エセー物語(エッセイ+超短編ストーリー)[47]盲導犬に噛まれた話◇さかもりあがり
── 超短編ナンバーズ 海音寺ジョー ──

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◎エッセイ
「盲導犬に噛まれた話」

ときどき、無性にしたくなる暴露話がある。これはその代表的な話である。

いや、代表的というより、したい話ナンバーワンである。だがここ、20年ぐらいしたことがない。何故かというと、なかなか信じてもらえないからである。それはぼくも、よくわかるのだ。というのは学生時代、盲福祉に特化したボランティアサークルに属していて、盲導犬のことも学んだからだ。

盲導犬はイギリス、大英帝国の長い伝統のある競走馬を産む技術が応用されてて、最もおとなしい犬種を、何世代にもわたって掛け合わせて成立したDNA的に極めて従順な性質の犬であり、人間に噛みつくケースは、かなり考え難いのである。

「おい、海音寺。犬の中でも超ジェントルマンである盲導犬様に襲われるなんて、一体どんだけの悪事を働いたんじゃ?」と疑われるのもイヤだし、ますますこの話はしづらいのだった。




大阪に視覚障がいを持つ方と健常者とで一緒に取り組んでる運動会があり、今でも連綿と年一回行われている。その運動会を開催するための実行委員会があり、前述のボランティアサークル員時代に参加していた。

これは一年の任期でサークルから二人選出され、一年限定で参加する形だったが、卒業してからも、ちょいちょい関わってお手伝いをしてた。

東京に出奔してからは疎遠になったのだが、大学を卒業して数年間、まめに出席してた時代があった。

春先だったか、秋ごろだったか、もう季節は忘れたが市営施設の貸会議室で企画打ち合わせをした。和室の会議室だった。件の犬、ゴールデンレトリバー種のヘミングウェイ(仮名)は長机の下で、主人の長話(会議)が終わるのを寝て待っていた。

ぼくはその奥側の座布団に陣取っており、途中で小用に立ち、また自分の座席に戻ろうとした。ヘミングウェイが長机から、頭をせり出して寝ていたので、そこを跨ごうとした。跨ごうとした足をバクっと噛みつかれた。

「うおっ」と思ったが、ヘミングウェイも自分の行為に驚いたのか、途中で顎の力を抜いた。その、力を抜いた塩梅がわかる強さで噛まれたのだが、靴下とチノパンの上からだったので外傷には至らなかった。痛いのは痛かったが。

ヘミングウェイの主人は全盲の方だったのでコトに気づかず、ぼくも大いに動揺したものの周りの面々も気づいてなかったので、何事もなかった風に自席に戻った。

後々思うに、頭を跨ごうとしたことに害意を感じての反撃行動だったのだろう。そして大人しいのが売りの盲導犬にだって、性格の違い、温厚度の差異というのはあって、ものごとを端的に世間イメージで捉えることは危険、と肝に銘じたのだった。

ヘミングウェイは皆の人気者(犬)で、ぼく以外のメンバーには愛想が良かった。ゆえ、ヘミングウェイとぼくとの相性が悪かっただけかもしれんが。おわり


◎超短編ストーリー
「さかもりあがり」

ストレスなのだろうか? 飼い猫の背の、毛玉が増えてきた。ぽこん、またぽこん、と取っても取ってもすぐ浮かんでくる。最初はごみ箱に捨ててたのだが、ふと思い立って溜めることにした。巨大なボールになったら、インスタグラムに載せてみよう。バズるかもしれない。

最初は野球のボール。すぐハンドボール。バレーボール。バスケットボールぐらいの量になった。まさか、ここまで私の目論み通りになるとは。

根気よく毛玉写真を、日々インスタグラムにアップした。しかし、思ったほど盛り上がらなかった。世界はファーウェイ問題、イギリスのEU離脱問題、移民問題など十分話題には事欠かない。

猫はすっかり夏毛に入れ替わって、私の興奮や落胆など何処吹く風と、散歩に出かけた。


【海音寺ジョー】
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