Scenes Around Me[52]アートブックOBSCURE(1)OBSCURE本誌の特徴
── 関根正幸 ──

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◎アートブック「OBSCURE」の制作

オブスキュアギャラリーは、駒場寮から追い出されたことで、展示を行うための物理的な空間を失いました。このため、それに代わる媒体として、アートブックOBSCUREを製作するようになります。
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OBSCUREは、現在私の手元に何冊かありますが、それを探し出すのに時間をとられたせいで、今回は主にOBSCURE本誌から得られる情報を記すことにします。





OBSCUREの製作は、オブスキュアが駒場寮を出てからすぐに始まったらしく、OBSCURE1号にはオブスキュアの住所は記載されていません。

OBSCURE2号からOBSCURE5号までは豪徳寺で、おそらく隔月のペースで制作され、裏表紙には豪徳寺(赤堤)の住所が載っています。

ところが、コーキ(長谷井宏紀)くんがドキュメンタリー映画「W/O」の制作を始めたことと、契約期間の終了によりオブスキュアが豪徳寺を引き払ったこともあり、一時期OBSCUREの制作は中断しました。

OBSCURE5号がおそらく1999年9月以前に制作されたのに対し、OBSCURE6号はオブスキュアが都立大学に移転した2000年7月以降の制作と、制作期間に空白が生じています。

さらに、後述する予定ですが、OBSCURE8号の制作には時間と手間がかかり、完成が2001年6月頃にずれ込みました。そして、OBSCUREは8号を最後に休止しました。

OBSCUREの判型は、1号と2号がB4サイズ、3号がA3を縦に二つ折りにした変型サイズ、4号から7号までA3サイズ、8号は不定形でした。

OBSCURE6号はさらに、鉄板で出来たブックカバーがつけられたため、献本されたものを持ち帰るのを断念しました。

使われている用紙は最後の8号を除いて、藁半紙でした。質の良い紙を使わなかったのは、駒場寮の廃墟を思わせる部屋でギャラリーを運営していたコーキくんらしいと思います。

当初は鷹野依登久くんと山根康弘くんが、コンビニのコピー機に手差しでカラーコピーを行なっていましたが、紙づまりが頻発したと聞いています。コンビニのコピー機から給紙トレイがなくなったのも、このようなことが一因になっているかもしれません。

後に、OBSCUREの制作が軌道に乗り始めると、ゼロックスのコピー機が使えるようになりました。

◎OBSCUREの内容

OBSCUREは基本的に文字情報の少ないアートブックでした。

というのも、オブスキュアギャラリーを運営していた頃から、コーキくんは作品について言葉で説明されることを嫌っていました。

もちろん、現代美術では、作品そのものと同様にコンセプトやステートメントが重要な要素になっています。

しかし、作品の難解さ、つまらなさ、強度の弱さを言葉で補強しようとする作家が多かったからかもしれません。コーキくんは作品のコンセプトより、作品自身がもつインパクトを重視していました。

OBSCUREは1ページ1個展を銘打ち、基本的に1ページに1作家の作品を載せていましたが、ページ内にキャプションや解説はなく、代わりに裏表紙に作家のクレジットを掲載しました。

表紙もOBSCUREのロゴ以外に目立つ文字はなく、号数も表紙の頂部に小さくタイプされているだけで 、発行年月についての情報はありませんでした。

◎OBSCUREに参加した作家たち

最後に、OBSCUREに参加した作家について書きます。(敬称略、漢字表記が分からない日本人作家はカタカナ表記)

OBSCURE1号に参加した作家は、長谷井宏紀、安彦幸枝、中瀬健二(チュンジロウ)、鷹野依登久、山根康弘、八反田めぐみ(ハッチ)、中澤華太郎、佐藤久順(KUJUN)、白井朋樹、Katerina Matuoka、Randy Simpson、吉田モリト(クレジットのみ)、Tiffany Godoy(クレジットのみ)と、オブスキュアギャラリーに直接関係していた人たちがほとんどでした。

OBSCURE2号では、そこに、武盾一郎、Rudolf Eb er、浅野忠信、タニムラミツタカ(ミツ)、伊東篤弘が加わります。

さらに、OBSCURE3号では、宇川直弘とRomañaが、OBSCURE4号では、堂園謙と文子が加わりました。

もちろん、クレジットされたすべての作家が、各号に作品を発表していたわけではありませんが、その場合もクレジットだけは載せたので、結果的に裏表紙に掲載される作家は増えていきました。

裏表紙に載せられたOBSCURE誌のステートメント
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OBSCURE3号 タニムラミツタカ作品と武盾一郎作品
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OBSCURE5号 堂園謙作品と浅野忠信作品
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【せきね・まさゆき】
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1965年生まれ。非常勤で数学を教えるかたわら、中山道、庚申塔の様な自転車で移動中に気になったものや、ライブ、美術展、パフォーマンスなどの写真を雑多に撮影しています。記録魔