ローマでMANGA[47]アングレームに跳ぶか、MangaBook
── midori ──

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MANGAの構築法を解説するシリーズ、MangaBookの企画を立て、学校長に話したら学校の出版部から出そうということになった。その続きを。

(その経緯はこちら)
< https://bn.dgcr.com/archives/20110527140200.html
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< https://bn.dgcr.com/archives/20110617140100.html
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一冊目の「キャラのスケッチからストーリーを作る」と、二冊目の「フキダシはどこへ」の構成と文を書き終わり、二冊目のアレッサンドラ嬢の作画はすべて終わった。

漠然と書いても、文の長さをどのくらいにするのかわからないので、エディトリアル・ソフトで仮のレイアウトを作り、画像を配置しつつ、そこへ直接文を入力していった。

仮のレイアウトを編集長でもある校長に見せたら気に入ってくれた。編集部のデザイナーのお仕事が少し減った。Midori風イタリア語を、ちゃんとしたイタリア語に直す大事な役目が残ってるけど。

アレッサンドラ嬢は、頑張って早いスピードで描いていくのだけど、時々連絡が途絶える。体に故障があって、時々医者にかかり、ひどい時には二〜三日入院したりするのだ。校長・編集長が発表したいという1月の末までに、がんばって間に合わせたい、だがこのがんばりで彼女の健康を害してはいけないという思いが入り乱れる。

私に見せるために低い解像度で送ってきていた一部の原稿を、フォトショップを駆使してなんとか使える大きさにして、アレッサンドラが再度スキャンする手間を省いたりした。

それでも担当のデザイナーは11月末に入稿してくれと言っていたのに、入稿できたのは12月10日だった。アレッサンドラ嬢は、まだ駆け出しなので、スキャンした白黒原稿のお掃除をしないで送信してくる。「消しゴムツール」でクリッククリックしてお掃除をして、肩を凝らしながら、間に合え間に合えと呪文を唱えた。




アレッサンドラ嬢より、ずっと早くを仕事を始めていた、一冊目の「キャラのスケッチからストーリーを作る」作画担当のマウロ君は、パートタイムの仕事がフルタイムになってしまって、作画のスピードががくんと落ちた。12月の二週目になってもまだ上げてこない。

絵だけで食べていけるようになるのは簡単じゃない。仙人になると何日も食べなくても生きていけるそうで、学研から出ていた「仙人になる方法」という本を買って読んだ。食べなくてよくなっても、家賃や電気代を払わなければいけないので、収入の道はどうしても確保する必要がある現代生活の悲しみよ。だから、マウロ君に仙人になる道は教えず、収入の道を大事にしてもらう。

当初は一冊だけで1月のフランス・アングレームの国際漫画祭で発表しようとしていたので、アレッサンドラ嬢との「フキダシはどこへ」だけでもいいといえばいえるものの、二冊で登場したいという欲はある。それだって、予定の全六巻にはまだ及ばない。

・アングレーム国際漫画祭ウィキペディア
< http://p.tl/CNOY
>
・アングレーム国際漫画祭公式サイト
< http://www.bdangouleme.com/
>

「どんな状況?」と聞いたメールに返事がない。おーい、アングレームに跳ぼうよ。

●極秘の中身...を惜しげもなく開示してしまおうかな

一冊目の「キャラのスケッチからストーリーを作る」は、ここで何度も紹介している私のバイブル、「漫画のスキマ」(菅野博之著、Comickersテクニックブック)の中にあったストーリー作りの実践を参考にした。
< http://p.tl/6NO9
>

マウロに「なんでもいいから」とラフなスケッチで人物を描いてもらい、それを見ながらチャットした。その人物の性格を掘り下げ、何が彼をそうしたのかをおしゃべりしながら作り上げ、脇役も出し、16ページのMANGAを構成した。47分で話が一つ出来て、マウロ君もおもしろがった。

そのチャット内容と、一回目のネーム、お直しネーム、出来上がった原稿、というのがこの一冊目の内容だ。

二冊目の「フキダシはどこへ」は、MANGA構築法の大事な要素のひとつ、フキダシの位置について話す。

学校の生徒に原稿を描かせると、フキダシは画面の余ったところに入れる。フキダシを先に読むか、キャラを先に目にするか、フキダシとキャラがくっついているか、離れているかで読みの速度が決まり、キャラの感情が違ってくるので、とっても大事なのだ。

同じレイアウトの原稿に、一枚はフキダシを角に統一して配置、もう一枚は読みの速度を考慮して配置し、違いを見てもらう。フキダシの位置を変えることで、どんな感情や状況を表せるかを大きく四つにわけて、例をあげて解説する。16ページのアレッサンドラの書き下ろしMANGAを掲載し、その後で各ページのフキダシの位置とその意味と効果を解説。これを読めば、フキダシをコマの余ったところに配置する子は皆無になるであろう。

●もう一つの効能

MangaBookには、MANGA構築法を解説する以外に、もう一つ大きな役目を負ってもらった。まだプロでない有望若手を紹介する。だから、一冊に付き一人に作画を全部やってもらい、必ず短編作品を掲載する。最後の見開きで、写真か似顔、略歴と紹介文を載せる。

校長・編集長は、このMangaBookの英語版も作ろう、iPad版も作ろう、と言っていたので、MANGA構築法と共に、彼、彼女らも世界に跳び立つきっかけになればと、強く願うのであった。仙人になるのはその後で良い。

●ローマを出る

出るのは、MANGA構築法セミナー。と、いうわけで、話題がちょっと変わる。

10月に初めてローマの外、「サルデーニャ」でのセミナーを行った。
< https://bn.dgcr.com/archives/20111027140100.html
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12月に入ってから、マンガ学校のイェージ校から連絡があり、MANGAセミナーを一回3時間、三回開催しないか、と言ってきた。イェージはイタリア北東部、アドリア海側の甘口赤ワイン・ベルデッキで有名な町である。
< http://p.tl/b0n0
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イェージ校は、ローマ本校の配下にあるのではなく、校長のグラツィエッラさんが采配を振るっている。イェージ校が手助けをしているペスカーラ校でも同じ内容でセミナーをしましょう、とのこと。
< http://www.scuolacomics.it/portale/scuola/scuola_jesi.htm
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来年の3月から4月にかけて実施しようと話がまとまろうとしている。MANGA構築法の種を、ローマを出て他のイタリアの地に撒くチャンス!

【みどり】midorigo@mac.com

いろいろネガティブなことがあった年でしたね。でも、何事も魔法の杖はないので、短時間でぱっと良い方向へは行かない。あせらず、地道に、飽きずに、コツコツというのが、唯一のあり方ではないだろか。短時間に、すぐに結果を欲しがる。自分の益のみを考える。こうした短絡的なありかたではなく、次世代のことも考えて、つまり目に見えないものをも大事にし、我という小さな器の波の大小を気にしない。

幕末って、今の様々な危機に面した現代の日本に通じるものがあるようです。
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イタリア語の単語を覚えられます! というメルマガだしてます。(サボってます)
< http://archive.mag2.com/0000075559/index.html
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