映画ザビエル[94]イマージナリー・ヒトラー
── カンクロー ──

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◎作品タイトル
ジョジョ・ラビット

◎原題:Jojo Rabbit
公開年度:2019年
制作国・地域:アメリカ
上映時間:106分
監督:タイカ・ワイティティ
出演:ローマン・グリフィン・デイビス、トーマシン・マッケンジー、スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェル

◎だいたいこんな話(作品概要)

第二次世界大戦下のドイツ。ヒトラーに心酔する10歳の少年ジョジョは、ナチスの青少年集団ヒトラーユーゲントに入団し、立派な兵士になるために奮闘していた。

ある時、上官からウサギを素手で殺すように命令されたが実行できず、臆病者のあだ名として「ジョジョ・ラビット」と呼ばれるようになってしまう。さらに、その汚名を返上しようと手榴弾の訓練で張り切り過ぎた結果、大怪我を負い、顔に傷も残ってしまった。

不本意ながら自宅で過ごす時間が増える中、死んだ姉の部屋に隠し扉があるのを発見する。扉をこじ開けてみると、突如ジョジョの母親から匿われていたユダヤ人の少女が姿を現した。

少女からナチスに密告すれば、母親も協力者として命はないと脅され、パニックに陥るジョジョ。誇り高いナチスの一員と自負するジョジョは、空想上の友人でもある、敬愛するヒトラーに相談しながら対処法を模索するのだが。





◎わたくし的見解/いつかはお別れする空想の友

ヨーロッパで制作されたものでも、ヒトラーを面白おかしくいじる作品はあるものの、良くも悪くもアメリカ映画独特の軽さが窺えるものでした。劇中でコミカルにヒトラーを演じている変わった名前の監督、タイカ・ワイティティはマーベル作品の「マイティ・ソー バトルロイヤル」を手がけた人と知り、大いに納得しました。

大戦中で、しかもユダヤ人を匿っているという深刻で緊迫した雰囲気は、ほとんど鳴りを潜めており、代わりに朗らかで美人で優しい母親からのアフォリズムに溢れ、愛嬌たっぷりの少年がジブリアニメで見られるような精神的成長を遂げる物語は、いかにもディズニー配給らしい内容。

かつて、どうしようもないアル中の中年男と娼婦の腐れ縁を描いた物語が、ディズニーでの配給が決まった途端、キラッキラした玉の輿ストーリーに変貌したという伝説はやはり本当なのでしょう(その作品は「プリティ・ウーマン」と名付けられました)。

ディズニーの息がかかったから、という訳ではないようですが、戦争ものだと分類しない方が、違和感なく楽しめるはずです(はじめから、コメディ&ヒューマンドラマを謳っているので、当然と言えば当然ですが)。

とにかく、ジョジョを取り巻く大人は優しい人ばかりで、たとえばヒトラーユーゲントの教官クレンツェンドルフ大尉。そして誰よりも、母親のロージーは本当に素晴らしい女性です。ただ、戦時下で明るく振る舞う姿の裏側ではジョジョにも隠している事実があり、すべては平和主義に基づく行動だからこそ悲劇を招いてしまいます。

制作年度の2019年は、母親役を演じたスカーレット・ヨハンソンには当たり年で、以前こちらで紹介したことのある「マリッジ・ストーリー」と同様に、温かみがあり子供にしっかりと寄り添う母親としての姿は、彼女の新境地と言えます。

また、個人的に大好きな俳優サム・ロックウェルが、クレンツェンドルフ大尉として大変おいしい役どころを頂いていたことも嬉しく感じました。主人公ジョジョも、顔立ちが似ているのか、表情の作り方が似ているのか、サム・ロックウェルを彷彿とさせる味のある子役で、今後どのような役柄を演じていくのか楽しみでもあります。

コロナウィルスの影響で、「007」の公開は延期になってしまったし、絶対に逃したくなかったジム・ジャームッシュのゾンビ映画も観に行くことが出来ず、自宅で鑑賞するにしても、スカッとしたものが良かったので、本作のアメリカらしいライトな感覚も、主役の男の子のパズー的な(子供ながらに誰かを守れる存在になろうとする)成長も清々しくて、良い塩梅でした。

スカッとしたいだけなら「トリプルX」シリーズとかでも良かったのでしょうが、この時期だからこそ欲しかった微笑ましさなどの要素を吸収できて、とても満足しています。デトックスをお求めならば、是非どうぞ。


【カンクロー】info@eigaxavier.com

映画ザビエル
http://www.eigaxavier.com/

映画については好みが固定化されてきており、こういったコラムを書く者としては年間の鑑賞本数は少ないと思います。その分、だいぶ鼻が利くようになっていて、劇場まで足を運んでハズレにあたることは、まずありません。

時間とお金を費やした以上は、元を取るまで楽しまないと、というケチな思考からくる結果かも知れませんが。私の文章と比べれば、必ず時間を費やす価値のある映画をご紹介します。読んで下さった方が「映画を楽しむ」時に、ほんの少しでもお役に立てれば嬉しく思います。