知り合った新野君がやって来て、ディジュリドゥを吹きはじめた時のもの。
ギャラリーは入口の扉から二段ほど低くなっていたのですが、その階段の上に三脚をローアングルでセットして、ノーファインダーで撮影したもの。
電球の明かりだけで、数秒ほどのシャッタースピードで撮影したのは初めてで、このような色味になるとは思ってもみなかったので、個人的に大変思い入れのある写真です。
これに味をしめて、暗い部屋の中で長時間シャッターを開ける写真を撮ることにハマるようになりました。
また別の日の夜には、写真家とその助手と思われる人たちがやってきて、段ボールの絵の上に写真を貼り付けていました。
段ボールの絵は、火曜日の段階で完成した訳ではなく、少しずつ加筆されていました。そして、日曜日のクロージングイベントの時、全面的に描き直されることになります。
【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