装飾山イバラ道[99]2012年──東京の空
── 武田瑛夢 ──

投稿:  著者:



●金環日食体験

金環日食は私も楽しみにしていた。以前の日食の時に買っておいた、安い日食グラスがひとつある。その時の日食は天気が曇りで、日食グラスでは真っ黒で何も見えず、その機能を怪しんでいたものだ。だから、今回の金環日食ではハンズでVixen(ビクセン)の日食グラスをひとつ追加して買っておいた。

当日の東京は、なんとか雲と晴れ間が交互に訪れる天気だったので、近所に住む母を呼んで一緒に見ることにした。だんなさんと私と母の三人で、二個の日食グラスを交換しながらの観察だ。さすがにVixenの日食グラスはきれいに白い太陽が見えた。うっすらかかる雲の繊細な濃淡まで見えて、ドラマチックで美しい。

あの怪しい安グラスも決して使えないことはなく、太陽の色がこちらは赤くはっきりと見えた。後でテレビを見ていたら、小学校で同じタイプのグラスを全員に配っていたので、彼らには赤い輪っかの共通の思い出ができたのだろう。

太陽が徐々に欠けていき、そろそろ金環になりそうだという時に雲の塊が太陽の近くに現れた。「雲来ないで来ないで」という祈りが通じて、環になった時にしっかり見えたので、本当にホッとした。

最初はあまり乗り気でなかった母も、金環日食が見られたのがとてもうれしい様子だ。マンションではかなりの人数の人がベランダや中庭に出て、空を見上げる「特別な日」となった。日本中が空を見上げた日なのだ。




●東京スカイツリーに上る

日食の次の日は東京スカイツリーのオープン日だったけれど、私はWEB申し込みでオープン3日目の木曜日の朝一番(8時〜)のチケットが当たっていた。初日と土日に人気が集中し、第一希望にする人が多かったようだ。私は初日は仕事で行けないし、平日の朝一番だったら人気薄かもしれないと思ったのだ。

WEBで自分の抽選結果を確認して、だんなさんが抽選申し込みした分の確認も急いでもらった。その結果、なんとだんなさんは次の週の木曜日の朝一番(8時〜)が当たっていたのだ。

どっちかがどこかにひっかかる作戦だったのに、朝ばっかり当たってちょっと困惑。チケットは二枚ずつだったので、二人のお母さんを呼ぶプランを考えたり、混雑の中で一人は若くないと上で困るかなとか、いろいろ悩んだ。

最初の週の木曜日は夫婦で出発、天気は晴れのち曇りだった。初日は雨で次の日が晴れ、テレビで見てもその天気の運不運の大きさにびくびくしていた。チケットが当たった人は皆、決定している日時をどうすることもできないので祈るしかない。

当たり前だけれど、だいたい下から展望デッキが見えていれば、上からも下が見える(笑)。ただ、「遠くが見えるか」これは快晴度合いで全然違うので晴れていてもいろいろだと感じた。

朝一番なので建物の外でチケット交換に並ぶ列は整然としているし、ほとんど混乱はなかった。しかし、建物の中に入ってチケットカウンターまで行く時に、テープで準備された蛇行ルートを歩かされたのには笑ってしまった。「何これ何これ」と、まだ人も少ないのに無駄な小走りの蛇行でぐるぐると進む。

こういうのは、最初はストレートの道にしておいて、ある程度人間がたまったら蛇行に切り替える方が自然だろう。スタッフがささっとテープを切り替えて、人をうまく誘導するディズニーランドの臨機応変な対応の素晴らしさを思う。

スタッフは空港みたいなデザインのカウンター周りにたっぷりといて、朝の挨拶をがんばっている。ユニフォームは柄ものでカジュアルな印象だ。まだ三日目なので、至る所で慣れてない感があったけれど、こちらも初めてなのとウキウキウッキー! なので大丈夫だ。

そういえば、人が集まる場所のわりにあまり怒っている人を見かけなかったように思う。ハイな気分というのは人を優しくさせるのかもしれない。

チケットを交換して、荷物チェックのカウンターを通ると四つの季節のデザインのエレベーターのどれかに乗ることになる。エレベーターは天井の一部が透明でワイヤーが見え、入り口上には現在位置を示すメートル表示のアニメーション画面がある。私たちは鳳凰のデザインの秋のエレベーターだった。エレベーターの中もデジカメや携帯電話で撮影している人が多い。

最初の展望デッキには、エレベーターに乗ってから1分もしないで到着してしまう驚きの速さだ。本当にもう着いたの? と皆の声が上がる。窓の外にはミニチュアみたいな東京の街が広がっていて素晴らしい爽快感を味わえる。

建物が小さく見えるのと視界が広いせいか、最初はあまり街の動きを感じない。よく見ると、車は動いているし歩いている人も小さい粒のように見える。確かに街は動いているのだ。車も電車も小さいと動きがゆっくりに感じる。以下はiPhoneで撮影した写真。

