装飾山イバラ道[24]ハイビジョンでゴジラ
── 武田瑛夢 ──

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ケーブルテレビのチャンネルの中でも、日本映画ばかりを放映しているのがその名も「日本映画専門チャンネル」。ここで10月から3か月に渡ってゴジラの全28作品を放送している。

チャンネル数が多いのがウリでもあるケーブルテレビでは、いつどこでおもしろい作品をやっているのか、発掘するのが大変。番組表の冊子もあるけれど、さほどマメでもないのでテレビ画面の番組表を横にスクロールして、目につくものだけ見る。

いつものように番組表をなにげなく見ていたら「昭和ゴジラシリーズ15作品予告篇集」というのをやっているのをみつけた。昭和の15作品分の公開当時の劇場予告編をまとめたもので、全部で45分くらいだし気軽に見てみた。東宝のキラキラ輝く文字で始まるあのゴジラ。大きな手書きの「公開迫る!」などの白い文字を重ねた、昔懐かしい雰囲気だ。



白黒作品は見たことがなかったけれど、見覚えのあるはずのカラーのモスラも、記憶にあるモスラとはなにか違う画面の雰囲気。なんでだろうと思って気がついたのは、これはハイビジョンだということ。子供の頃の小さいテレビの中のぼんやりしたモスラとは違う、鮮明でプリプリとした質感のモスラがくっきりと映っている。だから見たこともない感覚の映像だったのだ。

劇場版の予告編自体が貴重なものだし、それをハイビジョンで15作品分連続で見ると、時代の流れや作風の変化がわかってとても興奮した。28作品全部の本編を見るほどの熱烈なファンでもないし、時間もないけれど15作品の予告編集だけでもたっぷり楽しめた。

・日本映画専門チャンネル ゴジラ完全放送
< http://www.nihon-eiga.com/godzilla/index.html
>

・ゴジラブログ
< http://hd-godzilla.cocolog-nifty.com/
>

作品数が多くて全部は見られないけれど、昔の映画をハイビジョンで見られるというのはとても価値があると思った。記憶の奥底にあったようなおぼろげなものが、一気にピントが合ってしまうのだから。撮影時のクオリティによっては精細さに限界があるけれど、見直すべきものがもっとあるに違いない。上記のサイトの「ハイビジョンプロジェクト」のコーナーを見ても、ハイビジョン化の苦労がわかる。オリジナルフィルムが劣化する前に、こうした処置をしておく価値は大きい。

ゴジラ <昭和29年度作品>本編作品は一番最初の1954年版「ゴジラ」を初めて見た。美大時代の友人から「とても怖い」と聞いていたけれど、白黒の色からくる心理的な暗いイメージもあって重々しい。黒々としたゴジラの吐く炎が白い。中盤からゴジラが町を攻撃し、人々が逃げるシーンが延々と続く。打つ手のない人間たちの姿が悲しい。一方的にやられるだけだし、ボロボロの町の中で母子が身を寄せ合うところなどは、何もそこまで悲しくしなくてもと思ってしまう。

しかし、少し長すぎるようなこの殺戮のシーンが、後でゴジラを攻撃する理由を見る側にしっかりと感じてもらうためだとわかる。生き物を攻撃するからには、よほどの理由が必要という日本人らしさが出ているのかもしれない。

アルマゲドンゴジラを倒す武器を使うラストシーンには、まるで「アルマゲドン」のようなドラマが用意されている。エアロスミスのあのテーマ曲が頭をめぐる。宝田明が昔の潜水服を着ていて、それが宇宙服と似ているからなおさらアルマゲドンとかぶるのかも。その他の初期のゴジラ作品とは一線を画す名ラストシーン。ゴジラシリーズをいろいろ見ても、この初代「ゴジラ」が格調高さもあるし、シンプルで一番好きだ。

ゴジラに出てくる人物はヒーロー、ヒロイン、博士などの他にその作品に応じて変わる数人の助演陣。いつも関心するのは、女優たちの美しさだ。アイドル風のヒロインに謎のクールな美女。今でも通用するようなメイクやおしゃれにびっくり。さすが東宝。

異国の皇女や金星人とか、かなり突飛な設定であっても日本人が演じていて十分に綺麗。エキゾチックという表現の範疇に入って見える(笑)。日本女性は黒髪のままでこんなに綺麗だったのだ。

ゴジラにはモスラ、ラドン、キングギドラなどの怪獣も出てくる。私はザ・ピーナツのかわいさもあってか、モスラが一番好きだった。今回の放送でも多くのモスラ作品がある。

モスラはチョココルネのパンに似ている。子供の頃はチョココルネを買ってもらうと、いつもモスラーと言いながらテーブルの上を這わせていた。今回ハイビジョンでモスラを見ると、やっぱりチョココルネに似ているのは確かだった。パンの焼きで膨らんだような丸みだもの。モスラパンという商品は簡単にできそうだ(おいしそうには見えないけれど)。

そして、モスラはかなり繊細に縦にうねって歩いていたのを発見した。しっかりと地面を捉えながら、前進するしくみは思ったよりもリアル。人が入っているゴジラと戦うサイズで作るのだから大変だったろうな。それにしても、戦うには不利なボディに見える。実際は、モスラが口から吐く糸の攻撃力のすごさに驚かされることが多いのだけれど。

クローバーフィールド/HAKAISHA スペシャル・コレクターズ・エディション大人になってからも、私は何度か映画館でゴジラやモスラの映画を見た。近所に前売り券を売っている所があったし、日本の誇る特撮映画だし。ハリウッド版も見たけれど、日本版のゴジラのデザインのままでなめらかに動くものが見たかった。巨大生物の破壊力を見せつけた「クローバーフィールド」の体感パニック映画のような世界を見てしまった今でも、あのゴジラの声と姿の魅力は別格なものに感じる。

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今の技術ならきっとものすごくかっこいいゴジラ映画ができるはずだけれど、怖さの基準が変わってきた今では、昔と同じテーマでは作れない。ゴジラに関しては、日米が同時に満足する姿というのはそもそもないのかもしれない。その大きさ、人間の敵か味方か、出現の理由、解決方法のどれを考えても、日本のファンの中でも意見は一致しないだろう。録画しておいた分のゴジラを見て、私の理想のゴジラを考えてみたい。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
モンステラの水やりに便利なインジケーターを買う。鉢の中の水分量を色の表示で教えてくれる便利なもの。本当は土の色や植物の顔色でわかるようになればいいんだけど。

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やさしいデザイン―誰でもかんたん、レイアウト・配色・文字組
武田 瑛夢
エムディエヌコーポレーション 2007-09

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by G-Tools , 2008/11/11