装飾山イバラ道[11]パリ旅行記(1)険しいエッフェル塔
── 武田瑛夢 ──

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パリの旅行から無事(?)帰って来たので、これからしばらくは旅行のことを書こうと思う。楽しくて、驚かされて、そして疲れた一週間あまり。まずはパリ旅行の概要とエッフェル塔のエピソードを。

ここのところ、パリに頻繁に出張していたうちのだんなさん。寒空に凱旋門とか遠くの観覧車とか、さみしげな写真を撮って来ていた。パリなんて行ってみたい気持ちバリバリの私からすれば、なんとももったいない感じなのだ。

これは一緒に行って、楽しいところをたくさんみつけようとパリ旅行を決行。ついでに生牡蠣がおいしいRのつく月のうちにということに。そして旅費なども3月は底値に近いのです(後で理由はいろいろとわかる)。


ムーラン・ルージュ (ベストヒット・セレクション)パリへ行く前の予習的準備では、映画をDVDで二本見た。「ムーラン・ルージュ」と「アメリ」。「オペラ座の怪人」も見直そうかと思ったけれど、極度のファンのあまり、過去に見すぎていて再度見なくても十分だったので省く(笑)。

3月のパリはなかなか寒かった。着ていくものに悩んだけれど、ダウンのロングコートでも周囲の人に溶け込むことができた。帰ってきたら東京ではもう暖かくて、ダウンでは浮いてしまったけれど。

さて、飛行機に乗って12時間程で着いた初めてのパリは静かな美しさ。でも、どこの都市も飛行場から街まで出るまでの距離が意外と長いんですよね。長旅と高速道路の後に、石畳の上を行くタクシーの振動ですっかり無口になり、あまり景色を楽しめないスタートになってしまった。

パリの街は、立派な石造りの外壁に黒いメタリックのベランダや門のデコラティブな飾りが美しい。銀座の高級ブティックの外観の作りのようだ。こういう装飾的なものにどっぷり浸かりたいというのも旅の目的でもある。

最初こそ感激していたけれど、同じレベルのゴージャスな建物が通りを面してズラーっと、向かい側にも、角を曲がっても、延々と続く。

基礎構造が既にすごいのだ。びっしりとこんな建物が並んでいるのを見るのは初めてなので驚く。一階の入り口だけは、色とりどりの現代的な看板やネオン。ヨーロッパは骨格からして違うというのが最初の印象。

小道を入って自分たちのホテルへと着いた。オペラ座近くのプチホテル。今回は二か所のホテルを移動する。最初のホテルは立地優先でオペラ座周辺にしたのだ。

プチホテルはその名の通り小さいとホテル評で読んではいたものの、二人がぎりぎり乗れるくらいの小さいエレベーターに狭い廊下。部屋が不安だったけれど、天井が高かったのとバスタブが大きいのが嬉しい。お風呂が大きすぎて、足をのばしきっても滑ってしまって危なかったけれど。まずはここで五日間お世話になる。

パリでの楽しみは美術館巡りと、生牡蠣と買い物と、メインは五日目のムーランルージュのディナーショー。あまり予定を詰め込まないつもりが、途中でイギリスに日帰り旅行するプランを入れてしまったために、その後いろいろとハードになる。今思えば観劇関連にオペラ座も入れれば良かったけれど、スケジュールを立てたのが急だったためちょっと無理があった。

無駄に時間を使ってしまったなと反省するポイントはいくつもあって、ひとつはエッフェル塔。最初なかなか天気に恵まれなかったので、後回しにしてしまっていたのがエッフェル塔と凱旋門。でも、こういう大きなものをガンと見ておくのは旅行気分を盛り上げますね。もっと早いうちに見ておくべきかも(結局、凱旋門には時間的に行けませんでした)。

この日は天気も悪くなく、最寄り駅からエッフェル塔をめざして歩くのはいかにも観光地という感じでとても楽しい。この頃には、強引な土産物売りの人も軽く流せる余裕ができていたし。

