LIFE is 日々一歩(108)[コラム]『声優・中村悠一が語る ~表現者として~』レポート
── 森 和恵 ──

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こんにちは、森和恵です。日帰りで横浜まで《推し活》してきた翌日で、お尻が痛いです(新幹線とイベントで座りっぱなし)。

それはそうと、技術書典7で頒布した本の通頒をしております。WordPress×Dreamweaver本が人気のようで、うれしいです。どうぞよろしくお願いします。
https://r360study.booth.pm/


※同人の世界では、頒布本を通販することを《通頒(つうぶん。通信頒布の略)》と言うそうです。最近知って「ほ~」となりました。

さて、今回は、参加したセミナー『声優・中村悠一が語る~表現者として~』のレポートをお届けします。





中村悠一さんは、わたしの大好きな声優さんの一人です。

アニメだと《マクロスフロンティアのアルト》や《おそ松さんのカラ松》、今期クールだと《PSYCHO-PASS3の炯・ミハイル・イグナトフ》や《バビロンの正崎善》、吹き替えだと《アベンジャースのキャプテン・アメリカ》を演じていらっしゃいます。

http://www.sigma7.co.jp/profile/m_51.html


出演する作品の数も多く人気も非常に高い声優さんで、ご出演のイベントが開催されるとなると……まずチケットがとれません(号泣)。

わたしも機会があるだけ果敢にチャレンジし、「お席がご準備できませんでした(落選の意)」という悔しいメッセージをなんどとなく受け取ってきました。

ある夏の日。裏アカのTwitterタイムラインをふと見てみると、こんなツイートを発見しました。



チケットは先着順らしく、その場ですぐクレジットカードを切って申し込みました(その間5分)。

無事にお席は確保でき、浮かれまくりました。やった! 1時間半もたっぷりとお話を伺うことが出来る! と舞い上がったものです。



午前11時頃にツイートがあり、わたしが申し込んだのが午後3時半。情報が告知されてから、5時間程度で申し込みをしたのだから、さぞかしよい席だろうと思いきや……177番。後ろから2列目という結果でした。

でも、普段ならお席が準備されないのが当たり前の世界。幸せをかみしめながら、大阪から横浜まで新幹線日帰りで、超おめかしして、参加してきました。

NHKカルチャーセンターの講義ということで、200名近く集まった参加者の方々も、落ち着いた服装で静かな物腰でした。教養(カルチャー)溢れんばかりの雰囲気の中、セミナーが始まりました。

後ろの席だったので、お顔はほとんど拝見することが叶いませんでしたが、その分、よいお声とお話に集中することができました(プロジェクターにお顔を映してくださって、セミナー運営のNHKカルチャーさんには本当に感謝です)。

お話の内容をそのまま書いてしまうと、別の機会に受講される方のネタバレにもなりかねないので、ノート20ページ以上にわたる講義ノートから、私が勉強になったと思う事柄を、主観を交えてまとめようと思います。

※これから書くことをそのまま中村さんがお話ししたわけではなく、前後をつなげて「たぶんこういうことが言いたかったのでは?」という推察を交えております。ご了承のほどを。

《 役を演じる上で大切にしていること 》

中村さんはオーディションの段階で、受ける役を研究し、演技プランを作り込んで挑みます。

オーディションで合格すれば、自分の演技プランが見初められたということになるので、現場に入ってからもあらかじめ立てたプランで演じるのだそうです。

しかし、現場に立って実際に作品を作っていく過程で、その演技プランがよりブラッシュアップされ、固まっていくと語られました。

○作品は、役者・スタッフ・プロデューサーなどの、チームで作り上げていくもの。自分ひとりで作るのではないので、うまく回るように場を見て、和音を奏でるように自分の役割を探っていく。

○オーディションのときと違い、役者同士で演じあったときに作品全体のバランスをみて、演技プランの微調整が必要になる。

○その時々で与えられた情報はかぎられていて、見えない部分は演者自身が探って想像し、生み出すもの。最初の役作りは声優の裁量に任されることが多い。情報が少ないのは、スタッフが意地悪で教えないのではなく、スタッフの思惑や意図があったり、役者がどう出てくるのかを見てスタッフの想像を超えてくるのを待ってたりすることもある。

