Scenes Around Me[24]東京大学駒場寮の事(3)駒場寮内で見た美術展
── 関根正幸 ──

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駒場寮のことについては、オブスキュアギャラリーの展示だけではなく、寮内で撮影した写真全般について紹介するつもりです。

ですが、私が出入りしていた頃の駒場寮に関しては、今のところ松本博文「東大駒場寮物語」という当時の寮生が書いた本以外に資料がなく、あとは個人的に伝え聞いた話を書くつもりなので、事実関係について思い違いが多いと思います。

なので、間違い等ありましたら、ご指摘頂けるとありがたいです。







今回は、写真を撮らなかったいくつかの展示についての覚え書きになります。

駒場寮には武盾一郎さんの個展が終わった後、しばらく足が遠のいていました。

オブスキュアギャラリーは武さんの個展がこけら落としで、その後も展示が続いたのですが、この頃はギャラリーの運営をしていた長谷井宏紀くん達との面識がなかったこともあり、鷹野依登久くんの個展までオブスキュアギャラリーには通いませんでした。

鷹野依登久くんとも、AKIRAさんのパーティーで知り合いました。鷹野くんは武さんや山根康弘くん達と新宿西口の段ボール村で絵を描いていて、当時は駒場寮に暮らしていました。

前回書いたように、武さんの個展のクロージングイベントで、鷹野くんは武さんとライブペイントを行っています。

鷹野くんの展示は、私の唯一の通信手段だったポケベルに連絡をもらい、仕事先から昼休みに見に行ったのだと思います。

鷹野くんはギャラリー入口付近の渡り廊下で、絵を描いていました。そこで鷹野くんと立ち話をしただけで、ギャラリー内の展示は見なかったと思います。

鷹野くんは解体現場から持ってきたと思われるパネルに絵を描いていたのですが、釘を抜いた跡を補修せずにいるのが気になった記憶があります。

連載3に書いたように、この時は使っていたカメラ(Contax TVS)を壊していたので、展示の写真は撮影していません。



これは知っている人は知っている話ですが、当時の駒場寮内には、オブスキュア以外にも複数のギャラリーがありました。

以前、連載18:のざらし画廊界隈の展示の回で触れた、石川雷太さんの個展は、コマバクンストラムというギャラリーで開催されたと記憶しています。(1997年5〜6月)

石川雷太さんの展示は、オープニングとは別の日に屋外の作品(看板)を見ています。

また、石川雷太さんの次の展示だと思いますが、タムラサトルさんという作家のインスタレーションを、同じギャラリーで見ました(1997年6〜7月頃か)。

インスタレーションは、棒の先にくくりつけられた実物大のワニのオブジェ数体が、ギャラリー内で高速で回転しているというものでした。

作家名を長い間失念していたのですが、昨年水戸芸術館で購入した美術展のカタログの記事から、タムラサトルさんだと分かりました。

もう一つは、ホワイトルームというギャラリーだと思いますが、伊東篤宏さんの大量の蛍光灯を使った展示を見た記憶があります(1998年1〜2月頃か)。

伊東さんはギャラリーの入口に常駐して、寮生とコミュニケーションを取っていたそうですが、私はたまたま伊東さんがいない時間にギャラリーに行ったこともあり、展示の写真は撮っていません。

伊東さんには、後々、オブスキュアギャラリーを通じてたいへんお世話になりました。

これらの展示を含め、駒場寮内では様々な活動が行われていましたが、その全貌はまだ明らかになっていません。

10年くらい前に行われた武盾一郎さんの回顧展で、駒場寮内で行われた芸術活動を紹介しようとする動きがあったのですが、結局実現しませんでした。

駒場寮内の芸術活動については、なんらかの情報を知っている人に話を聞きたいと、今でも考えています。



今回紹介するのは、10年前、2008年5月23日に撮影した、246表現者会議の写真です。

https://farm1.staticflickr.com/797/39162388170_e0573ce2d5_c

246表現者会議については改めて書くことになると思いますが、渋谷駅のガード下に壁画を描いて、そこに住んでいるホームレスを排除しようとする動きに対し、それに抗議した小川てつオくんと武盾一郎さんの呼びかけで開催されました。

https://kaigi246.exblog.jp


246表現者会議は毎回、渋谷駅のガード下付近に集まって路上で話し合いを行いました。

私は小川くんと武さんが組んで何か始めるというので、記録を残さなければ、という気持ちで参加しましたが、元々議論に参加することが苦手だったこともあり、遠巻きから写真を撮っていました。

そうすると、私を知らない参加者は私を公安のような者と勘違いしかねないことから、小川くんも苦慮していたと思います。

私も246表現者会議に対し心理的な距離が生じるようになり、この日は歩道橋の上から撮影することにしました。それがかえって良かったのだと思います。

写真は小川くんが246表現者会議のブログに載せたのですが、オルタナティブな運動を象徴する写真であると評価され、いくつかの書籍の図版に使われる事になりました。


【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos


1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔。