装飾山イバラ道[49]「アメリカン・ダンスアイドル」を見る
── 武田瑛夢 ──

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アメリカン・アイドル BEST DVD-BOX大好きなアメリカのテレビ番組「アメリカン・アイドル」の、ダンス版の番組があるのは知っていたけれど、また見始めたらキリがないので自分から探してまでは見ていなかった。リアリティショーは、見始めたら絶対に後が気になるのだから。

シンガーの登竜門の「アメリカン・アイドル」の新シーズンは、アメリカではとっくにやっているのに、日本ではなかなか放映されない(新シーズンのシーズン9の放映は日本では2月から開始)。

So You Think You Can Danceつまらないなぁと思っていたら、同じFOXテレビで「アメリカン・ダンスアイドル シーズン4」をやっているのを偶然見てしまった。

・アメリカン・ダンスアイドル シーズン4
< http://tv.foxjapan.com/fox/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/832
>



私が見始めた頃はシーズン4のTOP20が決まった時期で、すでに中盤戦に入っていた。オーデション番組は地方予選から見るのが本筋だと思うけれど、このさいなので途中からでもと妥協して見た。アメリカでの正式番組名は"So YouThink You Can Dance"だけれど、日本ではわかりやすいようになのか「アメリカン・ダンスアイドル」というベタな名称になっている。

番組の進行は、地方予選からダンスのオーディションが始まり、その後の2次予選を勝ち抜くと、男女各10名のダンサーたちがTOP20と呼ばれて、ファンに囲まれた特設ステージでの審査に進むことができる。司会はキャット・ディーリーという金髪で長身の美しい女性で、毎回変わる彼女のファッションやメイクも楽しみ。とても堂々とした司会ぶりで毎回素敵だ。

●歌とダンスという違いのみ

見始めてわかるのは、「アメリカン・アイドル」と番組のスタイルや進行が全く一緒だということ。審査員の目の前で踊り、評価され、先に進めるかここで落ちるかが告げられていく。候補者には過酷な毎日だ。

ただダンスという特性上、男女のペアで演技が行われることが基本で、くじ引きで決まるペアの相性などの運も関係する。相手に合わせる能力は、どんなダンスでも絶対に必要のようだ。

そして、歌にロックやカントリーなどのジャンルがあるように、ダンスにも社交ダンスやヒップホップがあり、候補者はその全てのジャンルを踊りこなすことが要求される。自分の得意な専門分野だけを武器に戦えないのは、「アメリカン・アイドル」と全く同じなのだ。一つの専門性だけを追求するタイプでは、この番組では優勝まで生き残れない。

こういったこの番組の特徴のせいか、予選では途中で棄権する人もいたそうだけれど、後半戦になるとここまで残ってきた候補者はどのジャンルのダンスもオールマイティに踊れることがわかってくる。正式なダンスの訓練も受けていないストリート系ヒップホップダンサーが、くじ引きで当たった初めてのラテンダンスを見事に踊るのには驚いてしまう。

ひとつのジャンルのダンスを極めようとすると、他のダンスの基本も自然に身に付いてしまうものなのだろうか。きっと、ジャンプやターンや止めの動作の基本以上のものが、上位の候補者には備わっているので、飲み込みが早いのだろう。

●振り付け師の存在の大きさ

審査の進行は、ナイジェル・リスゴーとメアリー・マーフィの2人の固定審査員の他に、毎週変わる振り付け師の審査員が加わる。この番組では、振り付け師の存在がとても大きい。毎回のダンスは、各ペアに振り付け師がついて指導するからだ。歌の「アメリカン・アイドル」の場合は自分で選曲し、歌い方のアレンジを決める。「アメリカン・ダンスアイドル」では、選曲と振り付けは振り付け師が決める。ダンサーにはその意図を組む力と実際の踊りの技術、そして精神的な表現力が試されていると言える。

振り付け師は元ダンサーも多いはずだし、踊りで生きて来た人の活躍の場なのだ。映画で言えば監督、脚本、演出全てにあたるので、皆が振り付け師を尊敬している。この番組でエミー賞をとった振り付け師もいて、その指導の本気ぶりも伝わってくる。