……など、現場での作品作りの様子をうかがう中で、中村さんご自身が、チームで協業しながら自分も出し、作品を作っていくのを本当に楽しく感じていらっしゃるのがわかりました。

『アフレコの現場が好きで、作品の中で生きることが好き』と語られていましたが、演じることが大好きでこの仕事に就いたのが、本当によく伝わりました。

アフレコ現場を『役者とスタッフの発表会』と表現していた中村さん。チームで協業しながら、よい作品を作り上げることに情熱を注がれているんだなと思いました。

ふと、私自身を思い返すと、ひとりで完結する仕事ばかりをしてきたように思います。

今回のお話を聞き、私はたくさんの人でひとつの仕事をするような経験を経ていないので、思慮が足らずに薄っぺらな人間なのだなと感じました。

機会があれば、チームで協業するような仕事もしてみたいと思います。

《 これから声優になる人へのアドバイス 》

○声を張る役が多く副鼻腔炎を煩ってしまい、それが原因で思った声の出ない時期がある。後々になって思うのは、自分を守るのは自分しかないので、ケアをしっかりすることが大切だと思う。無理をして仕事をしない、ジムに行くなどして体幹を作るなどを心がけた方がよい。

○オーディションに合格するのは『運』。役にあった人間か、まわりとのバランスはどうか、話題性・集客性があるかなど、実力以外の要因で決まることが多い。そんな中で、役者の本領であるお芝居を当たり前に出来るようになって、さらに『+α』をつける必要がある。

○役を単に演じるだけではなく「あの人が演じたから、××がよかったよね」と言われるような、僕だからできることを考えて仕事をしてきた。それに加えて最近は、イベントなどで個人としての人間性を出すことも増えたので、人としてのパーソナリティ・特徴を出すことも必要だと思う。

○自分は『ネガティブでポジティブ』。すぐ悪い方向に考えが及ぶけど、自分の中で消化して、すぐに次に行くようにしている。ストレスをずっと持ち続けないように。

○いろんなことを見聞きして自分に取り入れ、リソースを増やしておく。いざというときに「わたしは××ができます!」と言えるように、セールスポイントをハッキリさせておく。

お話を伺うなか、これは声優さんへのアドバイスというだけでなく、仕事人として生きていくためのアドバイスだなと感じました。

中村さんはもうじき40歳だそうで、私より10歳ぐらい年下なのですが、思慮深く考えてひとつひとつのお仕事をされ、今日があり、成功されたんだなと感じました。

見習うところがたくさんありすぎてどうしよう? と焦りますが、仕事の姿勢をできるだけ正していきたいなと思いました。

こうして1時間半の時間はあっという間に過ぎました。

イベントなどでお話しされる中村さんは軽口が多くて、真剣なお話を避ける感じに見受けられていたのですが、今回はすごく真剣なお話が聞けたように思います。

インタビュー形式で行われた今回のセミナーですが、質問される度に目線を上にしつつ熟考されて、静かに話し始めるのが印象的でした。

考えが固まって話し始めると、身振り手振りも増えて熱く話されている感じが、仕事人としての中村さんの素の考えがうかがえたようでした。

最後のあいさつで、起立して、会場全体を見渡すように話してくれたのが、後ろの方でお顔が見えなかったファンの気持ちをくんでくれたようで、すごく嬉しかったです。

その際、真剣な話をしたのが照れくさく感じてしまわれたのか、少しはにかんだ感じだったのを見て、私を含め、その場にいた人の心をつかんで離さなかったのも書き加えたいと思います(余計なことかもしれませんが、ホントに幸せな気分になりました)。

いちファンとしてのセミナーへの参加でしたが、仕事人として自分の姿勢を振り返る点が多く見つかり、大変勉強になりました。ありがとうございました。

……話はまだまだ尽きませんが、今回はこの辺で。いやぁ、推し活はホントにいいものですね。

ではまた、次回お目にかかりましょう!
(^^)


【森 和恵 r360studio ウェブ系インストラクター】
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