映画ザビエル[107]新旧作品を見比べてみた
── カンクロー ──

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◎作品タイトル
レベッカ

◎作品情報
原題:Rebecca

〈1940年版〉
制作国・地域:アメリカ
上映時間:130分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
出演:ジョーン・フォンテイン、ローレンス・オリヴィエ、ジュディス・アンダーソン、ジョージ・サンダース

〈2020年版〉
制作国・地域:イギリス
上映時間:123分
監督:ベン・ウィートリー
出演:リリー・ジェームズ、アーミー・ハマー、クリスティン・スコット・トーマス、サム・ライリー

◎だいたいこんな話(作品概要)

資産家の老婦人ヴァン・ホッパー夫人の付き人(コンパニオン)として、モンテカルロのホテルに滞在していた「わたし」は、イギリスの名家出身である紳士マキシム・ド・ウィンターと出会い恋に落ちた。

すぐさま2人は結婚し、ド・ウィンター夫人となった「わたし」は、マンダレイと呼ばれる有名な大邸宅で暮らすことになった。

しかし、そこでは屋敷を取り仕切る使用人ダンヴァース夫人や、マキシムの亡くなった前妻レベッカの存在が今もなお絶大で、女主人としての振る舞いなど分からない「わたし」は戸惑い、自らの素朴さに強い劣等感を抱く。

加えて、レベッカについて口を開こうとしないマキシムの様子も、マンダレイで孤独な「わたし」の精神を追い込んでいく。

そんな中、一年前に海の事故で死んだとされるレベッカの遺体と、乗っていた船が見つかるのだが。

原作は、1938年に発表されたダフネ・デュ・モーリアの同名小説。





◎わたくし的見解/新しい解釈のむずかしさ

1940年版はヒッチコック作品だと知り、少し期待過剰で鑑賞した。そのせいか、スリリングさという点では、現代(2020年)版の方が優っていたように私の目には映った。

同じ小説を原作としているため、台詞の多くは新旧で目立った変化は見られない。しかし、とくにレベッカの死の真相に迫る終盤において、物語の展開に明確な違いが出てきた。

2020年版では、ひた隠しにされてきたこの謎を追求する場面が、ヒロインの動向を中心にスリリングに描かれていたためだ。

また現代版では、ヒロイン像に「新しい解釈」が加えられている。ド・ウィンターが惹かれた「わたし」には、洗練とはほど遠くても若さと可憐さがあり、華やかさがなくても謙虚な慎ましさがある。

これらは前妻のレベッカと対照的なものばかりだが、旧作での新妻の「わたし」は、持ち前の優しさと愛情の深さを見せつけることで、大人の女性へと成長した様子を伝えていた。

対して新作の「わたし」は、自身が幸せを掴むことを目指して(レベッカに勝つことを目的として)、闘うヒロイン像を確立していた。

このように能動的にハッピーエンドを勝ち取る強さは、ディズニー映画でもよく見られる現代的なヒロインの姿だが、「レベッカ」の新作で、それが成功しているとは断言しづらい。

原因としては、旧作との違いを打ち出したい使命感や、サイコスリラーとしてディズニー作品などとは異なる含みのある要素を盛り込もうとしてしまった部分にある。

前述したように、旧作のヒロインに自発的な行動はなく、受動的にハッピーエンディングを手に入れている。

現代に生きている私にとって、彼女の慎ましさを格別に魅力的だとは感じないが(超絶美人なので、その点では十二分に魅力的だが)、善人が幸せになるという点で作品としての魅力度が旧作の方が高い。

新作のヒロインが悪人なわけではないのだが、夫を無実にするためには悪事に手を染めることもいとわない言動は、鑑賞後の印象を悪くさせた。

新作の展開と「わたし」の行動力は、ド・ウィンターの無実の罪を晴らすためではなく、彼の無罪判決を勝ち取るためにあり、さらにラストシーンに置かれた後日譚も蛇足感が否めない。

現代では、男性に求められても女性が「大人しく控えめ」である必要はない。けれども、人として「慎ましさ」や「謙虚さ」があることは美徳なのではないだかろうか。

そういうものを失わずに、強く自立した女性になったっていいんじゃないの? と現代版のヒロインの描き方に、少し疑問を抱いてしまった。

実は、旧作を後から観る形になった。初めに述べたように、ヒッチコック作品のわりに感動は少なかったのだが、新旧どちらでも息を呑むほど絢爛豪華な邸宅マンダレイが焼け落ちるクライマックスについては、さすが、旧作の方が圧巻だった。

また、年代の古い作品は演出が古典的なだけでなく、男女のあり方にリアリティーも感じにくいが、そのようなディスアドバンテージがあっても、作品として綺麗に終幕していたのは、ヒッチコック作品の方だった。期待したインパクトは少なかったものの、まとまりの良さは新作を上回っていた。

とは言え、名作と謳われていても古い作品を鑑賞するのは、どうしてもハードルが高くなる。その点では、新作の方がスッと入ってきやすいに違いない。

いくらか苦言を呈したが、キャスティングに関してはキーパーソンのダンヴァース夫人を筆頭に、新作の方が個人的には気に入っている。

ヒロインも旧作と比べるとキュートな印象なので、完璧な女性と称されるレベッカの存在に苛まれる様子もしっくりきていた。

新しい解釈という点では、それほどの成功を感じられなかったが、観賞をおすすめ出来るのは2020年版だと言える。もしかしたら本当に面白いのは、原作小説なのかも知れないが。


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映画ザビエル
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