そういえば私自身は、ダンスなんて高校の創作ダンスでスパッツを着て踊ったのが最後なので、全くのド素人。女子はけっこう中学から体育に創作ダンスがあって、好き嫌いに関わらずグループを組まされて踊る試練があったはず。あれもあれなりに過酷だった。私はそんなダンスド素人なので番組を見始めた当初は、審査員の評価の意味が全然わからなかった。

褒められた時はわかるけれど、私がスゴイ! と思っているダンスを審査員3人が酷評することも多かったのだ。これは私が「わかってない」ということだろうし、なんとかその目を養いたいと思った。わかってないと本当の意味で楽しめないから。

●次々に去って行く候補者

TOP20以降は毎週ペアのダンス審査があり、男女1名づつが落ちていく。ペアのどちらか片方が落ちてしまうと、その候補者は新しい人とペアを組むことになる。落選者はいきなり決まるのではなく、まず男女各3人の下位の候補者が「Bottom 3」となりソロのダンスを披露する。

このソロのダンスの善し悪しで誰が落ちるかが決まるので、皆が渾身のソロダンスを踊る。生き延びるチャンスもしっかりあるということ。ここも見せ場のひとつになっている。この時点での審査は審査員に委ねられているので、評価のコメントを聞くとなんとなく結果の察しがついてしまう。

審査員のナイジェルが「この審査の厳しい仕組みは、君たちの今後のダンス生活でも続いていく宿命」のようなことを言っていた。オーディションを受け続け、評価を受け続け、踊り続けるのがダンサーの日常なのだ。

審査が進んで男女各5人のTOP10が決定すると、いよいよ全米のファンが電話で投票するオーディション形式となる。アメリカの老若男女が相当数見ている番組なので、ファンをどれだけ獲得しているかも大きな鍵。

TOP10まで絞られてくると、審査員のダンスの評価の意味がだいぶわかるようになってきた。技術だけうまくても、心がこもっていないダンスは惹き付けられない。ペアの二人の感情の動きが伝わるダンスは本当にホレボレするし、感動する。

●いよいよ最終回

1月後半になって、いよいよTOP4からただ一人の優勝者を決める、最終回の放映があった。最終回は、消えていったTOP20がもう一度集まり、今までに評価の高かったダンスを披露する。この録画は私にとって絶対に消せない保存版となった。特に好きだったダンスは、チェルシーとマークのダンスとケイティとウィルのダンス。

チェルシーとマークのダンスは、行ってしまう彼を必死で止めようとする女性の感情表現が素晴らしい。この二人は、このパフォーマンスの後も素晴らしいダンスを披露し続けて上位に残った。

・So You Think You Can Dance [Season4] Leona Lewis - Bleeding Love
(Chelsie & Mark)
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ケイティとウィルは「アメリカン・アイドル」で準優勝した、デヴィッド・アーチュレッタの歌う「Imagine」の曲に合わせているので二重に好きだ。今でもこのImagineを聞くと涙ぐんでしまう。

・So You Think You Can Dance [Season4] David Archuleta - Imagine
(Katee & William)
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TOP4が決まると、その後の評価は一人一人決まっていく。今回は女性のダンサーが先に一人づつ落ちて、最後に男性二人がステージ上に呼ばれた。優勝者には25万ドルの賞金と映画への出演が決まっているという。おなじみの多すぎる紙吹雪の演出もぴったりで感動的だった。毎シーズン決まった流れで進行しすぎて飽きないかと思うけれど、お決まりだからこそ個々の反応の違いが見えてくるのかもしれない。

歌版もダンス版も共通の番組構成で成立しちゃうほど、よくできた仕組みの番組なので、外国でも同じ方式で番組が成立する。実際、オーストラリア版のダンスアイドルもあるんだそう。きっと、ダンス以外の何かのオーディションでも番組はできると思う。例えば日本だったら、お笑いオーディションのM1が有名だけれど、TOP10以降は完全に視聴者投票で決める「ジャパニーズ・マンザイアイドル」って名前の番組を見てみたいと思った。

【武田瑛夢/たけだえいむ】 eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
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