ローマでMANGA[158]ローマでコロナ その6 くたびれる毎日日曜日状態
── Midori ──

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●イタリアの現状……

コンテ首相の警護に当たっていた警察官(52歳)が新コロナウイルスで死亡。国会では安全距離を保っていたといい、感染経路は不明。なお、コンテ首相はテストの結果、陰性。ひたひたと何処へでも忍び込むウイルスが怖い。
https://www.agi.it/cronaca/news/2020-04-04/coronavirus-agente-scorta-conte-8182805/


話はずれるが、この時期ほどイタリアの首相がこうも頻繁に、国民に向けてテレビ画面に現れることはなかったのではないか。コンテ首相は1964年生まれの56歳。2018年に首相に就任した時には政治家出身ではなかったこともあって、威厳が足らない感じを受けていた。

今回、イタリアの緊急時でしっかりした意思を持って呼びかける姿は、頼り甲斐のある雰囲気が身につき、甘いマスクも手伝ってイタリア女性のファンを増やしているらしい。

ジュゼッペ・コンテ
https://ja.wikipedia.org/wiki/ジュゼッペ・コンテ






日夜、新型コロナウイルスと前線で戦う医療関係者たち。疲労困憊だろうけど、回復して退院する人に拍手と花贈呈、「ここの滞在どうでした? 食事は美味しかった?」なんてインタビューまがいをしたり……


ローマの子供専門病院で看護師と医師の当番交代時に、出る3人と入る3人が踊りながら入れ替わったり……ほんと、頭が下がります。


ベランダでのフラッシュモブで「一分間、医療関係者に拍手を捧げよう」というのがあったりで、国民も感謝している。

かと思うと、一方で休憩時間に何かお腹に入れるものを買おうと、病院近くのスーパーへ行って事情を話して、並ばずに入れてもらおうとしたら(一時間も並んでいる時間がない)並んでいた人が口々に文句を言ったとか、自分に害が及ばない範囲で、医療関係者を尊敬してるということになるのかな。

テレビでは、番組途中のコマーシャル前後に政府広報で、自宅待機を頑張って続けてウイルスに勝ちましょう! とか、手を洗うなどの予防策を知らせることを毎日何度も放映している。

画像や動画もネットで色々出ていて、当然紹介しきれないけど、それぞれ一点
づつ。

かのグレタ嬢。画像は上下に分かれ、上は地球の画像で「コロナウイルス。環境汚染が減り、地球が息を吹き返した。」のキャプション。下の画像はグレタ嬢の顔で、研究者の白衣を着た画像のキャプション「やった! クソどもめ」
https://photos.app.goo.gl/QkuNf8Ec2MT8ZT4e8


こちらは可愛くも、自宅謹慎が新コロナに有効な事が一発で理解できる動画。
https://photos.app.goo.gl/UCP9qsMg7VgiNzAQ7


●「復活祭は外で」という習慣も……

4月12日は復活祭だった。キリスト教的には、クリスマスよりむしろ復活祭の方が重要なようだ。人類の咎を背負って無実のまま処刑され、三日後に復活したという、神の子の神の子たる所業なのだ。

その前の3月27日、四旬節と呼ばれる儀式が例年通り、サン・ピエトロ寺院で行われた。例年通り、というのはカレンダー通りという意味で、状況はおそらくカトリック教会の歴史でも初めてではないだろうか。誰もいないサン・ピエトロ広場で、フランシスコ法王が一人でパンデミック終息を祈った。

https://www.ilfattoquotidiano.it/2020/03/27/coronavirus-papa-francesco-prega-in-una-san-pietro-deserta-e-invoca-la-fine-della-pandemia-fitte-tenebre-addensate-nelle-nostre-vite/5751574/


シトシトと降る雨の中、法王一人で暗い広場に立つ姿は印象的だった。その時に、バチカン秘宝の、1522年のペストを治めたと言われる木製の十字架を置いての祈りだった。ただ、その木像が雨に濡れて、崩壊の危機が危惧されている。

復活祭の翌月曜は小復活祭でこれも休日。平素なら、復活祭かその翌日は外でレストランかピクニックで食事するのが普通の過ごし方だ。ただし、例年、どちらか天気が崩れる確率が高い。自宅待機の今年、二日とも晴れた。なんの嫌味だ。

晴れた二日、「復活祭は外で」という習慣をどーーーーーーーしても外せない人がいるらしく、海に近い我が家のそばを通る国道が、警察のコントロールもあって渋滞したことをニュースで知った。復活祭と小復活祭の二日で、イタリア中で3万件の罰金が発生したとのこと。
http://www.askanews.it/cronaca/2020/04/14/coronavirus-tra-pasqua-e-pasquetta-30mila-multe-e-236-denunce-top10_20200414_152239/


