装飾山イバラ道[151]お酒の魔法
── 武田瑛夢 ──

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「晩酌してそう。」昔まだ私が独身の頃に、会社の若い女の子に言われた言葉だ。なんともヒドいことを言うものだと思ったけれど、私は見た目ほどお酒飲まないんだからーと本当のことを言った。

ただ見た目で飲めそうに見えたのならしょうがない。その頃はまだ十分に若いつもりだったけれど、それを言われた時に初めて、自分のお局化を自覚するべきと悟ったような気がする。

今は晩酌もする。どちらかといえば、夕ご飯を美味しく食べるために飲むことが多い。ご飯の後にお酒中心に飲むのが晩酌なのか、ご飯の前に飲むのが晩酌なのかよくわからないけれど。せいぜい一日一〜二杯で陽気になって終わりなので、量は今でも多くない。料理が思いのほかうまく出来た時はとてもお酒が美味しい。

予備校時代や美大時代に、お酒を飲んで皆で語らうということを覚えた。お酒を飲むと面白くなる人、キツくなる人、泣く人、怒りだす人、そのいろいろな効能を見た。お酒を飲んでいる時だけ話が合う人もいた。

次の日になると急にそっけなくなり、あの打ち解けた雰囲気はもうここにはないと知ってさみしかった。また次に飲む機会があると仲の良さも戻る。一回お酒を飲むだけで、何か月も話をしたことのなかった人と友達になれたりもした。そういう意味では、お酒の効果は素晴らしい。




●たくさん飲む人の気持ち

「お酒の味がわかるか」と聞かれれば躊躇なく「わからない」と答えるしかないと思う。味がわかるって、何にしてもすごいハードルの高い言葉のような気がする。

味の疑問もそうだけれど、量についても疑問がある。私はエンドレスにたくさんの量を飲むことがないので、自分の限界も知らないけれど、飲んべえの人はクロールで泳ぐ距離が長くなるかのように、飲める量を増やしていっているのだろうか。

疑問なのは量を飲んでだんだんと記憶がなくなって行く過程で、手に持っているお酒の濃さももう関係がなくなっている時がありそうに思う(笑)。

お酒をガソリンに例える人がいるけれど、動いている車が止まらないように、酔いが醒めるのを先延ばしにするために、お酒を入れ続けている感じだろうか。

「惰性でしょうね。」うちの母が答えた。なんとシビアな80歳のお言葉。そう言ってしまうと終わっちゃう気がする。近くにそのタイプの人がいないのでわからないけれど、映画では見たことがある。

「聖なる酔っぱらいの伝説」という、ルトガー・ハウアー主演の作品。かっこいいオランダ人俳優で「ブレードランナー」でレプリカント役をやった人だ。一時この人が大好きになっていろいろな作品を見た。

「聖なる酔っぱらいの伝説」は、ぐでんぐでんの酔っぱらいが出て来るお話で、お酒を飲むという行為の限界点みたいな状態を見ることができる。映画だから俳優はかっこいいけれど、飲み様はだらしない。

飲まずにはいられない男の人生の一場面に、希望や輝きが混ざり込んだような映画だった。すっごく飲む人にはまた違う共感があるのかもしれない。

●ワインデー

英会話教室の予約が遅い時間しか取れなかった日、「今日は月に一度のワインデーだよ。飲む?」というようなことをアメリカ人講師に言われた。もちろん飲むと答えたのだけれど、プラスチックのワイングラスに赤ワインを一杯持って来てくれた。

月末で週末の本日のラストクラスの場合に、気楽に飲もうということみたい。このような申し出は初めてだったので今まで知らなかったけれど、生徒が飲むなら講師も飲めるようで、デスクの上に赤ワインを置きながらマンツーマンの授業を受けることになった。

やっぱり一杯でもお酒を飲みながらだと楽しく会話が進んだ。勉強とお酒の相性はあんまり良くない気がするけれど、会話とお酒の相性は良いはずだ。勉強した内容がUFOなどの信じられない写真を見せられた時にどんな返答をするかということだったので、宇宙人は信じるかという話になった。

私は基本的に宇宙人はいると思っているというと意気投合し、UFOやエイリアンの話をした。しかしUMAが通じなかった。教科書にはイエティとかカッパとかの例が出て来たので、UMAも外国人に通じると勝手に思いこんでいたのだ。

UMAは「未確認動物/Unidentified Mysterious Animal」の略だけれど、MがMysteriousだとはその時は思い出せず、講師に伝えることができなかった。家に帰って旦那さんに調べてもらったら、元々UMAは和製英語らしい。そういえばそんな感じだ。

日本のUMAの代表であるツチノコやケサランパサランの話もしたけれど、やはりアメリカ人には通じなかった。教科書に例が出ていたカッパだけは、彼がかっぱ寿司を知っていたのであっさりと通じた(笑)。

英会話でなかなかこれだけの脱線は難しいところだけれど、ワインの力もあって積極的に話せたのかもしれない。それが次につながる会話力になるかどうかは話は別だけれど。

もう一つ不思議に思っていること。自分が酔っている時に酔っている人を見るのは全く平気だけれど、自分が飲んでいない時に見る酔っている人って、どうしてあんなに残念な感じなんだろう。

人からもそう見られているんだ、私も気をつけなきゃと思うけれど、本当は人目が気にならない状態まで酔っている人が一番気持ちがいいのかもしれない。自分の不必要な冷静さを放り出すだめに、たまには飲んで大きな心を養いたい。

【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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健康オタクなところがある私は、最近アーモンドミルクを飲んでいる。アー乳と略すそれは、アーモンドからできた乳成分ゼロの飲料だ。豆乳のようにアーモンドをどうにかして絞ってあるらしい。

これも慣れれば美味しい範疇のものだけれど、すっかり慣れて、今では箱で買っている。牛乳のような胸焼け感もなく、さっぱりと美味しいしアンチエイジングにいいみたい。年齢に抗いたいのである。