エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[16]寝具の話 ふわふわぶとん/海音寺ジョー

投稿:  著者:  読了時間:4分(本文:約1,700文字)



◎寝具の話

前の職場でぎっくり腰になってしまい、今でも週に一回、マッサージを受けている。

たまたまツイッターで「高級マットのエ〇ウィーブを買ってから、腰の痛みが一切なくなった」という記事が流れて来て、心がぐらついた。

長い間、煎餅布団で寝続けている自分には、睡眠中の姿勢って大事なんではないか? と、日常生活における問題点を考えさせられるきっかけになったのだった。





休みの日に、長時間横たわっていると休息が取れてるはずなのに、起き上がる時に腰がコキコキに固まっていて、普段よりも痛むのである。

薄い布団で寝続けていたのが原因なのか根拠はないのだが、寝心地のいい布団で寝ることはきっと重要、というドリームにとりつかれ、ネットやその手の広告などで、色々なマットを調べ、どれが良いのかを真剣に検討した。

子供時代に見た「アルプスの少女ハイジ」というアニメ番組で、主人公ハイジが藁をシーツでくるんだ藁布団を作り、ボヨンボヨン跳ねて寝てるシーンが脳裏によみがえった。そのような「寝」はきっと最高の「寝」にちがいなかろう。

処遇改善手当という、介護業界独特のボーナスの支給があった夏に、清水の舞台から地球にボディープレスする勢いで、5万円する高反発マットを通販で購入した。

ここ十年ほど、3時間以上の睡眠をとることができず、尿意や悪夢で目覚めてしまうという現象が続いてたのだが、高反発マットを導入した晩は朝まで寝続けることが出来た。これは良い投資だったぜ! と珍しく気分が高揚した。

そして、これも嘘くさいと思われるかもしれぬが、持病の腰痛が軽減したのである。

夏に買ったので、今で半年くらいがたつ。最初の一、二か月はマットに背中が埋まる感覚が逆に気になって来て寝づらくなっていったのだが、マットの特性に背骨が慣れてきたのか、今ではそれも気にならなくなった。

そして、シングルサイズの、厚さ5センチのマットに寝て、体を横たえながら寝しなに本を読むということがとてもしづらくなった。パームレスト的なものがないので、手で本を支えづらくなったのだ。最終的に、布団で本を読むという習慣が途絶えたのだ。

今朝ハッと思ったのだが、この寝しなに本を読む習慣というのが、腰や体全体のコンディションに悪かったのではないだろうか? マットうんぬん、というよりも、この習慣が体調不良の元凶だったのではなかろうか?

今朝気づいたので、検証は今後のことになるが……ともあれ、寝具を替えたことで良眠の大事さに気づけたので、5万円の投資は最終的に有効だった。

でも一番腰に良いのは、腰に重い負担をかけないことだと、切に思います。


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◎ふわふわぶとん

毎日のように新聞の全面広告で、高機能マットレスが宣伝されている。みんな安らかな眠りに飢えているのだ。体圧を分散させて通気を良くして汗を吸い、かつ蒸発させてくれる、理想のお布団を嘱望しているのだ。

嘗て日本の首都であったK都府長岡京で、天才科学者が反重力布団を開発した。

「な、何ですねんそれは?」

「反重力物質をハニカム構造のウレタンに織り込んだ、宇宙一寝心地の良い布
団じゃ」

水素水ブームに踊らされ、大手企業提供の低俗テレビ番組に脳を毒された国民に、反重力布団はバカ売れした。

「この売上げで、この財力をてこに、日本の首都を再び取り戻す」

天才科学者は政界に進出した。しかし対抗勢力が現れた。S賀県大津京のマッドサイエンティストが開発した葉巻型UFO布団。

空をも飛ぶような寝心地とのキャッチコピーで、反重力布団の売上を脅かした。だがさすがに総国民の熱気は冷めていき、皆木綿の布団で寝るようになった。

長岡京遷都の夢も大津京遷都の夢も潰えたが、この布団ウォーズの間羽毛布団は一切売れなくなったので、水鳥たちは元来の安寧な生活を取り戻した。文字通り羽を伸ばし、今日も餌とりに、求愛に励んでいる。


【海音寺ジョー】
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