エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[004]文房具の話 雨雲と絡新婦/海音寺ジョー:超短編ナンバーズ

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◎文房具の話

文章を書くのが好きで、昔は百均ショップに売ってた三冊で百円のミニノートをよく使ってました。ボールペンはノック式のやつで、この組み合わせなら狭いところや路上でも、素早く効率よく筆記ができました。

家で書くときは大学ノート、ワープロ、パソコンと時代とともに道具が変わっていって、今では八ミリ角の升目ノートを使って短い物語や、短歌や俳句をちまちま作ってます。

その物欲と言いますか、文房具欲の変遷の過程で、ワークパンツのポケットに入るぐらいの、筆記に特化したPOMERA(ポメラ)という小さいワープロ機を数年前に購入して、これも今も愛用してます。

ぼくはキングジム社の回し者ではありませんが、この機械のコンパクトさをとても気に入っていて、この文章も屋外で、ポメラを使って書いています。キーボードを折り畳むことでコンパクトに収納できるDM20という機種で、今ではもう電器屋に売ってません。

キングジム デジタルメモ ポメラ DM20クロ リザードブラック
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通勤電車で何か書く時に、たとえば狭い西武電車のぎゅう詰めの席でも、膝の上でパチパチとタイピングできるので、急いで書くものがあるときには重宝しました。

しかし経年劣化で、真ん中の折り畳み部分のヒンジ周りの樹脂や、パチッと二つ折りにした時にキーボードを合わせる留め具が折れたり欠けたりして、つぶれる一歩手前の状態になってしまいました。

それでも少しVの字に中折れしたキーボードで、執念深く現役マシンとして使い続けています。

超短編小説を書く知人、先輩の中にはスマートフォンで原稿を書く方がいて、よくあんな小さい画面で複雑な文章を練られるなあ、と不思議に思います。

しかし、よく考えたらこのポメラも画面は小さいので、短い物語には小さい画面(モニター)を使う方が、案外俯瞰がしやすくて合うのかもしれません。

併用している方眼ノートとボールペンは、ポメラと比べるとはるかに良く使っていて(ポメラは通勤が電車から自動車にかわってから、以前に比べて使用頻度が下がりました)、まず方眼ノートに書いてから、パソコンで清書して推敲して色々なところに応募しています。

パソコンは昔はノートパソコンでしたが、今はデスクトップのパソコンを使ってます。場所をとりますが、モニターが大きい方が作業効率が良好です。

ノートに書くときはほとんどボールペンを使います。ぜんぜん紙に引っかからず、筆圧が低くても発色がよいので、ジェットストリームというボールペンを長年使っていたのですが、ポケットにひっかけるためのクリップの部分がよく欠けるので、この点が不満でした。

仕事の現場、ラーメン屋の厨房で使ってたので、湿気や熱気で劣化しやすかったのかもしれませんが。その後、ユニボールシグノというボールペンを使ってます。

これは漫画家の江口寿史さんがツイッターで、めちゃくちゃ使いやすいと書かれてたので試しに買ってみたら、とても低い筆圧でスピーディに書けるので、あっさり乗り換えました。

ぼくは決して三菱鉛筆の回し者ではありませんが、手首が常に痛い人や書くスピードが速い人にはお勧めです。

毎日日記もつけています。日記には、手帳を使ってます。ぼくは糸井重里さんの回し者ではありませんが、ほぼ日手帳を四年前から使い続けてます。

携帯するのにちょうどいいサイズで、どんなボールペンやシャープペンを使っても破れたり裏写りしにくいので重宝してます。

書くことはその日おこった、とても酷かったこと。それからその日に達成できたことや嬉しかったこと。これは、この順番で書きます。その方が、その日一日がハッピーエンドで終わったかのような演出が出来るからです。

実際はハッピーなことなど滅多に訪れないのですが、幸せ感も不幸せ感も主観的な区分だとみなしていて、戦略的にこの順番が良いとの結論に達しました。

何十年か後に、あと何十年か生き延びられたと仮定して、何十年か後、すべてを忘れ果てた後に、日記を読み返したとき「ほお、自分は毎日劇的に良い日々をおくっていたのだな」と目を細めながら大満足を得られるであろうという遠謀で、この順番を守り続けています。


◎雨雲と絡新婦

ガレージに巣を張った蜘蛛が、だんだん巣の規模を拡張していって、要塞のような豪壮な様相を呈している。

駆除せねばとは思ってたのだが、この巣を払っても数日後には違う蜘蛛が網を張るのである。むなしい気がして放置していたのだ。蜘蛛は隣の空き地に領土を拡張していって、多重的にネットが広がっている。

ガレージから車を出す度に、ぼくは蜘蛛の巣を見やるのだが、こうも大きくなると殺虫剤で瞬時に蜘蛛を殺して、棒きれで巣を払うということが心底億劫になってきて、彼女の遂げるであろう最終の王国を見てみたいという衝動が大きくなってきた。

季節はずれの台風のせいで強く雨が降ってきて、ぼくは今日はやることやらねばならぬことが山積みであるにもかかわらず、安曇の図書館に春日井建歌集を読みに行こうとガレージを開けた。

ほとんど動かない巣の中央の蜘蛛がわたわた、と強い雨に撃たれて体勢を崩すまいと震えていた。

ぼくは蜘蛛は大嫌いだが、逆境に耐えて何とかしようとしている彼女の気概には敬意を覚えた。

台風がさらなる大雨をもたらすという明後日は選挙の投票日だ。その日は夜勤日なので、投票に行ったら、夜のために眠ろうと思う。


【海音寺ジョー】
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