私は普段あまり音楽番組を見ていないし、あらゆる娯楽の中でも音楽には疎いと思う。でも。そんな私がすっかりハマってしまったのが「アメリカン・アイドル」。アメリカのFOXテレビでやっているオーディション番組だ。日本だとFoxlifeというケーブルテレビのチャンネルで、過去のシーズンの再放送をしていて、シーズン6と7を見た。
・FOXライフ
< http://tv.foxjapan.com/life/
>
イギリスの「ポップアイドル」というオーデション番組のスタイルを元にしていて、全米規模で展開していくのが「アメリカン・アイドル」。全米で約10万人が参加するというオーディションの様子を見せるこの番組は、視聴率もすごいオバケ番組だ。長期間にわたってアイドル候補者たちがしのぎを削って勝ち抜いていき、最後の一人の優勝者を決めるリアリティ番組なのだ。
・FOXライフ
< http://tv.foxjapan.com/life/
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イギリスの「ポップアイドル」というオーデション番組のスタイルを元にしていて、全米規模で展開していくのが「アメリカン・アイドル」。全米で約10万人が参加するというオーディションの様子を見せるこの番組は、視聴率もすごいオバケ番組だ。長期間にわたってアイドル候補者たちがしのぎを削って勝ち抜いていき、最後の一人の優勝者を決めるリアリティ番組なのだ。
・アメリカン・アイドル公式サイト
< http://www.americanidol.com/
>
日本でも昔「スター誕生!」というのがあったよね。私はピンクレディー世代なので、デビューさせたい人にレコード会社の担当者が札を上げるあのシーンが目に焼き付いている。私が一番たくさんのレコードを持っていた歌手は、未だにピンクレディーだ。
ケーブルテレビにしてから「アメリカン・アイドル」はチラリと見てはいたが、一度試しに地方予選から見始めたら止まらなくなってしまった。手に汗をにぎり、時には泣きながら感情移入して見てしまう。「アメリカン・アイドル」を見て自分が泣くとはまさか思わなかった。挑戦者が真剣に精一杯歌う姿に感動するし、歌そのものの力に自然と涙が出てしまうのだ。
もちろん自分のお気に入りの候補者がどうなったのか気になるのが、見始めたら止まらない理由でもある。候補者たちの歌のレベルの高さにも驚く。日本の感覚で言うと「アイドル」と言えば若くてまだ完成されていない魅力がある人というイメージだけれど、「アメリカン・アイドル」の候補者は年齢も幅があるし、体格や容姿などのかなりの個性を認められている。みんなそれぞれが全く似ていないのだ。
この番組は三人の審査員も名物で、毒舌と言ってもいい辛口審査で有名なサイモン・コーウェル、優しいコメントのポーラ・アブドゥル、テンポと音程に厳しいランディ・ジャクソンがいる。地方予選から時間をかけてこの三人が審査するので、ダイヤの原石を見落とすこともないはず。サイモンのキツい言葉に喧嘩になりそうな空気になったりするけれど、彼なくしてこの番組はないし、愛のある言葉だということを皆わかっている。
地方予選では候補者は胸にゼッケンを付けて、三人の審査員の前に立ってアカペラで歌う。伴奏がなくてもうまい人はもちろんうまい。中には奇抜な衣装でテレビに映るために来たような(?)参加者や、参加の目的がわからない人たちも含んだ、バリエーションに富んだオーディションとなる。どんな人にも公平にチャンスが与えられているのだ。いろんな意味で、歌手のオーディションという枠を越えていてとてもおもしろい。
今回このコラムを書くために「アメリカン・アイドル」のDVDを調べたら、BESTとWORSTのDVDBOXがあった。正統派のアイドルのベストと、奇抜な敗者たちのワーストなパフォーマンスをまとめたものに分かれているらしい。ワーストとされている人たちも最終回では特別な賞をもらったりしているし、それらも含めて全体をショーとして盛り上げているのも魅力だ。
・アメリカン・アイドル BEST DVD-BOX
< http://www.amazon.co.jp/dp/B000IY0EV8/
