以前の連載にも書いたことがありますが、私は30才の時ひどい失恋を経験しました。
それを機に、私は打ち込み(プログラミングによる自動演奏)による音楽制作を行うことにしました。
実は、私はそれまでに打ち込みを行ったことがありました。
今回は出来上がった曲そのものを聞いてもらうことが出来ないので、分り難い説明かもしれませんが、打ち込みを行った経緯について書いてみます。
私が高校の時に、父がPC8001という最初期のパソコンを購入しました。
父はパソコンを購入したことで満足してしまったのか、もしくは仕事が忙しかったためか、自分ではほとんどパソコンを使うことはありませんでした。
代わりに私と弟達が、パソコンにBASICプログラムを入力して遊ぶようになります。
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ある時、私はパソコン雑誌にPC8001による音楽演奏の記事が載っているのを目にしました。
PC8001はブザー音(ビープ音)は出せましたが、それに音階を付けて鳴らすことが出来ませんでした。
そのため、その記事ではちょっと変わった方法で音楽を演奏させました。
PC8001は、ハードディスクどころか、フロッピーディスクも標準では付いていなかったので、入力したプログラムはデータを信号に変換して、カセットテープに記録していました。
そこで、ケーブルの工作によってカセットポートにスピーカーを繋ぎ、機械語を含むプログラムで信号に音階をつけて出力することで、音楽を演奏させようとするものでした。
スピーカーの代わりに、テープレコーダーをつなげば音楽をテープに録音することも出来ました。
私はその記事を元に一つの実験を行うことを思い付きました。
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1981〜82年頃に放送されたFM番組(日曜喫茶室という番組だと思います)に、新聞の記事を音列にして作曲する人がゲストで出演しました。
そのゲストは新聞記事を仮名に置き換えたもの、もしくは記事の活字ごとに、一つの音を対応させて曲を作ったそうです。曲の一部は番組で放送されたのですが、ランダムな音列だった記憶があります。
実は過去にもメシアンが、AからZまでのアルファベットに音階を対応させて作曲を試みているので、そのゲストもそこから発想を得たのかも知れません。
残念ながらその人の名前を覚えていないのですが、私はその話を聞いて大変興味を覚えました。そこで、私もそれを真似て、詩を音列にして演奏しようと試みました。
自宅にあった文学全集の中で、私はダダイストの詩人・萩原恭次郎の「死刑宣告」という詩集が気に入っていました。
それは、詩の内容よりもタイポグラフィが面白かったからなのですが、私は詩集の中から「日比谷」という詩を選んで曲にすることにしました。
https://ja.m.wikisource.org/wiki/日比谷
私は詩を仮名に置き換えて、一文字に一音符を対応させることにしました。
パソコン雑誌の記事では、信号の仕様からなのか、出せる音域が2オクターブ前後ありました。
そこで私は、一つの仮名に一つの音符が対応するように対応表を作成しました。
まず、すべての仮名をあいうえお順に並べました。
濁音、半濁音は清音の後に並べました。(「わをん→がぎぐげご」の順)
そして、仮に出せる音域の最低音がAだとすると、「あ」はAの8分音符、「い」はA#の8分音符というふうに、低い音から順に対応させました。
そして、音域の最高音まで対応させたら、また低い音に戻って、次は4分音符のA、と音符を長くして対応させることにしました。
こうした対応表を元に、私は詩を音列に変換しました。
その結果、詩のイメージとはかけ離れたものの、割と面白い音楽になりました。
というのは、「日比谷」は当時最も近代化した街を表現するために、「高く」とか「動く」など特定の単語を繰り返し使っていたためで、そのため音楽もミニマルなものになったのです。
残念ながら、当時録音したカセットテープが見つからないため、今回、曲自体を紹介することは出来ませんでした(対応表が見つかれば復元することは可能ですが)。
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この後、パソコンの性能が急速に良くなっていたこともあり、パソコンを購入してもすぐに時代遅れになってしまうため、私は長い間自分のパソコンを持たずにいました。
しかし、実家にあったMSXパソコンや、大学のサークルの部室にあったX68000などのパソコンで、私は自動演奏を何度か試みました。
特に、前回言及したシュニトケは、当時音源がそれほどなかったこともあり、楽譜を購入して打ち込みで再現しようとしました。
しかし、BASICのプログラムでは4分音など再生できないものもあり、演奏できたものはごく僅かでした。(続く)
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今回、紹介する写真は、しんげんち祭りに出演した劇団維新派のパフォーマンスです。
維新派について私が解説するのはおこがましいので、下のリンク先を参照して下さい。
https://ja.wikipedia.org/wiki/劇団維新派
http://www.ishinha.com
公演を行う野外劇場を数か月かけて設営、解体することで知られた劇団は、主宰の松本雄吉氏が2016年に亡くなられたことで、2017年に解散しました。
武盾一郎さんは維新派との接点があったと思いますが、私が生で維新派を見ることが出来たのは、この時が最初で最後になってしまいました。
なので、若い団員が身体をカクカク震わせながら踊っていた、このパフォーマンスが劇団にとってどういう位置付けなのか、私は知る由もありません。
確かなのは、写ルンですでこれだけ写せる至近距離で、パフォーマンスを見ることが出来たという事でした。
もう一枚パフォーマンスの際の写真があるのですが、今回手違いで用意できなかったので、次回に紹介します。
【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos(2019年3月まで)
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔
2018年11月23日に、六本木のストライプハウスギャラリーで私が音響で参加している111の結成11年を記念した公演を行います。
詳細は以下のリンク先にあります。
https://blog.goo.ne.jp/111yanaka/e/76b5269faffda9dbcfb166c67b7155be