パリ旅行では豪華な建築や装飾品を見るのも楽しみだったけれど、最後に行ったノートルダム寺院のあるシテ島では、また違った目的の装飾をみつけることができた。寺院のステンドグラスだ。
大学時代にステンドグラスの工房でアルバイトをしていたので、ステンドグラスは好きだったけれど、実際に教会で見ることは少なかった。本格的な寺院の壁面を内側から見られるのはなかなかない機会なので、なるべく天気の良い昼間の時間を狙っていたのだ。シテ島には、ステンドグラスで有名なセントシャペルがある。
大学時代にステンドグラスの工房でアルバイトをしていたので、ステンドグラスは好きだったけれど、実際に教会で見ることは少なかった。本格的な寺院の壁面を内側から見られるのはなかなかない機会なので、なるべく天気の良い昼間の時間を狙っていたのだ。シテ島には、ステンドグラスで有名なセントシャペルがある。
・セントシャペルのステンドグラス
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部分(640×480)
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セントシャペルの中に入ると、壁面の全面に施されたステンドグラスの細かな光が美しい。ひとつひとつに意味のあるシーンが描かれている。
窓用のステンドグラスの難しさの一番のところはやはり耐久性で、外からの雨風に耐えることはもちろん、下部のガラスは全体の重みにも耐えなければならない。雨どい形状の金属のフレームは、鉛の混合率が高く柔らかい。だからこそガラスの曲線にも沿わせることができるのだけれど、長年垂直に立てておくと重みに耐えられずゆがんできてしまうことがある。
バイト時代は、縦の重力を考えずに横のラインばかりのデザインにしてしまうと社長から修正された。縦の重みを横に分散させて、ラインをつなげていくのだ。
きっと古い寺院のステンドグラスも、その時代で最新最善の努力で組み立てられているのだろう。一枚一枚のガラスのかたちはシンプルで、遠くから離れて見た時の全体感を重視して作られている。赤や青のガラスは外からの自然光をキラキラと取り込み、まるで色の洪水のように仰ぎ見る人を包む。
バイト時代には、できたばかりの工房だったので、私たちは自発的に作品を作ることが許された。高いガラスを使って、実験的な作品をどんどん作ることができたのだ。今思うと貴重な経験だ。窓用ステンドグラスも作ったけれど、平面の作品の難しさと重量によるリスクに、あまりトライしたがる人は少なかった。
テーブルランプのシェード(傘)用のステンドグラスの方が、繊細で複雑な柄をデザインすることができる。私はこちらの方が好きだったけれど、一枚のガラスピースの形やラインに制限があるし、五画面の連続柄なら美しくつながるように、有機的に柄の終わりの形を考える必要があるので難しい。
話をパリに戻して、セントシャペルでは大きな薔薇窓と呼ばれる丸い窓がある。中心部には最もクライマックスのシーンが描かれるようだ。
・セントシャペルの薔薇窓
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ノートルダム寺院のステンドグラスも素晴らしかった。強度をもたせるための太い枠と細い枠のバランスが素晴らしい。薔薇窓はセントシャペルのものよりも巨大で圧倒される。光の感じは実際に目で見た印象通りには写真に写らないのがもったいない。
・ノートルダム寺院の薔薇窓
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修復が行われているのだろうが、これだけ長い間巨大なステンドグラスが残っているとは驚きだった。湿度の高い日本とは気候的にも違うし、地震などの条件もあるかもしれない。西洋は石とガラスと金属の文化だと思う。日本は石と木と紙の文化だろうか。
ノートルダム寺院では、塔のてっぺん目指して歩いて上ることにした。塔へは外部の階段入り口に並び直さなければならない。外にのびた長い行列を待つ間に、サンドイッチを買って食べた。通りでは「ノートルダムのせむし男」風のマスクをかぶった人が、観光客の背中を後ろから突然たたき驚かせるパフォーマンスをしていた。
実は、行列をチェックするときに私もひっかかりギョッとしたところを皆に笑われたので、自分が並んでいる時は逆に驚く人たちを楽しむことにした。おかげで時間が経つのも苦にならなかった。後から思うとこの時が一番お気楽にノートルダムを楽しんでいたのかも。
・ノートルダム寺院(中心付近に薔薇窓がある)
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ノートルダム寺院の塔の階段を上るのは実はとっても大変。そのエピソードを書いていたら、一回分の長さになってしまったので次回へ回します。
【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
毎年時期を逸して買えずにいたレインコートをとうとう購入。でも買うとなかなか着る機会がないもので、一回も着れずにいる。
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