●自宅待機で四六時中家族と過ごす時に起こること

一般的な事情ではなく、私個人の場合を書いていく。家の広さ、家族の人数、構成要素(子供の有無、いるならその年齢)、家族の性格、経済的不安の有無でかなり様相が違ってくると思う。

それでもまことに私的な事情の中から、もしも日本で自宅待機要請が出た時に、あなたにも起こり得るかも知れないことを書いてみる。
※このテキストは

美容院も床屋も閉まっている。それにはお構いなく髪は伸びる。特に短髪の男性軍は困る。電気バリカンとハサミを使って旦那と息子の髪を切る。何年かぶりに「母の散髪屋」の開店だ。

息子が小さい頃は郊外住まいだったため、いちいち車を使わないとどこにも行けないので、私が散髪していた。特にそういう訓練をしたことがあるわけではないけれど、見よう見まねで、美容師のように左手の人差し指と中指で髪を一列に挟んで出た部分をハサミで切ってなんとか形にした。

何年かぶりでまた息子の頭を触ってると、なんと言ったらいいのかな、成長したあとはそうそう息子の体を触る機会はないわけで、小さかった頃の感覚が蘇る。オムツを取り替えたり、沐浴させたり、母乳をあげたりで体の接触が濃厚だった。

サン=テグジュペリの「星の王子さま」で、キツネが王子様に言った「あんたが、あんたのバラの花をとてもたいせつに思ってるのはね、そのバラの花のためにひまつぶししたからだよ」を思い出す。

私は在宅ワークだったので、息子を相手に「ひまつぶし」をした。ちょっとワクワク、ニヤニヤ嬉しい時間をこの自宅待機はくれた。無事につつがなく育ってくれたことも、つくづくありがたい。

夫婦共稼ぎで、日中は子供をおじいちゃん、おばあちゃんかベビーシッターに預けてる夫婦が、今までになかったほどに子供と向き合って濃厚に過ごして、とても大切な時間を過ごしていると、ソーシャルネットワークに書いてる人がいた。ストレスにもなるだろうけど、色々関係を見直す機会になっている。いやおうなくだけど。

しかし、だ。家族全員自宅待機が始まって10日ほどして、イライラしてきていることに気づいた。家族への返事がつっけんどんで、気がつくと無意識に「なんで私が」とか、「うるさいな」とか、ブツブツ不平で頭を一杯にしている。三年ほど前に同じ種類のイライラを経験していたので、原因はすぐにわかった。

炊事だ。家事炊事をとりあえずやっているけど、料理が特別好きなわけではない。掃除や整頓も苦手。好きでもなく、苦手だけど、義務感でやっている。自宅待機がない時は、週に二度学校へ行って、お昼は同僚と外で食べる。つまり、週に二回は炊事をしないでいられる。

また、旦那は友達が多く、週末はしょっちゅう誰かの家に集まって夕食を一緒にする。外食だったり誰かの家だったり。あるいは、ピッツァを買ってきて食べたりする。

それが一切ないので、昼夜、毎日食事の支度と後片付けをすることになる。夕食の後、旦那と息子がソファにくつろいで、テレビを見たりスマホを見たりしてるのを横目に台所の片付けをする時が一番イライラがつのる。

「コロナ・バカンス」の機会に作品を仕上げちゃお、と思っていたのに、なかなかその時間が取れやしない、という不満が一番大きいかな。

ただイライラしているのはよくない、と治療をした。一度、「本日の夕食は、冷凍ピッツァを温めるだけ、お皿もコップもプラスチックを使用して洗わない。キッチンも洗わなくていいように使わない。なんとなれば、義務でしている炊事でイライラしてきているから」と宣言してその通りにした。

そうしたら、旦那がトマトとモッツァレッラを切って、アンチョビーをのせたおかずを作ってくれた。その後、時々何かを作ってくれる。食卓にお皿などを運んだりし、片付けは息子も毎回手伝ってくれてはいる。

つまり、言いたいのは、普段以上に顔を合わせると細かいことに目が行ったり、私のように不得手だけど義務でしているような作業が増えることになって、イライラしてくる。それを膨れるに任せるのではなくて、話し合えるような家族にしていくことが大事。そして細かいことは気にしない。

例えば、私は季節の野菜を食べるのが良いと思っているが、旦那はトマトが好きで、今のように季節ではないのに買ってくる。そういうことにイラついて、責めても仕方ないということ。誰もコロナウイルスに感染せずにいる事実に目を向けた方がいい。

小さい子供がいる家庭では、夫婦の協力が絶対必要だろうな。ただでさえ小さい子がいるお母さんは、自分の時間がない、自分のリズムで事を進められない。幼稚園や学校がある時は少々自分が計画を立てられるけど、全員自宅待機だと毎日日曜日状態。それが何日続くかわからないと、思っただけでくたびれる。

家族全員、互いにそれぞれを尊重する、理解する態度が必要な期間なのだ。

【Midori/マンガ家/MANGA構築法講師】 midoriyamane@gmail.com