ローマ在、マンガ学校で講師をしているMidoriです。私の周辺のマンガ事情を通して、特にmangaとの融合、イタリア人のmangaとの関わりなどを柱におしゃべりしていきます。
今回は、近況報告みたいな形でお題が三つあります。
(一)4月5日から8日まで開催された、毎年恒例のローマのコミックスフェア「ROMICS」の話
(ニ)学校のユーロマンガコースの話
(三)私の新企画マンガの話
■(一)ROMICS■
ここで何度も書いたコミックスフェア。年二回ローマちょっと郊外、国際空港のフューミチーノ空港にほど近いフェア会場で開催される。
前回から4日全部ではなく、土日の2日だけ顔を出すようになった。フェアに顔を出す数少ない講師の一人、ということで重宝され、毎回学校の名前で開催するイベントの一つを割り当てられる。
今回は学校開催のイベントだけでなく、ROMICS事務所からもイベントの依頼があった。学校のイベントが土曜日、ROMICSのイベントが日曜日。金曜日は学校の授業があるからどっちみち行かず、木曜日は家での仕事に割り当てた。
回を重ねるごとに、キャラフェスの様相の方が強くなって行くフェアでもある。
土曜のお昼少し前に会場に到着。ローマっ子の中には、うちの旦那みたいに有料駐車場という選択を一切しない人がいるが、私は駐車できる場所を探す手間より有料を選ぶ。
フェア会場の駐車場は一律5ユーロだったのが、なんと、無料になっていた。その代わり(?)会場内のエスカレーターがことごとく停止していた。なにか関係があるのかどうかは不明。
ちょっと遅い時間に着いたので、広々した駐車場のかなり奥の方に車を停めることになった。車の置き場所を忘れないように、何度も「出口のロータリーの次のゾーンで、県道に近い一画」と唱えてから車を後にした。
一度、車を置いた場所を忘れて歩き回ったことがあるのだ。セクションごとに小さな表記があるけれど、セクションがかなり広くてあまり役に立たない。
私はゲストなので、切符売り場に並ばなくていいのが助かる。入るとすぐに、いや、駐車場から延々と会場入り口に、歩きながらすでにたくさんのコスプレイヤーに遭遇する。
コスプレって、やるのもエネルギーがいるけど、見るのもエネルギーがいるなぁと感じた。「きゃー!〇〇だ!」と声を上げる女の子を尻目に、写真を撮る気も起こらずに、醒めた思いでコスプレイヤー達を追い抜いて行った。
こちとら、3月に65歳になったばかり。立派な老人だからそういうことには気持ちが向かわなくなっている。自分たちで工夫して丹念に大仰な武器など作って、すごいなーとは思うのだけど。
あぁ、そうか。多分、多くのコスプレイヤーが題材にとるキャラクターそのものを私は知らない、というのも気持ちが入り込めない理由なのかもしれない。
ROMICS開催のイベントは、若き(28歳。日本のmanga界だと若くないかもしれない)マンガ家の、エリーザ・メニー二さんとのセッション。
彼女は去年「NIPPON FOLKLORE」という本を出して、その斬新な手法にかなり注目を浴びている。「NIPPON」がらみで私も呼ばれたのだ。
まぁ、エリーザさんが主体なわけだけど(彼女とその本がなければこのセッションはなかった)フェアの主催者が主催するイベントに呼ばれたという事実が、認められたという快感をもたらしてくれたのであった。
エリーザが主体、ということはわかっていたので、なるべく彼女を持ち上げるようにしようと思っていたのだけど、司会者がmangaの技法などの質問を私に投げかけるので、ちょっと喋りすぎたかもしれないと反省している。
学校のブースでも、顔を出すと「ミドー、すぐに席を用意するからね」とお絵かき(私の場合は似顔絵)の要請があって、これも「認められた」快感で今回のROMICSは気持ちよく過ごせた。
エリーザさんの本(出版社のサイト)
https://www.oblomovedizioni.com/libri-nippon-folklore.php
エリーザさんとのセッション風景
https://photos.app.goo.gl/qWFhUT9nyj7pfBcq9
学校のブースでお絵かき中
https://photos.app.goo.gl/LQJQEmk7pUioFJj4A
出してもいいよ、と言ってくれたダリオ氏と似顔絵
https://photos.app.goo.gl/qQTBtzM7aQBvGZgY8
学校主催のもう一つのイベント、「天才的な企画」の発表
https://photos.app.goo.gl/4VeUjhJT7enkW4yg7
■(ニ)ユーロマンガコース■
我がユーロマンガコースでは、コアミックス(600万部を売り上げた頃の「少年ジャンプ」の編集長の堀江信彦氏、manga家の原哲夫氏、北条司氏、次原隆二氏が設立したmanga出版社)が主宰するサイレント・マンガ・オーディションへの参加を授業の一環にしている。
春の回は3月末日締め切り。1月にアイデア出しから始まって、どうにかこうにか14人中13人が仕上げて提出した。ここでも、優秀生徒の4人は締め切りの前に仕上げ(原稿のレベルもなかなか高い)さっさと提出してしまっていた。もちろん、その前にネームのお直しも十分にしている。
