こんにちは、森和恵です。12月に入ると師走が一気に押し寄せてきますね。お体大切に、焦らずゆきましょう!
さて、今回は恒例の「Adobe MAX Janan」レポートです。今年は参加者として、朝から夜までどっぷりと楽しんできたので、その様子をレポートします。
●Adobe MAX Janan 2019レポートを明後日にYouTubeライブ配信します!
12月11日22:30より、わたしのYouTubeチャンネルで今年のMAXの様子をライブ配信します。
まだ整理しきれてませんが、たくさん撮影してきた写真や動画をご覧に入れたり、セッションで学んだことを少し後追いしてみて、ハンズオンしたりを予定しています。
動画URLより《リマインダーを設定》をぽちっと押していただくと、放送前にお知らせが入ると思います。ぜひ、一緒に楽しみましょう。
●大阪から日帰りで参加にチャレンジ!
昨年のMAXは、自分の登壇があったので前日入りの翌日帰りでした。前日にテックリハ(予行演習)があるのと、イベント当日は遅くまで飲み会があるので2泊で参加しました(講師費用を全額突っ込んで、ちょっと予算オーバーなぐらい)。
LIFE is 日々一歩(87)[ウェブ]無事終了!Adobe MAX Janan 2018レポート
https://bn.dgcr.com/archives/20181127110100.html
今年は登壇もしてないので、そんなに豪遊するわけにもゆきません。始発の新幹線で行き、終電の新幹線で戻るという強行突破をしました。
始発に乗って現地までのツイートはこんな感じです。何度も会場に行った経験はあるのですが、極度の方向音痴のために乗り換えやら歩くルートやらを、何度もシュミレーションして望みました。
https://twitter.com/r360studio/status/1201552757443842048
当日朝の開門待ち行列は1時間以上前から始まっていたらしく、最短で向かって開門20分前についた時には長蛇の列になっていました。朝9時からの開門に、8時前から並んでるなんて! 地方民に勝てる術はないと思いました(涙)。
会場に着いてから終了までのツイートがこちらです。
https://twitter.com/r360studio/status/1201653505154400256
入場が遅れて失敗したなと思うのは、Adobe MAX Storeと呼ばれる物販ブースへの入場が遅れてしまったことです。グループ4という整理券が渡され、物販ブースへは15時まで入れませんでした。
会場に入ってからは、予定通りスムーズに進めることができました。
どのセッションに参加するか、セッションの間の空き時間はどのぐらいあるか、どのブースの出し物をみたいかなどを、事前にきちっとリサーチしておいたので、おおよそ希望通りに回れました。よかった。
しかしその代償に……とにかく時間がなかった!
歩いていて偶然に出会った知り合いの方とも、次の予定があるから満足に話せず。帰りの電車があるため懇親会にほとんど出られずで、ぼっち感が半端なかったです。
●Keynoteが日本向けに調整されていて感動
今回の楽しみのひとつが、Keynote(基調講演)でした。MAXへの登壇は4回ありますが、自分の登壇が午後からある時は朝から自由に動けなくて、見たことがなく、今回がkeynoteへの初参加でした。
keynoteは、アドビの会社としてのソフト設計の方針や、今年の新機能の目玉、今後出てくる新機能のちら見せ紹介などが、アドビの社員さんから直接聞けるセッションです。
keynoteは、既にYouTubeでアーカイブが公開されています。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLF_lcvNhVWn9JG7K3NrtfzYlsCFVRTGQR
冒頭は、代表取締役社長 James McCready(ジェームズ マクリディ)さんのあいさつから始まりました。
英語のセッションでは同時通訳が行われていましたが、英語そのままに少しだけ聞いてみると、日本人でも理解しやすいやさしい英語で好感が持てました。英語NGな私でも、おぼろげに意味がわかって嬉しくなりました。
「左利きのエレン」や「映像研には手を出すな!」など、アーティストが主役の日本アニメと、アドビがコラボしていることを紹介するところから話が進みました。
