装飾山イバラ道[159]時間感覚のジェットコースター
── 武田瑛夢 ──

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歳を取ると一年が早く感じるという。

理由はいろいろな説があって「ジャネーの法則」というものだと、人生分の1という分数で考えられていて、50年生きれば1年は50分の1なので5歳の子の5分の1とは大きさが違うということらしい。

そういった理論は他にもあってどれもなるほどとは思うけれど、私にはまだ完全に納得できるものはないような気がしている。

「アクティビティ量理論」では、歳を重ねることで新しい経験が少なくなるということが一年の早さを決めているという。初めて自転車に乗れたとか、25mプールを泳ぎきったとか、飛行機に乗ったとかの心ときめく経験。でもそんな初めての新しい経験はどんどん残り少なくなるように思う。

しかし私はまだバンジージャンプもスカイダイビングもしたことないし、潜水艦にも乗ったことがない。これらは本当にしたい訳じゃないので、きっと全部しないだろうけれど、本当に一生しないでいいのかきちんと考えたこともない。

きっとデヴィ夫人のように新しいことにチャレンジし続けていれば、一年を長く感じることができるということかしら。そのうちやりたければするだろうと思っていたいろいろなことも、考えてみるともうできないなと想像したりするのが中年の憂いなのかもしれない。




●いつかやろうと思っていたこと

昨年は今頃の時期に大阪のUSJへの旅行準備でワクワクしていたけれど、遊園地では普段はあまり使わない感覚への刺激が簡単に味わえることがある。スピード感やスリルは若返りにはもってこいだと思う。

しかしジェットコースターも激しいのは年齢制限があったりするので、中年の方は今のうちにチェックしてみて欲しい。

絶叫系で人気の富士急ハイランドでは、有名なドドンパや高飛車は年齢制限が60歳までだし、落下系では59歳までのアトラクションもある。遊園地に50代で乗れなくなる乗り物なんてあったのだ。

最近の50代なんてとっても若いのにね。子供や孫の身長制限を気にしている世代も多いだろうけれど、まさか自分の年齢制限が近づいているとは思わないものだ。

ほとんどの人はジェットコースターに興味なんてなくなっている頃かもしれないし、乗れなくても何も困らないかもしれないけれど。若返りの刺激に良いのに高齢になると乗れないというのはもどかしい。

施設側としては事故があっても困るので、ほどほどにした方がいいからだろう。見た目的には若くても、関節のサスペンションはもうパキパキかもしれないし(笑)。

私は去年のうちにUSJのハリウッド・ドリーム・ザ・ライドの逆走に乗っておけば良かったと後悔している。二回乗るチャンスがあったのに、どちらも普通のに乗ってしまったのだ。もうしばらくは行けないだろうからもうないかもなー。

ジェットコースターなんて、乗り込んだら所要時間たったの三分程度の世界だ。乗っている時は景色やスピード感や落下感で興奮状態になっている。自分があんなに高い声で絶叫することにもビックリする。

楽しくて怖くて疲れて大変だけれど濃密な三分間と言える。乗り終わってしばらくは謎の笑いが止まらないし、並んだ何十分間と余韻も含めての体験だ。

●加速して何が問題か

一年が過ぎるのが早くてなんだかもったいないけれど、人は楽しいことをしている時ほど時間が経つのが早いともよく言う。刑務所で懲役刑を過ごしている人は時間をすごく長く感じるというし、自分にとって楽しい時間なのかというのは、時間の感じ方を大きく変えるのは確かなようだ。

確かに熱中できるものがあると時間が経つのは早い。一年が過ぎるのが早いなら、その一年が楽しかったからだとはなぜ考えないのだろう。

「嫌よね〜歳を取ると」とマイナスに思ってしまう。これはこのまま加速を続けたら、残された時間があっという間に過ぎそうな恐怖から来ていると思う。残された時間に意識が向いている人しか考えない不安かもしれない。

高校へ行っていた時は、二年生になる頃に残りの学校生活がどのくらいで終わるのかやっと想像ができていたような気がする。一年過ごしてみてやっと次の一年の忙しさや楽しさが想像できる。

学校独特の一学期の長さとか、結局は季節によっても短さは全く違うように感じていた。大学の頃はスケジュール表が文字で埋まっていれば、何かしらがんばっていたろうからと安心もできた。

一年の早さは加速しても、一日の濃さは薄くはならないような気がしている。私は5月に高齢の義理の母が入院して、最近はお見舞いのために病院通いをしているので、一日の大切さが身にしみることが多い。

若い頃のようにスケジュール表に文字を埋めなくても安心できるようになったし、今しかできない大事なことをしていると感じていられればそれが一番だ。

でもこの一瞬が大切なのだ! と思えば思うほど、家では普通のことしかできないので、我ながら行動のバリエーションの狭さを感じる。

いかに今日の料理を美味しく仕上げるかとか、ネット通販のセール開催時間を忘れないようにしなきゃとか、時間に対してみなぎるのはそんな時ばかりだ。

そういえば、プロジェクターで講義している時の残り時間の調整にもみなぎっているかも。おっとりしているのに焦ると、何かとテンパりがちなのは直さなくてはならない。

生きているうちにやりたい○○のことじゃないけれど、私はまだアラフィフだけれどそろそろ項目をまとめて書き上げておかないといけないと思う。

そしてこれは自分だけでできることだけじゃなくて、周りの人たちへのお願いすることや感謝を言うこと、見せておくこととか、相手がいないとできないことも全部含まれる。

項目を書き上げながら片っ端から片付けていくぐらいがいいのかもしれない。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
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この夏は仕事部屋のエアコンを新しくしなきゃならない。なるべく買い替え時期をずらすことで、一気に何台も買わずに済むようにはしている。電気屋さんに来週からは工事が混むかもと焦らされているので、早く決めなければ。