LIFE is 日々一歩(114)[コラム]色の違いを見分ける《カラーマネジメントの話》
── 森 和恵 ──

投稿:  著者:



こんにちは。森和恵です。新型コロナウイルスの影響で、さまざまなことが起っていますね。後ろ向きな気分になってしまいがちですが、極力心を乱さないように、平常心で乗り切りたいなと思っています。

さてさて。年明けからスタートした「ふつテクPsAi」ですが、ここ2週間ほど更新がストップしておりまして……。

https://www.youtube.com/playlist?list=PL7LtdGFp5DwQefMEY17m-NFWV6FAGNYnI


というのも、次からのテーマを「カラー」にしてしまったせいで、調べても調べても話がまとまらない……という沼に陥っていました。





ここでは「カラーマネジメント」に必要となる知識を説明するつもりで、「RGBとCMYKの違い」「カラープロファイル」「アプリケーションのカラー設定」などを、専門家でなくてもわかるようにまとめたいなと思っています。

じつはわたし、ウェブ業界にくる前に、スキャナーやプリンタを扱うメーカーのインストラクターをしていました。

担当していた「スキャナープロフェッショナルコース」という授業では、「スキャナーから取り込んだデータをパソコンで加工し、思い通りにプリントアウトする」ために必要な機器の扱い方やソフトの設定を学ぶのですが、そこで必要になるのが「カラーマネジメント」だったのです。

とはいえ、2000年頃の昔話なので、いまでは状況ががらりと変わってきました。

デジタルカメラの普及にともなって、デジタルカメラから直接データを取り込むようになったり、ブラウン管のディスプレーから高解像度な液晶ディスプレーへと変わったりと、入出力機器が変わったぶん、カラーマネジメントの様子も変わってきました。

印刷をしないウェブ制作においても、グラフィックを制作するにあたって「カラーマネジメント」の知識は必須だと考えています。

今回は、カラーマネジメントってどういうこと? というのを調べた資料を見つつ、まとめてみようと思います。

●色と色が違うってどういうこと?

目の前にふたつの色があって、その色の違いを説明してくださいとなったとき、あなたはどんなふうに話しますか?

色の違いは、「色相(色合い)」「明度(明るさ)」「彩度(あざやかさ)」の3つの要素で説明できます。

【色合い、明るさ、あざやかさ。色の世界は、3つの要素の組み合わせ】
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section1/06.html


ただし、見たときの室内環境や人の主観によって差異がでるため、絶対的な指標が必要となります。そこで使われるのが「測色(そくしょく)」です。

測色計という機械を使って物質の色を計って数値化し、色差(しきさ)を正確に割り出すことができます。

【色相、明度、彩度に目盛りをつけると、色のモノサシ(数値化)ができます】
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/color/section2/01.html


測色計では、「L*a*b*色空間(エル・エー・ビーいろくうかん)」という単位を用いて数値化を行っています。

【色彩測定について-濃度計のツボ】
https://www.konicaminolta.jp/instruments/knowledge/fluorescence_point/colorimetry/index.html


L*a*b*色空間は、L*(色の明度。黒←→白)/a*(緑←→赤)/b*(青←→黄)の3次元で色域(いろいき・色の範囲)を表します。

例えば「紅海老茶色(L*:32.154/a*:33.919/b*:19.398)」と「柿色(L*:58.757/a*:44.983/b*:39.69)」を比較すると「紅海老茶色は柿色よりもL*値が小さいので暗く、a*値とb*値も小さいので緑味・青味が強い」と言えます。

【柿色(かきいろ)の色見本】
https://www.color-sample.com/colors/47/


【紅海老茶(べにえびちゃ)の色見本】
https://www.color-sample.com/colors/90/


L*a*b*色空間は、自然界にある色を広くカバーするために、人間の目で見える色域よりも広く、大部分の色が架空の存在(自然界に存在しない理論上の色)です。また、特定のデバイスや環境に依存しない絶対的な色空間です。

●色空間の種類あれこれ

色空間(カラースペース)とは、色を座標で指定できる色の空間で、色を定量的に表すために定義されています。色空間が表現できる色の範囲を色域(いろいき)と呼びます。

L*a*b*色空間をはじめとして、さまざまな種類の色空間が存在します。

L*a*b*色空間がもっとも広い色域を持っていて、それ以外の色空間は狭くなります。絵画や美術品、デジタルデータ、印刷物と、用途に合わせた色空間が定義されています。