続いて「ディレクターがクライアントから要望を聞いた後に、デザイナーがモックアップを出して形を作っていく」という、日本の独特な現場のワークフローに合う「CCライブラリを用いたシームレスなデータのやりとり」が紹介されました。
クリエイティブの「時間を短縮する」ことが、いまのアドビの最大課題なのだそうです。
先だって開催されたUSのMAXでの基調講演と比較すると、日本の現場に合わせたセッション内容となっていて驚きました。それだけ、日本市場を重要視しているということでしょうか。
いろんな新機能やアプリが紹介されましたが、keynoteの目玉は、iPad版のPhotoshopとIllustratorだったと思います。
既にリリースされているiPad版Photoshopは、レイヤー・選択範囲・マスク機能なども備えており、ある程度のところまではデスクトップ版さながらに作業することが可能だと見て取れました。
出先のちょっとした空き時間や、複数人でディスカッションするような「サブマシンで作業する状況」に役に立つツールに仕上がっていました。フォトレタッチやコラージュが、ペンや指で進められるのが新鮮でしたね。
今後リリースされるiPad版Illustratorは、ペンツールでスピーディにパスで描ける気持ちよさを味わったり、radial repeatという、オブジェクトを放射状に複製する機能が加わったり、手書き絵を撮った写真をパスに変換したりと、カンバスに向き合って絵を描く楽しさを味わえるツールになっていました。
わたしはSurfaceユーザーなので、デスクトップ版のPhotoshopとIllustratorをタブレットで利用していますが、iPad版だけでなく、タブレットを使っているデスクトップ版ユーザーに対しても、これらの機能が追加されるといいなと思ってみていました。
●一番熱く聞いたセッションはコレ!
午後から3つのセッションに参加しました。どのセッションも勉強になり、貴重な体験でした。
その中で、一番ワクワクしてきて「帰ったらすぐ調べたい!」となったのは久保知己さんの「手間をかけずにコーディングを効率化するデザインシステムの活用法|Adobe XDのコンポーネント機能とBootstrapの連携」でした。
https://maxjapan.adobe.com/sessions/4/
最後のセッションということもあり、正直めちゃめちゃ疲労感に襲われていて、最後まで集中して聞けるか不安でしたが、杞憂に終わりました。
LIVE配信がなかったので、アーカイブ映像は公開されないかもしれませんが、公開されたら絶対もう一度視聴しようと思います。
大まかなポイントだけ書いておくと、
□制作における「Design Token」徹底の重要性
Design Token(デザイントークン)とは、制作物の見た目のトーンを揃えるために決めておくデザインルールのことで、デザインの属性(色・フォント・空白・動き……など)を取り決めておき、制作者同士のコミュニケーションを計るものだそうです。
今回のセッションではウェブサイトを題材にしていましたが、アプリにせよ印刷物にせよ、デザインが必要な制作物に対して必要な考え方だと思います。
ルールが決められていないと、各自が好きなように作ってしまい、サイトオープン時は整っていたデザインのトーンも、時が経つに連れて統一感がなくなって崩れてきます。
事前にDesign Tokenを取り決めておけば、制作工程のトーンの崩れが防げて後戻りする無駄が減りますし、運用段階でもデザインのトーンが担保できます。
□「Design Token」をまとめたものが「Design System」
最近よく耳にするのが「Design System(デザインシステム)」という言葉です。大規模なサイトの場合に作られ、運用されている印象があります。
アドビの開発現場で使われているDesign Systemは、「Spectrum(スペクトラム)」といい、アプリ設計をはじめ多くの制作現場で使われる、共通ルールとなっているそうです。
https://spectrum.adobe.com/
Googleの MATERIAL DESIGN は、有名ですね。Androidアプリ開発のお手本となっています。
https://material.io/
最近ロゴを変更したメルカリにも、デザインシステムがあるそうです。
https://tech.mercari.com/entry/2019/08/26/090000
