装飾山イバラ道[157]アメアイの終わりを感じて
── 武田瑛夢 ──

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アメリカン・アイドルのシーズン14もフィナーレの放送が済み、優勝はニックだった。決勝まで残っていたクラークは中盤までは確実に優勝候補だったと思うけれど、途中スコット先生(レコード会社のえらい人)と方向性についてモメてしまったのがいけなかった。

マズイーと思ったファンも多いと思う。自分のポリシーを貫く姿勢は立派だったのだけれど、なんとなく堅物という印象を視聴者に与えてしまったのではないかと思う。

クラークは歌は抜群にうまいけれど、ヒットを飛ばせる人なのかをレコード会社と番組に信じさせる力が弱かったような気がする。そんなところにニックがどんどん本気を出して、抜群のパフォーマンスをみせていたから、最後にシーソーがニック側にグイっと傾いたような感じだった。ニック優勝おめでとう。

シーズン11の優勝者フィリップ・フィリップスも、売り出し方について、現在アメリカン・アイドルの番組プロデューサーと制作会社を相手に訴訟になっているそうだ。自分のやりたい方向性の音楽ができないというのは、アーティストにとって自分の道を歩いていないということなんだろう。




フィリップの優勝したシーズン11の録画は未だに消せずたまに見ているし、キラキラした優勝シーンは忘れられない。だから今になってケンカはとても残念だ。フィリップ・フィリップスは今年日本デビューもするらしいし、早くカタがついて元気な姿を見せて欲しい。

来年はアメリカン・アイドルも最終シーズンを迎えるそうだから、それまでに良い方向で決着がついて、ファイナルシーズンの本当のファイナルでパフォーマンスが見られるといいな。ここ最近のアメリカン・アイドル出身者の中では確実に活躍している人なのだから。

●番組の低迷

アメリカン・アイドルは全盛期の頃に比べると視聴率は落ちていたし、最近は類似の番組へ全部持って行かれている雰囲気だった。英会話学校でアメリカ人に聞いても、今も見ているという人はほとんどいなかった感じだ。

アメリカにおけるリアリティショーの形を作る役割を終えて、同じスタイルで続けていく意味がなくなったのだろうと思う。

会場を見てもティーンのファンが多い感じだった。ファイナルに大御所の歌手が出て来るのはいつものことだけれど、昔の紅白における演歌の時間帯みたいなものだ。

目の前の若い子たちを放っておいて、生まれる前くらいのヒット曲を歌う。テレビの前のファンに往年の大スターの久しぶりの姿を見せるのだ。日本の紅白のように、しらけてしまう層が出て来るのもしょうがない。

こんなにこの番組が好きな私でさえ、終わりが来るのも必然だと思えるポイントはいくつもあるのに気づく。

この番組の骨組みは、番組が残したい人を選ぶ前半と、アメリカが残したい人を選ぶ後半(投票)で成り立っているはずである。でも最近は、後半にも番組の意向が大きく影響し、いい子ちゃんが残る要素が強いように思えるのだ。莫大な予算をかけて作る番組の看板娘、看板息子なんだからしょうがないかもしれないけれど。

●それでも私が見る理由

私はアメリカン・アイドルのシーズン6から見ているけれど、歌が好きという以上に、審査員のコメントに学ぶ点も多かったのもその理由だ。

審査員の目の前で歌を歌った人にかける言葉に、なかなか嘘はつけない。良い部分と直した方がいい部分を考えながら伝えるのは、どんな先生でも同じ苦労だと思う。

でも、審査員を感動させるレベルまでいっている人については、何も頭を使うことなく心から褒めればいい。お互い嬉しい同士の言葉の掛け合いになる。そういう瞬間は本当に素晴らしいので、いいもの見た感がすごいあるのだ。

番組としてもそういった名場面がいつ来るか予想ができないのが、リアリティ番組の難しいところかもしれない。

私は自分でも感動して泣くことがあるけれど、番組内で見る涙もやっぱりいい。人前で歌って生きて来た人もいれば、人前で歌う勇気がなかった人もいる。そんな人が審査員の前で歌って、褒められて泣いていたりするとなんてかわいいものかと思う。

昔々の審査員、ポーラ・アブドゥルやジェニファー・ロペスなどの優しい人の涙も良いけれど、怖い方の審査員サイモンの、鬼の目に涙がたまに見られたのも良かった。厳しいことをいう人の涙って、どんなに目の奥であろうと光って見えちゃうのだ。

たぶん本当に番組が終わる来年にも、昔を振り返って考えると思うけれど、楽しみな番組が終わるのはいつもさみしいものだ。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
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錦織選手の全仏オープンテニスの試合は、久しぶりに白熱して見てしまった。観客のほとんどはフランスのツォンガ選手の応援という状況。それはクラッシュ・オブ・クランで言うところの、ヒーラーを背後につけたジャイアント「ジャイヒー」の状態に見えた。

もうジャイアントにしか見えないツォンガ選手は、観客の声援がかかるたびにファンファンと光り輝き、無敵状態だったのだ。

錦織選手は第一、第二セットの調子が悪くて、はっきりとミスと見て取れるシーンが多かったし、相手のツォンガ選手の弾丸のようなサーブと周囲の応援の雰囲気ですっかり飲み込まれてしまっているかに見えた。

それが観客席に看板が落ちるトラブルで発生した休憩時間により、錦織選手は急に自分を取り戻したようなプレーを見せ始めた。

錦織選手のあったまるのに時間がかかるところは、クラッシュ・オブ・クランで言うならウィザードのよう。体格は小さいけれどスタミナがあって攻撃のバランスが取れているのも似てる。

ジャイヒーの戦法も完璧な訳ではないし、ウィザードの良さで押し切ることもできたかに見えた。でも結果は惜しくも負けてしまった。残念。(テニスをゲームで説明してすみません)