エッフェル塔はそれぞれの四本の足元からエレベーターで行くところ、階段で行くところと入り口が分かれている。一階二階、最上階の三階とそれぞれに展望台がある。展望台に上るチケットを買う列にウキウキ気分で並んでいると、電光掲示板になにやら赤文字が出現。

なんだか嫌な予感がするなか、チケットを買おうとすると「ノン、最上階には行けません。」と冷たい返事。なんと、定員いっぱいで一番てっぺんの展望台に行けないのだと言う。受付の女性が掲示を直し始めた。

目の前で門が閉まってしまったような悲しいタイミング。ハイここまでよ、というヤツ。しょうがないので二階までのチケットを買って、エレベーターで上に上がる。模型のように美しいパリの街並みは思った以上に広々と続いていた。

二階まででも街は綺麗に見渡せたけれど、さらに倍の高さはある最上階にぜひ行きたかった。結局は夜もう一度来て、最上階の夜景を見ようということに。でもこのあきらめの悪さが災いした。

夕飯のモロッコ料理のクスクスをおいしく食べてから、夜のエッフェル塔に向かう。夜のエッフェル塔はライトアップされて、その繊細なワイヤー的造形が本当に綺麗。線的建築物が好きな人にはたまらないと思う。

そして、毎時10分間だけチカチカとフラッシュのようにライトが点滅するのも見ものだ。駅につくとフラッシュが始まっていて、巨大なクリスマスツリーのような美しさだ。うっとりとしながら、何枚もの写真やムービーを撮る。

チケット売り場に着くと、昼間見た赤文字がまた電光掲示板についている。ガーン、またてっぺんは無理なのか? 理由を聞くと「最上階へのエレベーターは夜10時30分までで終了です」。そういえば、終了時刻はチェックしていたけれど、最上階へ上る時間の締め切りが早いのは当然と言えば当然。

あ! さっきのチカチカフラッシュをうっとり見てて着くのが遅くなったんだ!しかも、その前にクスクスをゆっくり食べちゃったし。

結局、夜も最上階へは上れず二階までの、なんとも消化不良のエッフェル塔見物になってしまった。そもそもだんなさんは、エッフェル塔は珍しくもないので二階でも十分らしいし、私も来るまでそんなに最上階にこだわるとは思ってもみなかった。

来てみてやっと、リアルに自分の見たいものが見えて来るものなのか。さすがに後は時間がもったいないので、あきらめて他の予定をこなすことにした。

その後は、エッフェル塔の置物を見るだけで悔しい気分になるなど、自分の詰めの甘さを反省する。普通に行けば、誰でも上れる人がほとんどなのがまた悔しい。険しい山のように二回も行ってエッフェル塔に上れないとは。今回は航空券やホテルの手配を自分たちでしたので、細かなチェックが足りなかったかも。

この失敗のおかげで、またパリに必ず行ってエッフェル塔のてっぺんへ上りたいという目標ができた(でも私が行く時に限って工事中とか、どうしても阻まれる何かがあったりしそう)。

旅行の最後の免税店では、エッフェル塔型の瓶入りのチョコレートを買ったりして、残念でたまらぬ気持ちもすっかり取れていた(家に帰ってみたら、買ったはずのフォアグラの缶詰が入ってなくてまた凹むのだが)。

パリ旅行の良かったところを書く前に、細かなアクシデントを書いてしまったけれど、「家に帰るまでが旅」と思う出来事がいくつも起こった今回の旅行。これから数回に分けて細かく書いていきます。

・わたしのエッフェル塔
< http://www.dgcr.com/kiji/20080401/pari0 >
< http://www.dgcr.com/kiji/20080401/pari1 >
< http://www.dgcr.com/kiji/20080401/pari2 >
・エッフェルの動画のジフアニメ版
< http://www.eimu.com/dgcol/effel >

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
モロッコ料理はパリでとても人気。細かいパスタとも言えるクスクスは、ご飯を食べているような懐かしさで胃にも優しかった。

装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/
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やさしいデザイン―誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
武田 瑛夢
エムディエヌコーポレーション 2007-09

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by G-Tools , 2008/04/01