装飾山イバラ道[172]頭の中の宝を守るゲーム
── 武田瑛夢 ──

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最近、いろいろなところで高齢化の波を実感している。立ち寄る場所で高齢者を見かけることが多いし、自分の親にも自分にも体力的に年齢を重ねたことを実感するのだ。

私の住んでいる街の、最寄り駅の側には大学があるので駅前には学生が多いし、商店街にも若者のにぎわいがあるので、高齢者とのバランスはまだ取れているの方なのかもしれない。

自分が若い頃には、街の年齢層なんて特別気にもとめなかったことだ。しかし、今となれば、若者が目に付く所にいることの何とありがたいことかと思う。駅前は、春先の新歓コンパの頃には夜遅くまでうるさかったりするけれど、少々のことはしかたがないと思える。

それぞれの学生は移り住んでいくので、この街に長期的に関わることはないかもしれないけれど、若者のパワーは街に必要なものだ。この街もこれからますます全体の年齢が上がっていくだろう。自分や家族の衰えを少なくできるような手だてはないだろうか。




●脳トレのドリル

今年になって、母のために脳トレのドリルをAmazonで購入して一緒にやっている。あまり気が進まないのかと思っていたけれど、けっこう協力的なほうだと思う。どちらかというと、出来る事を私に見せたいという気力があるようだ。

問題集の答案用のノートに日付を書いて、やっておいてもらったりしている。しかし、私が事前に日付を入れて答案用のページを作っておけばやってくれるけれど、日付を書いたページがなくなると、もうやってくれないのはどうしたものか。

塗り絵は自発的にやっていたので、もっと買うかと聞くと、さほどやりたいものでもないらしい。やはり、娘につきあってくれている感じのようだ。

今は手探り状態だけれど、やった方がいいとは思ってくれているので、その気持ちがなくならないように、ほどほどに勧めてみるつもりだ。

脳トレ関係は雑誌も出ているので買ってみたけれど、これはターゲットが定年直後からのものだったようで、少々難しいものが多かった。

60代、70代、80代に向けてのものだというのでやってみたけれど、40代の私にも難しいものがあるし、夫も難しいと言っていた。

山手線の駅名をはめ込むものや、重なった文字を並び替えて単語にするものなど。見てパッと出来るレベルのものよりも、取り組みがいはあるので一緒に解くと面白い。

やはり日付を書く欄があるので、最後にやった日から何日も経っているとサボったことを自覚できるようになっている。毎日やるのが良いそうだ。

●ルモシティ(Lumosity)

アメリカでは賛否両論らしい脳トレWEBサイトで(App版もあり)、私はまだ体験版の制限付きトレーニングしか試していないけれど、何日かやってみた。

画面で動くトレーニングゲームの中では、パズルの動きや色使いのセンスはピカイチではないだろうか。画面がシンプルでとてもきれいだ。体験版は無料で、有料登録には個人のものから最大5名まで使える、家族パックのようなファミリープランもある。

・ルモシティ(Lumosity)
https://www.lumosity.com


高齢者だけでなく、働く世代が自分の反応、判断の速度や質を試したくて人気らしい。続けることで能力の向上も見込めるのかもしれない。スピード、記憶力、注意力、柔軟性、問題解決能力などのトレーニングができる。

ゲームの得点は、有料会員になると世界中のユーザーのデータと比べて、同年齢中上位何パーセントですよってことがわかるようだ。自分の年齢と結果のデータも提供していることになるので、ギブ&テイクなのかもしれない。

ゲームの内容は、例えば葉っぱの色や進む方向を瞬時に判断して、カーソルで答えを押すようなもの。マス目に表示される丸印の場所を覚えるものなどだ。

何種類ものの短いゲームから選べるので、飽きることもないし、以前やったことのあるゲームだと、点数を比較もしてくれる。得意な分野と苦手な分野があることがわかるし、睡眠時間を事前にチェックするので、脳の働きと睡眠の関係もわかるらしい。

高齢者の場合は、この「ゲームルールの説明」を理解できるかどうかも、ひとつのハードルのように感じた。画面の文字を読むだけで一人で出来るだろうか。

横にいる人に説明されればできるけれど、という人が多いように思うので、これには慣れが必要ではないだろうか。

しかし、初回は採点されない練習モードがあるので、練習でルールを把握してから本番に挑むことができる。うちの母にはこれは向かないと思ったので、自分だけでやっている。

有料登録は個人で年間6,100円と高い気がするので、まだするつもりはないけれど、継続的に頭を動かすのは運動と同じで大切だ。

ある時期になったら、スポーツジムよりも有意義な、頭の運動の習慣になるのかもしれない。体のどこをとっても大事だけれど、脳はその中でも宝と言っていい大事な部分なのだから。