▼色空間 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2%E7%A9%BA%E9%96%93


★マンセル表色系(マンセル・カラー・システム):

マンセル表色系では、色相(Hue)・明度(Value)・彩度(Chroma)を用いて
色を表します。

1905年に発表された色を数値化するためのシステムで、美術やデザインの分野でよく用いられています。JIS標準色票(JIS Z 8721[三属性による色の表示方法])にも採用されています。

学生の頃、美術室においてあったり、美術の教科書に写真が載っていたりしたのが「マンセルの立方体」で、縦軸が「明度(Value)」、円周に「色相(Hue)」が配置され、横軸で「彩度(Chroma)」を表した立体の色見本表です。

【マンセル表色系|色の表わし方】
https://www.dic-color.com/knowledge/munsell.html


単位表記が特殊で「HV/C(色相 明度 /彩度)」と書きます。

先程の「紅海老茶」は、この色空間にどんぴしゃの色はなく近似色が「10R 2/6 , 5R 4/10 , 7.5R 4/8」となります。

紅海老茶の色見本のURLの先を見に行くと、「Munsell(JIS Approximate)」という項目にこの近似色の値が記載されています。

マンセル表色系に含まれるすべての色の見本は、以下のリンクからみることができます。

【マンセル表色系の色見本】
https://www.color-sample.com/popular/munsell/


★RGB色空間:

RGB色空間では、赤(Red)・緑(Green)・青(Blue)の三原色を混ぜて色を表現する、加色混合方式の色空間です。

テレビ、デジタル機器のディスプレイで用いられる色空間で、光の三原色と呼ばれます。R・G・Bのすべての色を最大値で混ぜると、一番輝いている「白」となります。

ウェブ制作で必須のCSSで用いられる「rgba()」関数では、このRGBを用いた指定方法となっています。

【RGB】
https://ja.wikipedia.org/wiki/RGB


- CSS】
https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/CSS/color_value


★CMYK色空間:

CMYK色空間とは、印刷物など、インキの組み合わせによって表現されるプロセスカラーの色空間です。

シアン(Cyan)、マゼンダ(Magenta)、イエロー(Yellow)の3色を混ぜたり、黒(K)を用いて色を表現する、減法混色方式で、すべての色を最大限混ぜると、暗い「黒」となります。

なぜ黒色だけ別にインキを準備するのかという理由は、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)を混ぜると黒に近い混色となりますが、完全な黒にならず、また、インク量が多すぎて扱いづらいため、黒を美しく表現するために黒(K)を加えて4色のインキを用いています。

通販印刷など、商業印刷の現場で用いられる色空間です。

【CMYK】
https://ja.wikipedia.org/wiki/CMYK


【プロセスカラー】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%82%BB%E3%82%B9%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC


★HSV色空間:

HSV色空間では、色相(Hue)・明度(Saturation)・彩度(Value)を用いて色を表します。1978年頃発表されたもので、主にコンピュータ・グラフィックスの制作現場で用いられています。

RGBやCMYKと比較して、HSV色空間のほうが人間が色を認識する方法に近いため馴染みやすく、デジタルデータの制作現場では、HSV色空間を用いることが多いのです。

なお、PhotoshopのカラーパネルにあるHSB色空間、(色相(Hue)・彩度(Saturation)・明度(Brightness))と考え方は同一です。

【HSV色空間】
https://ja.wikipedia.org/wiki/HSV%E8%89%B2%E7%A9%BA%E9%96%93


●カラーマネジメントの世界

カラーマネジメントとは、パソコンを用いたデータ処理において、デバイス間の色の差異を少なくするように、色を管理することです。

例えば、「デジタルカメラで撮影した画像データをプリンターで出力する」には、画像の色域は「デジタルカメラから入力(RGB)→パソコンで処理→プリンターで出力(CMYK)」と変換されます。

ネット印刷にデータ入稿する場合は、パソコンで処理する最終工程で指定された方法で、画像データをCMYKに変換してから送ります。

オフィスにあるインクジェットプリンターで直接印刷する場合は、パソコンからプリンタードライバーを通してプリンターにデータを送る時に、ドライバーがRGBからプリンターのインキに合わせたCMYK変換をして出力します。