どのデザインシステムにも、サービスに合わせた必要なコンポーネントが過不足なく備わっていて、とても立派に見えます。デザインシステムは案件ごとに最適化されているようで、そのまま流用することはできなさそうでした。
小規模な案件に携わることの多い私には、ここまでのものを準備することは到底手が出ない……と思っていたのですが、セッションの話の続きを聞いてみると、はじめから全部作ってしまうわけではなくて、プロジェクトを進めながらデザインシステムを育てていくのだそうです。
帰ってから検索してみると、次のようなブログ記事を見つけました。デザインシステムを一度に作ってしまうのではなく、スタートアップ、スケールアップ、エンタプライズと育てていき、最適化していくということでした。
https://medium.com/@Roy_S_Kim/%E6%88%90%E7%86%9F%E3%81%97%E3%81%9F%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E4%BD%9C%E3%82%8A%E3%81%B8%E3%81%AE%E9%81%93%E3%81%AE%E3%82%8A-c8288b4d9b6e
□手間をかけない「Design System」のすすめ
セッション後半に入り、《……とはいえ、デザインシステムを作ってから案件に取りかかるのは、現実問題難しそうだな……》と思っていたところに、この言葉を投げかけられました。
「小規模な案件では、手間をかけない最低限のDesign Systemを利用しよう」
手間をかけないDesign Systemとは何かというと、大規模な案件ほどルールを決めずに「ここは絶対外せない」という部分にのみ注力するというものでした。「Design System Lite」と呼ばれていました。
今年の「Adobe MAX Japan 2019」の公式サイトでも、「Design System Lite」の考え方で、Design Systemを作って運用したのだそうです。
「カラー・タイポグラフィー(文字属性)・スペーサー(余白)・ボタン・ヘッダ・フッタ」など、3回以上利用されるコンポーネント(部品)について、Design Systemに落とし込んでルール化したそうです。
作ったDesign Systemは、完成前にクライアントへ提供する「中間成果物」にも利用でき、クライアントにもこのルールを知っておいてもらうことで、制作途中の後戻りを防ぐこともできたそうです。
Design Systemをチーム全員が共有することで、デザインのルールが視覚化され、結果としてスムーズに進むことになりそうですね。
わたしはこのセッションを聞きながら、Design Systemを作る工程をマニュアル化できれば、どんな案件にも取り入れやすくなるだろうと思っていました。
セッションの中でも触れられていましたが、BootstrapなどのCSSフレームワークを元にしたDesign Systemを作ることで、作り方の一般化ができそうな気がします。
今回のセッションのスライドは公開されないようですが、代わりにAdobe Blogで連載記事が公開されるようで、いまから楽しみです。
……というわけで、今回はこちらまで。楽しさも学びもあった、参加しがいのあるよいイベントでした。
来年の開催日は〈2020年11月24日〉だそうです。次はできれば、また登壇させてもらえたらいいなぁ……なんて思っていますが、そのためには、アドビさんに貢献できるように、自分が何か活躍をしなければなりませんね。
その布石となるかどうかはわかりませんが、年明けからウチのYouTubeチャンネルで、ちょっと無理めのチャレンジを始めようかと思います。
さてさて。このコラムも今年最後のお届けとなりました。今年は23本のコラムをお送りすることができました。
https://bn.dgcr.com/archives/%E6%A3%AE%E5%92%8C%E6%81%B5/
わたしの日々の徒然を好きなように書いているコラムですが、興味を持って読んでくださる方のお役にたったり、少しでも楽しみになっていたりすると嬉しいなと思います。
ではまた、来年にお目にかかりましょう!
(^^)
【 森和恵 r360studio ウェブ系インストラクター 】
mail:r360studio@gmail.com
サイト: http://r360studio.com/