この手のゲームは、やり慣れてくると成績が上がるのが当たり前なので、本当に能力自体が点数分上がったとは言い切れないものも多い。しかし、同時に何種類もの項目を判断しながらクリアしていくゲームも多いので、慣れて出来るものなら出来た方がいいと思う。

興味深いのは柔軟性という項目で、条件が複雑な時に柔軟に最適なものを選べるかというようなことだと思う。

もっとこの手のゲームをしたいけれど、無料の領域だとランダムにしかゲームが出て来ないのが辛いところ。たぶんこれ、私のようにゲームに対する探究心がある人も会員になってるんじゃないかな。

●昔からあったゲーム

脳トレって上で示したような、「試される」感じが嫌でやりたくない人も多いと思う。私も試されるのは嫌いだし、苦手なことはなおさらだ。

分析すると計算能力が低いって出たけど、そんなこと前から知ってた! ってムカついたりもする。ストレスのないトレーニングなんてないのかもしれないし、無理のない範囲でがんばることも必要だ。

しかし、昔から普通に遊んできたゲームでも充分脳トレにはなる。というより、ゲームのほとんどは脳をトレーニングしてくれるものだと思う。

もぐらたたきゲーム、的あて、オセロ、上海、などなど、無料でたくさんアプリになっている懐かしのゲームを活用しない手はない。80歳を越えた母でも、iPadのもぐらたたきゲームはすぐに出来た。出て来たもぐらを指で叩くだけ。ちょっと慣れたらもう少し判断が複雑なものを選べばいい。

最近、夫と戦っているのはiPhoneアプリで無料で出ている「スピード(SPEED)」のトランプのゲームで、昔からあったおなじみのものだ。紙のトランプでやっても面白いけれど、アプリで対戦できるのは準備が気楽で楽しい。紙のトランプだと、白熱してトランプが折れたり、どこかに吹っ飛んでいってなくしたりするし。

・スピード:トランプゲーム
https://itunes.apple.com/jp/app/supido-toranpugemu/id908600880?mt=8


「スピード」はコンピュータと対戦もできるし、他の人とも遊べる。Game Centerに接続して相手を指定して、対戦を申し込んで許可されると相手とつながる。4枚のトランプは勝手に置かれているので、普通のスピードのルールで二つの場に置かれた数字に、連続している自分の札を置いていけばいい。先に持ち札がなくなった人が勝ちなのも同じだ。

自分が勝って「You Win」の文字が出れば嬉しいけれど、負けると本気になってきて、何度も対戦してしまう。

夫は私に負けないように、事前にコンピュータとの対戦で練習してから戦いを挑んで来るのがズルい。眠気や疲れで判断も指の動きも如実に遅くなるのがわかる。

クラッシュ・オブ・クランでは戦闘意欲を失っている夫だけれど、「SPEED」では絶対私に勝ちたいみたいだ。私はおっとりしてるけどやる時にはやるのであっさり勝つこともある。でも現在の勝率では夫の方が上なので、このゲームがお気に入りのようだ。

本当は日常こそが脳トレの宝庫で、料理や掃除、何かの修理や書類整理などをこなしていれば、何もゲームに頼ることはないかもしれない。

しかし、親の代になると子供にそういう日常仕事を任せていくので、何かしら手と脳を動かすことを勧めてみるのもいいと思う。

結局は、親も私たちも「出来ることは出来るうちに楽しんでやる」ことが脳を丈夫にすると思うのだ。


【武田瑛夢/たけだえいむ】eimu@eimu.com
装飾アートの総本山WEBサイト"デコラティブマウンテン"
http://www.eimu.com/


最近またプールで泳ぐようになって、スポーツジムの高齢化も実感している。どんなコミュニティでも、お仲間がいないと高齢者は集まらないと思うけれど、少し増え始めると安心感からか増大するみたいだ。

誰かに誘われて、というきっかけさえあれば行く場所があることは良いことなので、家族も賛成するのだと思う。そして、運動によって気分が悪くなることもあるから、人の目のある所で運動した方がいいのは確かかもしれない。