RGB色空間とCMYK色空間を比較すると、CMYK色空間の方が色域が狭いので、RGBからCMYKに変わる過程で色がくすみます。

【色域】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%89%B2%E5%9F%9F


このように入出力機器によって表現できる色域が異なるため、パソコンのディスプレイでみたものと、プリントアウトされたものの色味が違ってくるのです。

この入出力機器の色の差異を、できるだけコントロールしようとして生まれたのが「カラーマネジメントシステム」です。

macOSの「ColorSync」や、Windowsの「Windows カラー システム(WCS)など、パソコンのOSやソフトウエアに、カラーマネジメントシステムが組み込まれています。

【カラーマネージメントシステム】
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0」


カラーマネジメントシステムでは、デバイスごとの色情報「ICCプロファイル」を用いて、絶対的な色空間として中心にあるL*a*b色空間を介して、相互の色変換をおこないます。

【カラーマネージメント環境構築のメリット】
https://www.eizo.co.jp/eizolibrary/color_management/improvement/


【ICCプロファイル】
https://ja.wikipedia.org/wiki/ICC%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB


カラーマネジメントを用いて正しく変換するには、OSのディスプレイ設定やデータを制作するソフトウエアのカラー設定で、使用デバイスに応じたICCプロファイルを正しく選ぶ必要があります。

適切なICCプロファイルが設定されている環境であれば、あとの色変換はカラーマネジメントシステムが肩代わりしてくれるという仕組みです。

2017年に「一般的な機器を持つ場合のPhotoshopカラー設定」について、動画を撮っていますので、合わせてご覧になってみてください。

【Photoshopのカラー設定】


ここでもうひとつ知っておきたいのが、同じ種類のデバイスでも、性能差で色域が違うということです。

じつは、「デジタルカメラ・スキャナー・ディスプレイ」などのデバイスや「OS・アプリケーション」の違いによって、対応しているRGB色空間が異なる場合があります。

幅広い機器で用いられる「sRGB」、macOSで用いられる「Apple RGB」、Adobeのアプリケーションで用いられる「Adobe RGB」、デジタルシネマ向けの「DCI-P3」、スマートフォンやタブレットで用いられる「Display P3」などです。

汎用性があって狭い「sRGB」よりも、広い色域を持つ「Adobe RGB」や「DCI-P3」の方が、色の再現性は高くなります。

例えば、デザインの現場で用いられるカラーマネジメント対応ディスプレイの場合、「Adobe RGBカバー率99%, DCI-P3カバー率98%」という、高い色域をもつものも販売されています。

【ColorEdge CG2420-Z】
https://www.eizo.co.jp/products/ce/cg2420z/index.html#tab02


このように制作環境によって色域に差が出るため、できるだけ広い色域のデバイスを用いることで、高画質なデータを扱うことができます。

一方、出力側のCMYKについても、印刷機器によって色空間が異なります。多くの印刷会社で扱うプロセスカラー印刷では、「Japan Color 2001 Coated」というICCプロファイルを用いていますが、近年「Japan Color 2011 Coated」というバージョンアップ版のICCプロファイルも登場しました。

また、CMYKのインクを高彩度なものに変更することで、RGBデータのまま入稿して再現できる印刷機器も出てきています。

出力側も、出力機器が対応する色域に差が生まれています。より色域の広い印刷機を用いることで、出力側の表現力も増えています。

【最新CMYKプロファイル「Japan Color 2011 Coated」がやっとPhotoshopに標準インストールされるぞ!知覚的と相対的の使い分けがこれまで以上に重要に!】
https://iwashi.org/archives/4440


【CMYK変換するとき CMYKカラープロファイルはどれを選べば良いか】
https://omoide-photo.jp/blog/cmyk-profile/


【ビビッドカラープリント】
https://www.graphic.jp/options/rgb/vivid_color#vivid_color


……というわけで、今回はここまで。カラーマネジメントの世界は広くて、まだまだ調べたり、実験しないといけないことは残ってそうです。

4K以上の映像作成に対するカラーマネジメントや、スマートフォンやタブレットのディスプレイに登場している広色域ディスプレイについてのカラーマネジメントは、情報も少ないみたいですね。

でもなんとか、次にコラムを書くまでには、このテーマでYouTubeに動画をアップしたいと思います。少しずつしか進みませんが、進めばいつか終わると信じてがんばります。

ではまた、次回お目にかかりましょう!
(^^)


【 森和恵 r360studio ウェブ系インストラクター 】
mail: r360studio@gmail.com
YouTubeチャンネル: https://youtube.com/r360studio

サイト: http://r360studio.com/