装飾山イバラ道[101]リス大脱走/武田瑛夢

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井の頭公園「リスの小径」の檻が台風で大破して、リスたちが逃げ出した。ニュースでは飼育係の人たちが網を持って、逃げ回るリスを追いかけていた。リスたちも安定した生活を捨ててまで逃げたいと思ったわけじゃないだろうけれど、外に出られるならそりゃあ一度は出てみるだろう。
以下は、以前にここのリスおすすめと書いた一文だ。

・装飾山イバラ道[97]リスに魅了された人々/武田瑛夢
< http://bn.dgcr.com/archives/20120424140200.html >

海外のabcニュースでも取り上げられていて、動物が逃げるニュースはどこでも注目のネタだということがわかる。猛獣と違ってリスだから深刻な危険もないだろうけれど、困ったことには違いない。同情するようなムードもあるけれど、必死な飼育係とは対照的なノンキな感じのリスが最後に映るのがアメリカらしい。

・Escaped Squirrels Chased by Zookeepers
< http://abcnews.go.com/International/video/escaped-squirrels-chased-zookeepers-16619970 >

そして、大脱走した30匹のリスを捕獲したら38匹捕まったという。増えている。私は井の頭公園の中で暮らしていた野生のリス「野良リス」が、何匹か混じって捕まったのかと想像した。かわいいなぁ、フフフ、とつい笑いが出てしまう。

ニュースの後日談によると、近辺には野生のリスはいなくて、逃げたのが「目視で30匹くらい」だったということで、全部が「リスの小径」のリスだと考えられるらしい。




●動物ニュースの変化

他の動物のニュースでは、逃げたペンギンが再度捕獲されて人気者になったりもしている。そして、神奈川にいたあの白いアザラシのかわいさといったら。手をふって愛嬌をふりまいているようなポーズが忘れられない。

白いアザラシは水族館に保護されたのに、結局は死んでしまったという。このニュースはショックだったし、とても残念だ。私はこのニュースに多摩川のたまちゃんの頃にはなかった情報伝達の速さを感じた。

今と昔が違うのは、現象として起こったことをすばやく一度に多くの人間が、動画として見ることが可能になったということだと思う。天文学者カール・セーガンは、文字の発明によって人間が身体の外部に記憶を持てるようになったと言った。亡くなって以後の今の世の中を見たら、なんと形容したのかなと考える。

人の目が進化して個人の手にする携帯電話のカメラになり、そこからつながった神経のようなインターネットが多くの人間に同じものを見せる。それぞれの人間の個々の脳がその情報を捉え、考え、つぶやき、ニュースを作る。

同じ現象を見た全員の「目」と「脳」と「口」の働きが影響しあっているような感じだ。もはや人間のかなりの部分の機能が外部にもあるのだ。

そして気づきの伝達が「早く」「手軽」になったことで、記者が現場に駆けつけるまで情報を待つ必要がなくなった。誰もが目撃者の目線で現場を見ているような気分になるのが今のニュースなのだ。だからこそ、残酷でショックな現実を間近に感じたのかもしれない。

あの白いアザラシはどのタイミングで助ければ良かったのだろう、そう議論する掲示板もあった。最初は元気に愛嬌をふりまいているように見えたけれど、天気が悪かったせいか数日経っただけで衰弱してしまった。

よく考えてみれば、かわいらしい動物でも、実は水の中ではたくましく何百キロも泳ぎ自分で餌を取って命をつないでいる。自然は厳しいけれど、人の目に触れなくても同じようなことはあちこちで起こっているのだろう。

色が周囲に溶け込んで身を守るのを保護色というけれど、「かわいい」のも弱いものに備わった身を守る力なのだと思う。しかし、かわいいからって安易に自然に手を出してはいけない気もする。

またどこかで何かが人に見つかった時には、ベストな選択ができるように全員の目と脳を使って対処するしかないのだろう。そして、リアルな場面に対処している現場の判断を尊重することを忘れないようにしたい。結局「手」だけは現場でしか出せないのだから。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/ >

夏はメロンがあるとごきげんだ。特にツル付きのメロンをうちでは「アンテナ」と呼んでいる。アンテナ付きのメロンが安く買えると嬉しい。アンテナが少しねじれて乾燥してきた頃が食べごろなんだけど、いつも微妙に熟し過ぎてしまうのを何とかしたい。