もじもじトーク[09]なんでフォントの仕事に?
── 関口浩之 ──

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こんにちは! もじもじトークの関口浩之です。

今回は、もじもじトークの原点に立ち返り、フォント(文字)のお話です。プロフィールにも書いてますが、僕は現在、フォントに関する仕事に携わっています。

といっても、フォントを制作している書体設計家ではありませんし、フォントメーカーで働いているわけではありません。

日本語Webフォントのプラットフォームを企画開発し、大手フォントメーカー各社と協業し、3年前に新たなフォントビジネスを立ち上げました。現在はエバンジェリストとして日本全国飛び回ってます。




●そもそもエバンジェリストって?

Wikipediaによると「エバンジェリスト(Evangelist)とは、キリスト教における伝道者のこと」「転じて外資系のIT企業に多くみられる、最新のIT技術を分かりやすく説明する役職についてもこのように呼ばれる。業務の一環として、講演、執筆、セミナーを主に実施する」と説明されています。

格好良く説明されてますが、実際のところは自社製品のアピール活動を兼ねているケースも少なくありません。

会社の立場としては、製品アピールをしなくてはいけないのですが、時間をさいて来ていただいた方に、フォント分野における本当に役立つ情報やビジネスのヒントになるような情報を提供することを心がけて活動しています。

また、一緒に時間を共有し、一緒に学ぶ機会をいただけることにに感謝し、楽しい空間を創造できればいいなぁと日々思っています!

●なんでフォントの仕事に?

「なぜフォントの仕事をしてるんですか?」とよく聞かれます。「たまたまです」というのが正直なところですw

4年前、iPadのビジネスアプリケーションの新規事業をやっていたのですが、社内の噂話で、Web制作者向けの新しいフォントプラットフォーム事業を立ち上げるということを耳にしました。

面白そうだなと思ってましたが忙しかったので、そんな噂をしばらく忘れていましたが、突然「面白そうな新規事業あるのでちょっと手伝ってくれないかな?」と相談があり、それが噂の新規フォント事業でした。軽いノリで「はい!」と二つ返事しました。

僕が文字おたくであること、前職でDPTシステムやプリンタの仕事をしていたことは、社内で誰も知らなかったと思います。

二つの事業の掛け持ちを半年間続けた結果、体がもたなくなりました。ありがたいことに「どっちか選べ!」と怒られて、フォント事業を選びました。

それからは、Webフォント事業の立ち上げにまっしぐらです(笑) ビジネスモデル策定、事業計画、協業推進、営業施策を考えながら、数名の開発メンバーと少人数で奮闘しています。事業は3年かけて軌道に乗り始めましたがまだまだです。

孫正義の「頭がちぎれるぐらい考えて行動してるか!」という声が、ときどき聞こえて来ますので、今後もますますがんばります。

●小さい頃の文字のお話

小中学校の頃、ガリ版で学級新聞を作成したり、彫刻刀でサツマイモを彫ってスタンプを作ったりするのが好きでした。

文字が好きだったかどうかは覚えていませんが、そういう作業をすることが生活の一部であったし、楽しかったので興味をもって取り組んでいたのだと思います。

高校生になるとタイプライターが我が家にやって来ました。

・我が家にタイプライターがやって来たの巻:
< http://goo.gl/z6g7UQ
>

カセットテープのインデックスシールをタイプライターで作成したり、きれいにレタリングしたり、はまりましたね。趣味の世界ではあったけど、いま思えば、活字や文字に興味を持った少年だったようです。

ただし、風景画や人物画、イラスト描くのはまったく才能はありません(汗)コンプレックスですね〜。うまくなりたい!

●文字の世界って楽しい

先日、欧文書体のカリグラフィ基礎講座に参加してきました。世界的にも有名なタイプディレクターから2時間のワークショップでした。目からウロコな話が盛りだくさんでした。

みなさん、欧文書体を興味もって接したことありますか? そういう人は多くないですよね〜。

では、いくつか、欧文書体の基礎講座です。

・セリフ体とサンセリフ体

セリフとは文字の飾り「うろこ」のことです。うろこの付いているのがセリフ体で、うろこが付いてないのがサンセリフ体です。「サン」はフランス語で「ない」という接頭語ですね。日本語に明朝体とゴシック体があるのと同じようなイメージでいいと思います。

・ローマン体とイタリック体

古代ローマの碑文で使用された文字を意識してデサインされた書体で、正立した立体活字です。一方、イタリック体は少し斜めになっている書体です。引用する際に使用したり、他の本文と区別したい時に使用されます。

欧文書体のほんとに初歩的お話ですが、結構、おもしろいでしょ!

「文字」「フォント」って言葉から受ける第一印象は、おたくっぽい感じがするかもしれませんね〜(笑)なかなか、普段の日常会話には登場しない話題ですが、人間は文字なしでは生きていけないのですよね〜。

●文字のことをもっと知ろう

ここ数年間、仕事でフォント事業に携わったおかげで、いろんな方々との出会いがありました。書体設計家、装丁家、グラフックデザイナー、Webデザイナーをはじめ、その業界での一線の方々と。毎日が、新しい発見と勉強です。

また、以前から興味のあった活版印刷、写真植字、謄写版(ガリ版)、タイプライターなどを改めて調べてみると、これまた、新しい発見があり楽しいです。

我々は、いま、IT(information technology)時代の真っ只中にいるわけですが、文字がなければ、プログラミングもWebサイトも電子書籍も成立しません。

古きを懐かしむという側面もあるかもしれませんが(とりわけ、僕らのようなおじさん世代には......笑)、文字のことを意識してみると楽しいですよ!

例えば、電車の中の中刷り広告の文字、テレビのテロップ文字を眺めてみてください。「おっ、この文字はうろこの付いたセリフ体だな」とか、発見がありますよ☆

●大阪DTPの勉強部屋

今週末の11月22日(土)から24(月)まで『大阪DTPの勉強部屋』というイベントがあります。僕も土日の二回、もじもじトークで登壇します。
< http://www.osakadtp.com/
>

土曜日は展示コーナーもセッションも無料です。動く写植機も展示されて実演もするそうです。日曜日の有料セッションは、祖父江慎さんと藤田重信さんが登壇されます。そちらはキャンセル待ちかもしれませんが...。

FONTPLUS:
< http://webfont.fontplus.jp/
>

来週11月25日(火)からキャンペーンやります! どんなキャンペーンなのかは当日アクセスしてみてください!

【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
< http://fontplus.jp/
>

1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。