現在手に入れることができる時計は、時刻調整を司る部分、また動力源によって大きく分けられます。自動車では「エンジン自動車」「電気自動車」「ハイブリッド自動車」などがありますが、それになぞらえて捉えると分かりやすいと思います。
●機械式時計
主にゼンマイなどの物理的な力を動力源とする時計です。振り子やテンプでゼンマイのほどける力を調整し動作します。クオーツ時計が普及する以前は、時計と言えば機械式時計を指していました。
・手巻き時計
内蔵されたにゼンマイを手で巻上げることで動作する時計です。腕時計はもちろん、置き時計などにも見られます。ゼンマイの巻き上げには1分もかかりませんが、手巻き時計所有者だけが体験できる贅沢な時間です。
・自動巻時計
基本的な機構は手巻きの時計と同じですが、内蔵された錘(おもり、ローター)が回転することで、ゼンマイを巻上げる仕組みを備えます。
手巻きの腕時計では、ゼンマイを巻きすぎるとゼンマイが切れてしまいますが、自動巻の腕時計には巻きすぎを防ぐ機構が組み込んであります。また、補助的に手巻きでゼンマイを巻上げられる機構のものも多くあります。
●クオーツ時計
主に電気を動力源とする時計です。電圧を加えると水晶が振動する効果と、電流の流れるコイルが磁力を帯びる効果を利用して動作します。
腕時計では数年に一度電池を交換する必要がありますが、ゼンマイを巻く手間がなくなり、メンテナンスをする頻度も下がりました。クオーツ時計の登場で、時計の価格は劇的に下がりました。
・電池式時計
現代もっとも一般的に知られている時計です。圧倒的な高精度と低価格を実現していますが、数年に一度は電池を交換する必要があります。腕時計などでは、10年間電池の交換が不要であることを謳うものもあります。
・光発電式時計
光で発電し、蓄電した電気で動作する時計です。初期の光電池は効率も悪く、集光部分に大きな面積が必要でしたが、時計の動作に必要な電気の量が他の電化製品に比べてわずかであったため、比較的早く実用化されました。光のない環境が続くと使用できなくなります。
・熱発電式時計
腕に装着することで温まったケースと、外気との温度の差を利用して発電します。熱の差で発電する「熱電対」をいくつか組み合わせた「熱電素子」が利用されています。
・自動巻発電式時計
自動巻と同様のローターを備え、その回転を利用して発電する時計です。時間調整を司る部分の仕組みは、クオーツ時計であるため高い精度を誇ります。また電池交換の必要がないので、極限的な状況での使用に最適です。
・スプリングドライブ
ゼンマイを動力にもち、調速にクオーツを採用した特殊な時計です。電池交換が不要で高精度という、機械式時計、クオーツ時計のよいところを併せ持った時計です。
・電波時計
基本的には電池を備えたクオーツ時計ですが、定時に、また任意のタイミングで電波による時刻修正を行うことで、クオーツ以上の高精度(10万年に1秒)を実現しています。
●音叉時計
主に電気を動力源とする時計のひとつです。音叉の振動を歯車に伝えて動作します。音叉時計はその特許のためにブローバ社の独占市場でしたが、直後にクオーツ時計が発売されると、急速にその存在意義を失っていきました。
【吉田貴之】info@nowebnolife.com
イディア:情報デザインと情報アーキテクチャ
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兵庫県神戸市在住。Webサイトの企画や制作、運営を生業としながら、情報の整理や表現について研究しています。