・展望デッキからの眺め(アサヒビール付近)
< http://www.eimu.com/col/images/sky2 >

私たちは朝8時〜8時30分の一番の入場組で、30分ごとに次の組が入って来るので、最初だけは最も人間が少ないことになる。今のうちに、そこから約100m上の展望回廊のチケットを買って上がることにした。ただしこの展望デッキには床が透明になっている「ガラス床」があるので、帰りには忘れずに寄ることにする。

エレベーターに乗って展望回廊に行くと、そこは面積は小さめのフロアになっている。てすりの向こうにガラス窓がある作りなので、てすりから身を乗り出すと斜めになったガラスにパンフレットを落としそうになって怖い。

ここは本当に高い場所なのだ。展望回廊でも最も高いソラカラポイント451.2mはぐるっと廻った先にあるので、それまで外を見ながら歩いていく。

・展望回廊
< http://www.eimu.com/col/images/sky1 >

景色は下の展望デッキと比べて100m程の違いなのに、視界が白っぽく感じる。遠方の湾や富士山の方は白くなって見えない。東京タワーや遠くの観覧車は見えるので、本当に晴れて澄み切っていたら、何もかも見える場所なんだろうな。

私たちが回廊から展望デッキへ降りて来た時には、展望回廊への待ち時間が40分になっていたのに驚いた。朝一番の入場は待ち時間が気になる人にはおすすめだと思う。それぞれ場所での滞在時間は自由なので、人がたまってきてしまうからだ。

結局、私たちは次の週も夫婦でスカイツリーに行った。母たちを連れていっても、朝早いのと天気によっては残念な想いをさせてしまうのが心配だったのだ。二回目のツリーは曇りがちな天気だったので、展望デッキだけにして展望回廊へは上らずにソラマチ回りに時間をとった。

・澄川喜一氏のモニュメント(中から見上げ)
< http://www.eimu.com/col/images/sky3 >

・翌週にガラス床から見下ろしたモニュメント(円の中)
< http://www.eimu.com/col/images/sky4 >

スカイツリー前の石柱のモニュメントは、撮影スポットとなって行列ができている。モニュメント内部からツリーを見上げて、ツリーの頭を出して撮影するのが流行っていて、私はミーハーなのでやってみた。二枚目は翌週の朝早くにガラス床からモニュメントを見下ろしたのでまだ人が少ない。

●まとめ──早め早めの移動が吉

今は日時指定の人だけが上れる状態なので、天気は運だ。「今日は天気がいいね、スカイツリーにでも行こうか」と思い立った時にチケットが買えるような状況になったら、ぜひまた行きたい。本来はそういうものだろうしね。季節は秋、空気の透明度の高いドピーカンの時がベストだと思う。

展望デッキからの景色の一番遠いところに自然の「富士山」が見えたら、自分のいる構造物のスカイツリーとの対比できっと素晴らしいと思うのだ。私たちは富士山は見られかったので、次の機会にはぜひ見てみたいと思う。いろんな時間帯の景色の状況を映した横長のモニターが置いてあるので、季節や時間、天気で変わる景色を見ていると何度でも来たくなる。

夜景もきれいだろうし、上から見る隅田川の花火もよさそうだ。ただし、花火のシミュレーション動画では、スカイツリーが高すぎて花火はかなり小さめに見えるようだったけれど。

ここはすぐ行列ができる所だが、できるだけ並ぶ時間を少なくしたいなら、すべてを早め早めで移動するのがおすすめ。朝一入場、早めのお土産購入、早めのお昼ご飯作戦。なぜなら展望回廊への入場待ち、お土産屋さんのレジ待ち、ソラマチのお昼ご飯が長蛇の列ができるポイントで、それぞれは諦めるわけにもいかないからだ。

スカイツリーの入場時間は決まっていても、スカイツリーグッズのお土産店は外部から入るのが可能な場所にある。ソラマチの人気店は開店前から列ができ始めるところもあり、昼ご飯の時間は早めがいい。午後から来る人の方が多いことを考えると、ランチの時間を遅い方へずらすのはあまり効果がないと思う。

ソラマチは若いデザインで蘇った和風テイストのグッズのお店がいろいろあって、テーマ性という点ではとてもおもしろいスポットだと思う。テレビの特集で放送されたせいか、早くも人気のお土産やグッズは売り切れていた。最初の週にあったのに、次の週はないものがかなりあったがまた登場するのだろう。

一回ではとてもまわり切れないスカイツリーとソラマチ、何度も行きたくなるので気長にマメに情報をチェックするのがいいかもしれない。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
< http://www.eimu.com/
>

今回グルメ情報を書ききれなかったので、最後に少しだけ。スカイツリーのふもとにあるミスタードーナッツのポン・デ・ライオンパークに寄って、ここでしか買えないポン・デ・ライオンドーナツを買って持ち帰った。周りがポンデリングで、中央がエンゼルクリーム入りのドーナツになっていて美味しくて楽しい。

・ポン・デ・ライオンパーク
< http://www.misterdonut.jp/enjoy/soramachi/index.html
>
・ポン・デ・ライオンドーナツ
< http://www.eimu.com/col/images/sky5 >