初めて自分のmanga作品を仕上げた生徒が半分以上。マンガ家になりたいと思っていながら、なぜ作品を描いてみようと思わない生徒がいるのかなと不思議でしょうがない。もっとも、ヨーロッパでマンガ家というと、作画家の意味であることの方が多いので仕方ないのかもしれない。
生徒の中で一人、休みがちで、休んだ授業の日に何をやったのか聞くでもなく、ただ登録してるだけの生徒がいて、その生徒がただ一人参加しなかった。高い授業料を払って、何をしたいのかよくわからない。捨てるお金があるならくださいと言いたくなってしまう。
サイレント・マンガ・オーディションの発表は8月か9月。4人のうち誰かが、賞に引っかかるんじゃないかと期待してるのだけど。
この作品作りを通じて、14人中の2人が独自の作風を表に出した。これは嬉しい収穫。コアミックスには受けないかも知れないけれど、うまく育てていけば、ヨーロッパで通用すると思う。
■(三)私の新企画マンガの話■
2年前に出たアイデアで、こうの史代さんの「この世界の片隅で」を知った時はびっくりしてしまった。「母が生きた大東亜戦争の話」というコンセプトが同じだったから。
あの戦争のことを様々な方向から語ってよいのだ、という時世になってきたのだと思う。だから、私は私で私の語り方で作品を作る。
絵の技法としては、墨絵っぽくしたいと思っている。こういう感じ↓
https://photos.app.goo.gl/Ra7BmCf8vjrMdPVz9
でも、墨絵っぽい絵でページをコマ割して描いていくと、あまりにも絵の情報量が多くなって重くなりすぎるし、分かりにくくなる。
ともかく、技法をちゃんと身につけようと、話の内容に合いそうな写真をダウンロードしては、スケッチしながら構想を練っていた。
時々ネームをササっと描いてみるのだけれど、どうもピンとこない。結局、いわゆるmanga風のコマ割ではうまくいかないと結論付けた。あれこれ思いを巡らせていくうちに、江戸時代の黄表紙に思いが至った。
黄表紙↓
https://edo-g.com/blog/2016/03/kibyoshi.html
コマ割りができないのだから、コマ割りしないでいけばいいじゃん。このアイデアを友人で学校の副校長の、ジョルジャに相談してみた。先月の中間考査の話の投稿に出てきた彼女だ。
https://bn.dgcr.com/archives/20190314110100.html
いたく気に入ってくれて、絶対面白い! と言ってくれた。後は、セリフが必要な時に、吹き出しで白く抜くのはおかしいから、どうやってセリフを置くかだね、というサジェスチョンしてくれた。彼女は私の編集者。
manga構築法の講師だけど、その構築法から離れて構成することになるのが愉快で仕方がない。
この話が出たのがROMICSたけなわで、でも授業があるので行かなかった金曜日。土曜、日曜と認められた気がして気分良く過ごし、気分の良いまま今に至る。
【Midori】
マンガ家/MANGA構築法講師/新しいmanga、マンガの表現法を探す人
イタリアの畜産における動物虐待精通者
ここでは私は外国人で、EU以外の国だから、滞在許可証というものが必要になる。私のそれはかなり昔に発行のもので、期限がないもので気にせずに持っていた。
2年前に里帰りした際、空港で警察にこれは古すぎるから更新して、と言われた。今は5年ごとに更新するのだそうだ。まぁ、考えてみたら、顔も状況も変わるから更新は当然だよね。
ただ、一体どこでどのように更新手続きをとるのかわからない。滞在許可証は国家警察の担当なので、警察のサイトで「移民」のページを見てもわからない。結局管轄の警察署へ行って方法を聞き出すことができた。
警察署でも誰に聞いたらいいかわからなかったりして、イタリアで公文書を発行してもらうのは大変なんです。
郵便局で滞在許可証発行願いのモジュールをもらい、記入して、パスポートと今持ってる滞在許可証のコピー、婚姻証明、印紙、発行手数料を払ってその領収書を一緒にまた郵便局へ持って行って、書留で出す。領収書がわりにアポの日付と時間を書いた紙を受け取る。
そして、その日が来たので行ってきましたよ。でもまだ新しい滞在許可証はもらえない。滞在の原因である旦那も一緒に行き、「私が扶養してます」という書類、警察でモジュールに書いてあることをすべてコンピューターに入力し、持って行った写真もスキャンし、10本全部の指の指紋を取り、そして、「こっちから電話をかけるからそれまで待ってて」とのこと。
実際に書類を作るのはまた別の組織なのだそうだ。「15日でできてくることもあるし、6か月かかったケースもある」そうで。なんで、そう複雑にしたがるんだろう。
[注・親ばかリンク] 息子のバンドPSYCOLYT
MangaBox 縦スクロールマンガ 「私の小さな家」
https://www-indies.mangabox.me/episode/58232/
主にイタリアの食べ物の写真を載せたブログを書いてます。
http://midoroma.blog87.fc2.com/
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