こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。暑い日が続いてますね。しっかり睡眠とって、美味しいもの食べて、熱中症に気をつけていきましょう。
さて、四話連続の「まちもじ」特集、今回が第四回の最終話です。過去三回のテーマは明朝体とゴシック体でした。今回はそれ以外の書体にフォーカスしたお話です。
えっ、明朝体とゴシック体以外の書体って何がありましたっけ………?
●書体の分類について
いろんな分類法があるのですが、「基本日本語活字見本集成」を参考にして列記してみました。
・基本書体
明朝体
角ゴシック体
丸ゴシック体
ミックスタイプ
・伝統書体
一般書写体
古筆
江戸文字
・ファンシー書体< 装飾書体 >
クラフト
フリースタイル
ブラッシュ
ポップ
イラスト
図案風
・ニュースタイル
中国風
基本書体
・学参書体
明朝体
角ゴシック体
丸ゴシック体
教科書用楷書体
大項目と中項目のみを列記したので、これだけ見ると、なんのこっちゃ、と感じると思いますが、これは実に見事に整理された分類法なのです。
例えば、可愛らしい書体の代表書体「マティスえれがんと」を例にとると、こう分類されます。
大項目:ファンシー書体[装飾書体]
中項目:ポップ
小項目:部分的変形
百花繚乱といえる1650のも書体が理路整然と分類されているので、たとえば、「モトヤアポロ」と「はるひ学園」の書体がどこに分類されているか確かめたところ、予想がみごとに的中して本当に驚きました。
本書から引用させていただきますが、「書体群を分類するためには、書体の持つデザイン要素から細かい項目を考えるしか方法がない。ここで示したものは、多彩なデジタルフォントのすべてを分類してみようという、一つの試案である」と書かれています。
2008年2月発行の「基本日本語活字見本集成 OpenType版」を編集した柴田忠男氏に敬意を表します。そうです、日刊デジタルクリエーターズの編集長です!
実はデジクリに寄稿するようになってから数か月経った頃に、たまたま、本棚から取り出した重厚な書籍(押し花にも使える重さがあるw)の奥付を読んでいたら、見たことのある名前を発見したのでした。
一方、わかりやすく本当にざっくり分類すれば、
・明朝体
・ゴシック体
・その他の書体(ポップ、筆文字、楷書、隷書、教科書、………)
の三つに分ける方法もありますよね。
では、そのざっくりな分類である、その他の書体のまちもじを紹介することに
しましょう。
●お酒のラベルを観察してみた
こちらのまちもじをご覧ください。じゃーん!
< http://goo.gl/v4bVme
>
おおぉ、筆文字のオンパレードですね。ビールやワインのラベルは明朝体やゴシック体が多いのですが、焼酎や日本酒は筆文字が多いですね。
デジタルフォントだけでなく、手書きのデザインロゴも含まれていますが、日本酒や焼酎のラベルは、明朝体やゴシック体ではたしかに物足りない気がしますね。筆文字でドーンで漢字がいいですね……。
だけど、一番最後の猫の「清酒」の書体をご覧ください。「女性の皆さんも、おしゃれに日本酒を楽しんでみませんか〜」ってアピールしているように感じませんか!
これは「すずむし」という書体です。若手の女性タイプデザイナー豊島晶さんが設計した書体です。モリサワパスポートに収録されている、2014年新書体ですね。
可愛らしい書体であり、瑞々しさも感じます。アンバランスさもあるけど組んでみるとリズミカルで楽しい……。
今年5月にTAKEO見本帖本店で開催された「日本タイポグラフィ協会・ニューヨークタイプディレクターズクラブ」主催の「もじモジトークショー2015」で豊島晶さんにお会いしましたが、書体も素敵ですが、ご本人も素敵な方でした!
●JR東京駅のポスターは装飾書体の宝庫
JR東京駅から東西線大手町につながるコンコースのポスター、丸の内や八重洲地下街に貼られているポスターを何枚かiPhoneで撮影しました。じゃーん!
< http://goo.gl/a2zVPg
>
あれっ、水族館のポスターのこの文字、さきほどの「すずむし」ですよね。また見つけました。すずむしハンター(笑)
二番目の「夜も、山形」の文字ですが、「キリギリス」という書体ですかね。なんか、涼しそうな感じがします。
三番目のポスターですが、テレビでも話題になった「お嬢様聖水」のポスターです。この書体は教科書体ですかね……。毛筆体や明朝体よりも、この書体のほうがお嬢様っぽさがでてますよね。
●テレビのテロップ文字もファンシー書体の宝庫
テレビのテロップは、ファンシー書体[装飾書体]を観察するのに適していると思います。よく見かける書体ですね。
< http://goo.gl/HtgL5c
>
アメトーーク! という番組を観ていると、ファンシーな書体がたくさんでてきます。
わかりやすい例でいうと、「苛立っているときにはトメやうろこも尖っている書体、コミックレゲエ」「女子っぽい表現をするときにはハライが丸っこくてかわいらしい書体、マティスえれがんと」が使われたりします。怪談話をするときにはオドロオドロした書体、コミックミステリ」が使われます。
ポスターやテロップは、チラッと見たときに一瞬で訴えることが重要になってくると思うんです。なので、デザイナーさんは、イメージにあった書体選びを大切にしています。僕は書体が好きですけど、書体選びはまだまだ修行中です。
四話にわたり、まちもじを紹介してきましたが、「なんか文字って楽しいね」と感じてもらえたらうれしいです。次回の宇宙や天体の話をお送りする予定です。
【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
< http://fontplus.jp/
>
1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。
その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。
小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。