>
・アメリカン・アイドル WORST DVD-BOX
< http://www.amazon.co.jp/dp/B000IY0EVI/
>
ハリウッド予選からは、時間をかけてじっくりと候補者に歌う機会を与えてくれる。しかし、チャンスを得ればその後に残酷なジャッジがあるのもしょうがなく、賛美される人や否定される人さまざまだ。この段階ではまだ人数が多いので、ステージ上に前列と後列に分けられた後に、どちらかだけが勝ち進めることが発表される。歓喜と涙の瞬間だ。
ここでは地方予選と違いステージ栄えするか、声が通るか、いくつものレパートリー曲を歌いこなせるかなど、歌手として必要な様々な要素を試される。
ハリウッド予選を勝ち進んで次に待っているのは、観客の入ったステージでバックバンド、コーラスを率いて歌える「セミ・ファイナル」。「アメリカン・アイドル」特設のセットで全体がコーディネイトされているステージは、ライトアップも派手だし、ここで歌うのが候補者たちの夢だ。
「セミ・ファイナル」がいままでの戦いと最も違う点は、ここからの勝ち負けは全米の投票で決まるということ。歌の善し悪しももちろんだけれど、ファンがどれだけつくかも大きい。審査員の批評コメントがどれだけ投票に影響を与えているかはわからないけれど、視聴者の意志が番組を変えていく先の読めない感じがおもしろい。
オーディション番組としても、舞台をどんどん大きくしていくことで変化もつくし見応えが増してくる。「ファイナル」に進む男女6人づつ、合わせて12人は歌の実力もキャラクターも優れた人たちばかり。歌唱のスタイルもロックからカントリー、R&Bといろいろ。自分らしさを出しつつ、毎週のテーマに合った自分なりの選曲で歌っていく。審査員がいつも言うのは選曲の大切さ。自分を生かせる曲を選んで勝ち抜かなければ、次にこのステージで歌う機会はもうない。
毎週候補者の誰か一人は脱落していってしまうし、今日で番組を去ることが発表された候補者はその場で最後の歌を歌わなければならない。ラストソングを歌う背景には、地方予選からの軌跡をたどる映像が流れていて、泣かせどころになっている。
この番組は歌手のオーディション番組なのに、あらゆるテレビ要素が詰まっていると思う。大御所の音楽家によるレッスンで、候補者の成長が見られる教育番組的要素が代表的なもの。ハリウッドの映画スターが協力する「24時間テレビ」的なチャリティ要素もある。
番組ゆかりの歌手や、売れてるアーティストを集めて次々と歌い躍る最終回。なぜか、たくさんのアフリカの子供たちが躍りながら歌ったりする(最高にかわいい)。この最終回を観終わった後の感想は、まるで「オリンピック開会式」や「紅白歌合戦」のような、「お茶の間に世界を見せつける」感じがあった。国民的番組というのはこういうものか。
もちろん、最終回の一番の山場は、たったひとりのアメリカン・アイドル優勝者の発表だ。本戦で戦ってきたTOP12が見守るなかで発表される。優勝者はその後の華やかな音楽活動が約束されているだろう。もちろんTOP12の中からデビューする人は優勝者だけではないし、知名度も上がるのでその後の人生は大きく変わる。
優勝者が最後に歌を歌って、感動的に番組は終わる。いつも特等席で番組を見守る審査員たちの表情が、一番幸せそうなのもこの最終回。紅白でのトリを観ているような感じなのかもしれない。氷川きよしがトリで故郷に錦を飾ったように、夢をかなえた瞬間を見せてもらった気分。
今月から始まる新しいシーズン8からは、審査員も増えるらしい。日本でもこんな大掛かりなオーディション番組があったら見てしまうかも。
【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
ドラマの「24」でもワンシーズン見るのはとても時間を使うけれど、「アメリカン・アイドル」も相当な時間が必要。その分長く楽しめると思えばいいかな。
装飾アートの総本山WEBサイト“デコラティブマウンテン”
< http://www.eimu.com/
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