装飾山イバラ道[38]クラフツマンシップの吸引力──一澤信三郎帆布/武田瑛夢

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昨年のある時、電車の中で座っていた女性の、膝の上に置かれた布のバッグがあまりに素敵だったので、それがどこのものなのかどうしても知りたくなった。私は欲しい物があると、その物へたどり着くまでの過程自体を楽しむことがよくある。

ここで勇気のある人ならば「あの、失礼ですがそのバッグ素敵ですね。どちらでお求めになりましたか?」とか聞けるだろうけれど、私は聞けないタイプ。というか、見た目だけの情報を持ち帰って、自分で探す楽しみを知ってしまったのだ。

しっかりと全神経を集中してその物を見つめ、外観を脳にインプットする。視線が強くて見られる方は嫌かも。若者言葉で言うところの「ガン見された」感じだろうな。

静かに電車を降りて、家に帰ってからWEBで検索する。その製品は布製だけれど丈夫そうな張りのある生地だった。ブランドタグらしいものもあったけれど、遠くて読み取れなかったのが残念。でも、印象的な黒地に和風な花柄のトートタイプの製品だった。



あの質感はもしかして「帆布」かもしれない。でも、帆布で柄物なんて今まであまり見たことがなかった。Safariの検索窓に「帆布」と入力して、WEBの大海原へ漕ぎ出す。すると、有名な「一澤帆布」の関連がいくつか出て来た。検索候補の上から順に調べて行き、三つめの「一澤信三郎帆布」に飛んでみると、まさしく私が探していた花柄の帆布バッグのシリーズが表示された!

あまりに早くみつかってしまって、ちょっと拍子抜け。今回と同じように、見ただけで探した物の中でたぶん最速だと思う。探していたのは「N-13 草花」という鞄だ。

・一澤信三郎帆布
< http://www.ichizawashinzaburohanpu.co.jp/cgi-bin/index.cgi >

・N-13 草花
< http://www.ichizawashinzaburohanpu.co.jp/products/item.html?n=n13_souka_b >

たどり着く過程を楽しむにはあまりに早い旅だったけれど、想いは遂げられたので満足する。しかし、商品を買うには京都の店舗の他には通信販売しかない。素晴らしいWEBがあるのにネット販売はしておらず、通信販売用のカタログを取り寄せるために、まずこちらから切手を郵送しなければならないらしい。

それは少しめんどくさいなぁと思いつつ、ときどきWEBサイトをのぞいていたら、新宿の伊勢丹でイベントがあるという。京都の老舗のお店の商品が、東京で買えるのは今までにない機会とのこと。これも何かの縁と思って、初日に朝から出かけた(信三郎帆布 in 伊勢丹新宿店は2月25日から3月3日まで)。

たくさんの布のバッグの山の中に、目当ての黒地に花柄のバッグ「N-13 草花」をみつけて手に取る。これは確かに私が電車の中でみつけて羨ましかったあのバッグ。たぶん、その人の方に顔が向いていなければ気がつかずに通り過ぎていただろう。たまたまそっちを向いていて、たまたま目が止まって、その時の自分にバッグのことを検索する時間と心の余裕があったからたどり着いた商品なのだ。しばし感慨に浸る。

どうもこのお店にはファンが多いらしく、限定の商品には人だかりができていた。探していた製品は確保できたことだし、限定の商品も素敵だったので私もどさくさにまぎれて手をのばす。

店員さんにカタログが欲しいと言うと、イベント専用のものはないが商品カタログならあるとのことで、こちらも取り寄せることなくゲットできた。N-13とケイタマルヤマとのコラボの限定バッグ(これも花柄)を買って大満足。私はこの手のトート型の袋物に目がない。

家に帰って、「一澤帆布」の歴史や裁判にもなった一連の内容をWEBサイトで読む。兄弟間の争い事というのはよくあるけれど、双方の見解を読んでも他人が真実を見極めるのはむずかしい。しかしながら、当時の一澤帆布の職人全員が信三郎さんについていったという事実を知ると、何かグっとくるものがありましたね。

今回、このバッグの話を思い出したのも、最近この裁判に大きな動きがあったというニュースを見たからだった(詳しくはWEBサイトの「お知らせ」のコーナーに記載されています)。

私はまさしく物の魅力に引き寄せられてここの商品を知った新参者のファンだけれど、一澤信三郎帆布の今後の商品展開にも期待している。本当にすごくしっかりとした布素材なので、長持ちしそうな風格がある。直しながら使うことができるほどらしい。普通は革に包むと書いて鞄だけれど、このお店では布に包むと書いてかばんと読む。

布のバッグを使うのにちょうど良い季節になったので、ガンガン使っていきたい。私が使っているのをまた誰かが見て、その魅力に引き寄せられたら素敵だと思う。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/ >

やっぱり旦那さんがiPhoneの新しいタイプを買った。大きな白いイヌのストラップももらう権利があったので、私に要るか聞いてくれたけれど、収納スぺースに困りそうだったので我慢した。少しだけ未練がない訳でもない。

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やさしいデザイン―誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
武田 瑛夢
エムディエヌコーポレーション 2007-09

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by G-Tools , 2009/07/07