装飾山イバラ道[47]スポーツ中継ア・ラ・モード
── 武田瑛夢 ──

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情報デザイン論の講義では、後半に向けて様々な視覚技術を取り扱って、多くのサンプル映像を見せたいと思っているところ。特に最近のスポーツ中継に見られるCGのライン合成とか、異なる情報を同時に重ねる技術に興味を持つ人も多い。

私もはじめて競泳の試合映像で、世界新記録のライン表示を見た時の驚きは鮮明に覚えている。「線が動いてる?!」調べてみればまだここ10年ほどの技術らしい。デジタルの映像技術は毎年何かがレベルアップしているし、見ている私たちの目はすぐそれに慣れてしまって普通になっていく。



●よく見る映像技術と言えば競泳

競泳では、選手が飛び込み台の位置についていると、国名と選手の名前が水面に表示される。表示以上に気が使われているのがマスクの技術で、見えるべきものを隠さないために微妙な調整がされている。泳いでいる選手の体を決して隠さないように、プールに飛び込む瞬間にサッと国旗等の表示が引っ込むのだ。なにがどこまで自動なのだろう。

背泳の時は、選手はプールの中からスタートするので国旗と重なるわけだけれど、しっかりと選手の体は表示されるようにできている。プールの水の青色と選手の肌の色、最近は全身水着なのでどんな色でマスク指定するのか謎だ。

さて、スポーツ中継は元々好きな方だけれど、得意でないジャンルの中継はほとんど見ないので、ネタに尽きてしまうのも確かだ。今回は、出席カードの裏に「最近すごいと思った映像技術」について学生に書いてもらうことにした。

これは大正解で、私がほとんど見ないF1レースのメーター表示についてや、サッカーのポジション表示のことを調べることができた。車に乗らないので、メーターがリアルタイムに表示されると何がおもしろいのかわからないけれど、見たかった人には興味深いに違いない。

●サンプル映像探し

高度な映像技術についてWEBで調べても、カメラの設置方法のことなどの技術のしくみについての記事が多くて、具体的な試合映像となるとなかなか正規のものがない。チームや選手の画像に関する権利のためかもしれない。先週末はフィギュアスケートのグランプリファイナルや、石川遼君のゴルフ、サッカーのワールドカップの出場選手予想などで、思いのほかスポーツのニュースでにぎわっていた。

サンプル映像がないならテレビ画面を自分で撮影しようと、いくつかのスポーツ中継を録画しておいて、ここぞという場面で一時停止させてiPhoneのカメラで撮影という、最後はまったくアナログな感じの方法を試した。思ったよりも画像は鮮明で、それをパソコンに取り込んでプロジェクターに表示しても十分に見られた。

長いスポーツ中継の録画の中から、思ったようなシーンを選び出すのも大変な話だけれど、今までの作業でも「レイアウト別にWEBを探す」とか、相当量見なければできないことも多かったので、まぁしょうがないかとあきらめる。今後は、テレビを見ていて斬新な画面処理に気づいたらこまめに録画しておくしかないな。

●テニスのビデオ判定システム

テニスの試合では、一風変わった判定システムが採用されている。コートの周りに設置された10台のカメラで撮影したボールの軌道情報を使って、ボールの接地シーンをCG処理で瞬時に表示することができるというもの。

これは「ホーク・アイ(タカの目)」というシステムで、選手が1セットにつき3回までは、このビデオ判定を要求して再確認してもらうことができる。実際の試合を見ていると、画面に大写しになるボールのCG映像を全員が息を飲んで見つめている。この方法はショーとしても一役買っているけれど、審判の目だけでなく機械の目を使うことには賛否両論のようだ。

・Hawkeyeinnovations
< http://www.hawkeyeinnovations.co.uk/
>

なかなかみつからなかったのが、以前に見たゴルフの試合の映像で、コースの立体感の起伏をCGの等高線と重ねて表示していた技術。芝生のグリーン映像だけだとどういった傾斜かわからないのを、等高線がサーッと重なるとすごく凸凹がわかりやすかった。この技術を使った画面を、次のどのゴルフの試合で見られるのかは誰に聞いてもわからないので、気長に待つしかないらしい。

こういう映像は、まるで「ターミネーター」の視点でものを見ているような感じがする。「ターミネーター」が相手を見る時の、あのモノクロの画面に赤いラインが重なってコンピュータが分析した情報が同時に表示されるやつ。「戦闘能力0(ゼロ)」とかの。

今のテレビは、リアルに起こっている現実の映像に、伝えたい情報を勝手に重ねられて見させられる時代なのだ。

●スポーツ中継をどのように見るか

今のところこれらの処理は、過剰なほど使われているとは私は思えないけれど、逆に何の手も加えない「素映像」だけを中継するチャンネルができたりするかもしれない。解説の音声も「切」が選択できたりして、スタジアムの生音声だけで楽しむ。大画面テレビがある今は、自分がスタジアムに試合を見に行っているようなリアルさがありそう。

近い未来には、自分が選んだカメラの映像を見ることができるようになるらしいし、自分が選手たちの中に入って試合を見ているような映像も可能だという。こういった多視点映像、自由視点映像と呼ばれる技術が進むと、今まで見られなかったようなシーンが見られるという。選手もいつどこから見られるかわからないわけだし、ライバルやライバルチームもさらに詳しいデータを分析可能になりそうだ。

すべては高速で膨大なデータをやりとりできるようになったからだけれど、より「正確」になっているかというとよくわからない。コーヒーにミルクも砂糖も入れる人もいれば、ブラックでないと楽しめない人もいる。家族がそれぞれ自分用にカスタマイズされた情報付き映像でテレビを見るのが、同じ番組を見たことになるのだろうか。見る選択肢を増やすほど、テレビを作る側の演出が意味をなくす気もするテレビの未来だ。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト「デコラティブマウンテン」
< http://www.eimu.com/
>

マリオ&ソニック AT バンクーバーオリンピック早いもので今年最後のコラムとなりました。風邪対策はマヌカハニーで万全です。この冬もやっぱりWiiのバンクーバーオリンピックのゲームで遊ぶ予定です。来年もよろしくお願いします。
・マリオ&ソニック AT バンクーバーオリンピック
< http://www.nintendo.co.jp/mario_and_sonic2010/index.html
>

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by G-Tools , 2009/12/15