もじもじトーク[07]モトヤ活字資料館がすごい!/関口浩之

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もじもじトークの関口浩之です。今回は「モトヤ活字資料館訪問記」をお送り
します。

株式会社モトヤ、ご存じですか? ウィキペディアには「大阪に本社を置く印刷関連機材の専門商社。1922年創業。元々は活字の製造・販売業として創業した。その後オリジナルの組版機(タイプレス・MT-5000など)を開発し、印刷業界などにその名を知られる。」と書かれています。

でも、そう説明されてもピンとこないですね……。

僕なら「モトヤはフォントメーカーの一社です。身近な例をあげると、Googleマップやマピオン等のインターネット地図サービスで使われているフォントはモトヤが開発したデジタルフォントなのです。OEM提供しているようです。シーダ、マルベリ、アポロ、バーチなどの書体が有名ですね。もともと、活版印刷で使用される鋳造活字の製造や日本語組版機を手掛けていました。」って説明します。


●活字資料館をお訪ねして

モトヤさんのご厚意で、過去に3回、活字資料館を見学させていただきました。

最初に見学したのが2011年6月でした。今から2年以上前ですね。モトヤさんは大阪なので、関西在住の川合さん、村岡正和さん、秋葉秀樹さん&ちひろさん達にお声掛けてして、みんなでぞろぞろとおじゃましました。

ここの活字資料館、とにかく感動ものなんです。活版印刷時代から現在のDTPシステム、デジタルフォント時代に至るまでのマシンが時系列に展示してあるのです。あわせて、書体の設計工程、鋳造活字の製造工程、植字台で組版する工程などが分かるように、部品や治具の紹介、説明パネルが掲示されています。

ありがたいことに、開発部長の野口さんが楽しいトークを交えて、一時間ほど丁寧に解説していただきました。お忙しい中、親切に対応していただき、ありがとうございました! 

●活字を鋳造し、活版印刷の版ができるまで

活字資料館で撮影した写真を掲載しました。
説明いただいた内容をすごーく簡単にまとめました。
< http://goo.gl/gNCZCJ >

1)ベントン彫刻機

清書した文字の原図をなぞりながら、活字の母型(金型のようなもの)を作ります。この機械を操作してきれいな母型を作製するには、熟練された技が必要です。日本語の文字の数だけ母型を作る必要があるのと、サイズ単位(5号とか6号とか)毎に用意する必要があるわけです。すごい!

2)活字鋳造機

母型に地金を流し込んで活字を製造する機械です。地金の主な成分は鉛で、スズやアンチモンという素材も混ぜるようです。地金を熱して液状になったものを母型に流し込み、その後に冷やすと、凸型の活字が完成です。

3)植字台で組版

鋳造活字が並べられた棚から活字を拾って(文選)、行送りや文字間調整とかは小さいパーツと組み合わせながら組版してゆきます。最後に木枠を糸でしっかりと縛ります。まさに職人技で組版していることがよくわかります。

それにしても、膨大な数がある日本語活字を文選する作業だけでも、すごい! よく使う活字は取りやすい場所に置いたり、熟練の技が必要ですね…。

一方、活字を鋳造するメーカーの「すごい!」ことと言えば、鋳造する膨大な活字ひとつひとつを、どの比率で製作するかです。経験からはじきだされた統計データのようなものがあって、比率が決まるのだと思います。

なので、鋳造活字を注文する際は「〇〇書体を〇〇Kgください」というようです。よく使われるひらがなはたくさん製造するでしょうし、漢字も使用頻度に応じて製造したのですね…。すごい世界です!

●和文タイプライター、DTPシステムへ

「日刊デジクリ[#3768] 我が家にタイプライターがやってきた!」で、英文タイプライターについて書きました。

よくよく考えると、日本語タイプライターで必要な文字数って膨大な数ですよね…。日本語って英文の文字数に比べて100倍以上あるわけです。だから、キーボードをパチパチと打つような仕組みでは、和文タイプライターは実現しませんね〜。

モトヤ活字資料館には、タイプライターの日本語版みたいなのが展示してありました。日本語の活字がずらずら〜と機械の中に収まっています。そして文字盤から必要な文字を一個一個、手動で選択するタイプのものと、電子式で選択できるものがありました。

和文タイプライターって表現がいいのか、組版機と表現するのはいいのか、よくわかりませんが(どっちもOKのような気がする…)、商品名である「タイプレス」で分かる人には分かるようです。

そして、1980年代初頭に日本語ワープロや電子編集組版機が開発され、同時にレーザープリンタが普及するようになり、DTPシステムの礎になりました。

●先人の英知を学ぶことは楽しい!

活版印刷の組版の工程だけでなく、鋳造活字が作られるまでの工程を実際に見た体験は、想像力がアップしたというか、感性がシェイクされたという感覚でした。日本語をいう特殊な文化を持つ、日本人としての心も豊かになった気がします。

先人の英知を実際に目にすることができる博物館級の展示室は、これからも長く保存されることを願っております。

最近では、デザイナーでない人でも、ちょっとした印刷物をKeynoteやPowerPointで作成する場面があったりします。高性能なカラープリンターでマット紙に印刷かければカタログや説明書も完成しちゃうわけです。

アウトプットが紙であってもPDFデータであっても、情報を伝えるための一番重要なエレメントは文字だと思うんです。

モトヤ活字資料館のような活字や文字の歴史、DTPのルーツを学ぶ場所が全国いたるところにあるといいなぁとつくづく思いました。デザイン力や想像力が広がるはずです。

ガリ版(謄写版)、活版印刷、写植(写真植字)、DTPを学ぶ場所がもっともっと増えるといいなと思っています。日本人なら誰もが体感できる活字博物館ができるといいのですが。

・株式会社モトヤ
< http://www.motoya.co.jp/ >

【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
< http://fontplus.jp/ >

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。