以前の連載に書いたように、私は1998年7月にCONTAX G1(以下 G1と記す)を購入しました。
それまで、私はCONTAX TVS(以下TVSと記す)を使っていましたが、故障が多く、カメラを修理に出している間、写真が撮れないことに苛立ちを覚え始めていました。
これが、中山道の写真だけを撮っていた頃なら、カメラの修理中は旅に出なければ済んだ話でした。ところが、周りの人たちの活動を記録するようになると、写真に撮っておきたいと思う瞬間に、カメラを持っていないという場面に出くわすようになります。
例えば、のざらし画廊のAKIRAさんが1998年の2月頃、自伝的小説「Cotton100%」の出版を記念して、「血のサイン会」を渋谷EDGEで行いました。私は、音響スタッフとして、会場の設営から撤収までサイン会に関わりました。
AKIRAさんは会場の壁に自作の絵を展示したのですが、それはスカトロアートと称する、うんこで描いた巨大な「可愛いコックさん」の絵でした。
また、AKIRAさんは自分の腕から血を採取し、注射器をペンの代わりにして血で本にサインしました。ところが、血には凝固しないように薬剤を混ぜたため、サインした血もなかなか固まらず、サイン会の参加者は本を開いたまま、会場をウロウロしていました。
この時はカメラを修理に出していたのではなく、知り合いの家に置き忘れていたのですが、もしカメラを持っていたら、間違いなく会場の様子を含め記録していたはずです。
血のサイン会を含め、私が撮影できなかった出来事は今でも記憶に残っていますし、その後の記録行為の原動力になりました。
そういう訳で、私はTVSの修理中に使うサブカメラを欲しいと思っていました。そんな時、高輪にあった松坂屋カメラで、G1の中古のボディが4万円台で売られているのを見かけました。
実は、TVSを購入する際にG1の購入も検討していたのですが、レンズはともかく、ボディの価格が15万円以上したため、購入をあきらめていました。
それが、後継機種のCONTAX G2が発売されたこともあり、この頃からG1のボディの中古価格が値下がりし始めていたのです。そこで、私はレンズ(Biogon 28mm)は新品を購入することにして、中古ボディを入手、G1ユーザーになったのでした。
その結果、TVSの方がサブカメラになってしまいましたが。これ以来、1998年10月にアリテンが駒場寮を退去する頃まで、駒場寮およびオブスキュアギャラリーの写真を集中的に撮るようになりました。
○東京大学駒場寮内で撮影した写真
今回は、オブスキュアギャラリー1周年記念パーティーが行われた1998年8月1日に、東京大学駒場寮内で撮影した写真を中心に紹介することにします。
ただし、カメラの操作に不慣れだったこともあり、紹介するのが忍びない写真もあるのですが、駒場寮が写っている写真なので、枚数が多めながら紹介してみます。

パーティー当日、オブスキュアギャラリーのコーキくんとシンヤくんが、荒川の河川敷に工場のファンが廃棄されているという情報を得て、車を出して拾ってきました。
拾ったファンは、オブスキュアギャラリーと北寮入口の渡り廊下の間に置かれました。写真がピンぼけなのは、この前の日にボディのレンズ交換用のボタンにうっかり触ってしまい、レンズが緩んでいるのに気づかず撮り続けていたせいです。

オブスキュアのパーティーと同じ日に、学外サークルだった弁天庵が北寮の屋上でDJパーティーを行いました。

オブスキュアのパーティーが始まる前に、アリテンの常連だった内藤くんや写真家の小山基彰くんたちと、屋上で暗くなるまで過ごしました。

日が完全に暮れた後、屋上はシャッタースピードが1秒くらいの暗さになりました。この日、私は一脚しか持っていませんでした。そこで、実験的に多重露光モードにして1/60秒のシャッタースピードで何度も繰り返し撮り続けました。

屋上から降りてきた時、アリテンの扉の前に猫がいるのを見て撮ったようです。

猫を追いかけて、階段の踊り場付近を撮影しました。

オブスキュアギャラリーの扉の前で猫を抱く女性(キャット)。キャットは、本名がカテリーナで、その愛称だと後になって知りました。
オブスキュアギャラリーの扉の前で、関係者および展示作家の記念撮影が行われているのを横から撮影しました。

写真は、右からシンヤくん、小山くん、キャット。

この女性は当時の知人のはずですが、誰か思い出せません。
この日、写真家の安彦幸枝さんのことを始めて知りました。安彦さんは、記念撮影で襷を口にくわえたポーズを決めようとしていました。ところが襷がなかったので、代わりにトイレットペーパーを使おうとしたようです。その結果、トイレットペーパーが唾液で溶けて、慌てている様子が記憶に残っています。

ギャラリーの中で撮った写真。キャットがこちらに怒っているように見えますが、ネガの次のコマを見ると普通に談笑しているので、たまたまそういう表情が写ったのかもしれません。
手前に、先ほど拾ってきたファンが置かれています。また、展示ではないパーティーなので、壁には空のフレームが掛けられていました。

ギャラリー内の写真



パーティーが終わってコーキくんの部屋に移動しました。一枚目の帽子をかぶっている男性がコーキくんです。私はこの日、適当な時間でアリテンに引き上げました。
【せきね・まさゆき】
sekinema@hotmail.com
http://www.geocities.jp/sekinemajp/photos(2019年3月まで)
1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