装飾山イバラ道[80]美しすぎて捨てられない箱たち
── 武田瑛夢 ──

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今回はデコラティブなデザインを使った、ボディケアアイテムを紹介。「MOR/モア」というトータルデザインが素晴らしいブランドで、初めてWEBのショップから購入してみたのだ。

クラシカルな花柄と優美な曲線のスクリプト体の組み合わせは、ここ数年日本でもよく見かける。若い女性誌を見ても花柄+スクリプト体のデザインがずいぶん長くヒットしているし、ファッションやインテリア含めて、すべてのジャンルに定着していると言ってもいいと思う。

●価値を伝える手段としての外装デザイン

そういうデザインに若干飽きてしまっている時に、洋服屋さんで「MOR/モア」の商品をみつけた。いくつか並んだボディバター(クリーム)の外箱の美しさに心惹かれた。花柄で私の大好きなクルクルした筆記体のイメージもある。綺麗で品があって、リボンのがかわいさも出している。現物のクリームの香りも、フルーツやフローラルを組み合わせてバリエーションが豊富にある。

パッケージを見ながら香りを何種類も試して、買わないで帰ったのにその商品が忘れられない存在になった。きっと買った人には「捨てられない箱」としてドレッサーを圧迫するのだろう。

・MOR モア
< http://www.morcosmetics.com/
>

・GPP Online Shop (日本語)
< http://www.gpp-shop.com/gppec.cgi?_scr=Brand&gc=B2010000
>

WEBはアメリカが拠点になっているようで、サイト内を見渡しても十分ラインナップを楽しむことはできる。ただし、WEBでは香りが試せないのはどうにもならないことなので、テスターの置いてある実店舗を利用するしかないだろう。



「MOR/モア」は、オーストラリアのメルボルンのデザイナー二人のコラボレーションで生まれた。イギリスやアメリカの有名デパートでも取り扱われる、ボディケアの化粧品ブランドだ。二人のデザイナーは、インテリアショップをオープンさせてステーショナリーなどを扱う中で石けんを作ることになり、その世界に魅了されたのだと言う。

石けんの商品デザインがおもしろいことは、私もWEBデザインの本を書いていた時にも思ったことだった。石けんという商品そのものは、白くて四角くてトーフと間違うくらいのルックスだけれど、カラーやパッケージのデザインで打ち出すイメージはどうにでもなる。

香りや原料素材のイメージを広げてパッケージにまとわせれば、中にあるものが価値ある塊になるのだ。価値を伝える手段としての外装。妥協のない外装の素材選びが中身の確かさを感じさせる。優美なモノ作りの中に、男前な心意気を感じてならない。

●MORを日本で買うには

日本だとセレクトショップに置いてあることがあり、私も「AMERICAN RAG CIE/アメリカンラグシー」でみつけた。上記のGPP Online Shopだと説明が日本語なので買いやすいと思う。商品は高級なイメージで、日本だとボディバターがひとつ4,200円位だ。

アメリカのMOR モア< http://www.morcosmetics.com/
>で買うとボディバターがひとつ25ドル(US)なので、円高の今だとおよそ半額で買えそうということで、やる気を出してサイトで商品をさがした。

しかし、ガッカリだったのは国際郵便の送料のページで、日本の場合は購入金額100ドル以内で送料40ドルとのこと! これは私が使っている海外通販のサイトの中でもとびきり高い。購入金額が100ドルを超えると50ドルの送料になるらしい。これでは海外から買うメリットが薄い......。

ところが、MORのサイトでメールアドレスを登録しておいたら、4周年記念のディスカウントのお知らせが来た。登録して一年位は、セールの案内があっても海外発送の人は対象外だったりしてあきらめていた。

ところが、今回は期間限定(3日間)だけれど、海外でも30%OFFということで、いくらか送料分を補えるので注文をしてみたのだ(現在セールは終了しています)。夏になるとボディクリームって感じでもないけれど、なかなかないチャンスだ。

・購入したMOR ボディバター、ソープ、リップバーム、トートバッグ
< http://www.eimu.com/col/images/mor1 >

到着したエンポリアムのシリーズの商品を、黒いトートバッグの上に並べてiPhoneで撮影してみた。ボディバターは四角い紙箱に綺麗な花柄がプリントされた化粧用の紙が巻いてあり、リボンが結ばれている。正面には封ろう(シーリングワックス)風にMORのマークがつけられている。これはプラスチック製のようで、パッケージに合わせて、白と黒で作られたもの。凝った作りがうれしい。

右側のホワイトベースのボディバターがインディアンポメロで、グレープフルーツがベースになった香りで、同じ香りのソープも買った。アメリカンラグシーで試した香りだったので覚えていたのだ。左側のブラックのボディバターは、バニラの香りの新作で、金と黒のパッケージが大人っぽくて素敵。厚めのマットな紙を使ったパッケージは、ゴールド部分がかすかに立体感を感じるプレスがされている。質感の大切さを改めて感じる。箱から出すとシンプルな白いケースが現れた。

・インディアンポメロ ボディバター
< http://www.eimu.com/col/images/mor3 >

・カシスノアール リップバーム
< http://www.eimu.com/col/images/mor2 >

リップバームの容器は小さいけれど、楕円形に収められた筆記体のイメージの曲線が美しい。似たような雰囲気の化粧品パッケージは溢れているけれど、筆記体の文化を根底に持っていないとなかなかこうはいかないかもしれない。商品はどれもフルーティなのに深みのある香りで、つけた後にも変化を楽しむことができる奥行きのあるものだった。

●パケ買いを誘う日本の装飾的デザインルーツ

日本での装飾的なデザインと言えば、初期の資生堂のパッケージデザインのイメージも強いと思う。化粧品はもちろん、お菓子などのパッケージに今もその雰囲気を残している。

資生堂パーラーのWEBを見てみたら、西洋文化に素直に憧れた時代の懐かしい昭和の香りが満載だ(オープニングムービーが素敵です)。もちろん、ただのレトロに納まりすぎない新しいセンスのカラーリングやレイアウトで、おしゃれなイメージを出している。ゴチャゴチャしがちなのがこの手のデザインの中で、清潔感のあるレトロを成功させているのはすごい。

・資生堂パーラー
< http://parlour.shiseido.co.jp/index.html
>

・花椿ビスケット金缶
< http://store.shopping.yahoo.co.jp/shiseido-parlour/32512.html
>

たとえばこの花椿ビスケットの金缶は、日本における「美しすぎて捨てられない箱」コンテストの上位に間違いなく入りそうで、パケ買いしたくなる。まだ持ってないけれど、持ってたら何入れにしようかしら。入れ物好きの日本人にハマりそうな物はきっとまだまだあるので、コツコツみつけたいと思う。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>

連日の猛暑で外に出るには日傘が欠かせない。帽子で済ませることも多いけれど、体の大部分が日陰に入る日傘やっぱり涼しい。個人的には男性も日傘をどんどん使っていいと思う。