こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。
みなさん、このフォントの書体名、知ってますか? そして、どこのフォントメーカーの書体なのか知ってますか?
http://goo.gl/zKdsDZ
書体名は「ラグランパンチ」です。そして、この書体を制作したのは「フォントワークス」というフォントメーカーです。
見たことある書体ですよね。テレビのテロップやマンガのタイトルロゴでよく使われています。そうそう、この書体、「重版出来」のコミックの表紙(タイトルロゴ)で使われています。
この春、放映されていた「重版出来」(じゅうはんしゅったい)のテレビドラマ、あまり視聴率はよくなかったようですが、僕は大好きでした。コミックの原作も好きですが、テレビドラマも良かったです。デジクリの読者の中にも「重版出来」フォンの人、けっこう多いような気もします……。
また、ラグランパンチは「キルラキル」というアニメでも使われています。僕の知り合いが「キルラジェネレータ」という、Webフォントを活用したスペシャルコンテンツを作ったのでご紹介します。お楽しみください。
http://goo.gl/6nDDUK
ボックスの中に4行ぐらい(1行最大10文字)、適当なテキストを入力して[送信]ボタンを押してみてください。僕は「ナイスで なう〜い ヤングな おっさん」と4行入力して送信してみました。ねっ、楽しいでしょ!
サービスは予告なく停止する場合があります、と書いてあるのでラグランパンチが表示されない際はご容赦ください。
この書体、読みやすい書体とはいえないと思います。でも、キルラキル好きな人にとって、文字を表現するのに普通の明朝体やゴシック体ではなく、この書体で表現することに意味があるのです。
このラグランパンチというフォント、通常、パソコンにインストールされていませんよね。このスペシャルコンテンツ、日本語Webフォントサーバに「ラグランパンチという書体で○○○○というテキストをブラウザに表示してくださいね」のプログラムを書いているのです。
●書体のかもし出す雰囲気
先日、静岡の「Webフォント最新事情+ワークショップ」というセミナーでご一緒したコンセントのデザイナー佐々木未来也さんが、「書体の佇まい」を理解してデザインしましょう、という表現をしていました。
▽コマンドシフトシズオカ(シフシズ)
vol.1「Webフォント最新事情+ワークショップ」
http://shifshizu.net/vol01/
広告デザイン制作に限らず、Webデザイン制作においても「書体の佇まい」を理解することはとても大事なことだと思います。
佇まいとは「そのもののかもし出す雰囲気」ということですが、アートディレクターやグラフィックデザイナーは、たくさん存在する書体のそれぞれの佇まいを理解して、意図をもって書体を選んでいると思います。
最初に紹介した例は、特徴のあるデザイン書体でした。明朝体やゴシック体においても、それぞれの書体が持っている佇まいは微妙に異なっています。ちょっとづつデザインが異なる明朝体を三つ、Webフォントで表現してみました。
http://goo.gl/ojjBlU
実はこの三つの明朝体はフォントワークスの藤田重信さんが制作した書体です。
・筑紫明朝
・筑紫オールド明朝
・筑紫アンティーク明朝
同じ書体デザイナーが制作した明朝体でも、それぞれの書体が持つ佇まいは異なります。例えば、一番上は20代の佇まい、二番目は30代の佇まい、三番目は40代の佇まいという感じでしょうか…? この三つの明朝体に共通することは上品な艶やかさだと思います。
●書体選定のポイント
この一か月間で、文字をテーマにしたセミナーに五本登壇しました。そんな中、たくさんのデザイナーさんとお話する機会がありました。
そして、各セミナーの質問コーナーで、「書体選定のポイントを教えてください」という声が必ずありました。結構、回答に困りました。でも、その答えはひとつでないと思います。
僕が感じていること、また、ディスカッションの中で導き出されたことを列記してみました。
・クライアントへ書体提案するのであれば、まず、その企業が過去に制作したあらゆる媒体で使っている書体を徹底的に調査する。つまり、会社案内、製品パンフレット、Webサイト、看板などで使われている書体を分析するということです。
・その会社の創業からの歴史、会社の社是、業態、ビジネスモデルなどを徹底的に理解する。
・その会社の現在のブランドイメージを正確に把握する。
それらの分析結果をヒントにして、意図をもって書体を選択するのがいいので
はないか、という結論になりました。ただし、たくさんの書体の佇まいや特徴
を理解しているということが、前提条件になりますが。
でも、クライアントを理解することで正しい答えがでるのでしょうか? そう
とは限りません。ただし、クライアントを正しく理解することが、書体の選定
に限らず、すべてのビジネスにおいての基本であります。
それから、以下のようなことも留意したほうがいいと思います。
・同じページでは、1書体で太さ(ウエイト)や文字サイズを変えることできれいなアウトプットになる。
・異なる書体を選択するのであれば、同じフォントメーカーの書体を使う、似ている仲間の書体ファミリから複数選択する。三書体までと考えるのが良いでしょう。
更に、その書体を使ってテキスト配置する際は、文字詰め、文章の折り返し位置や行送り量、テキストレイアウト、空間などによって、デザイン全体の佇まいが変わってくると思います。
実は、昨晩、僕が主催した FONTPLUS DAYセミナー vol.4[グラフィックデザインから見るWebデザイン]のセミナーでも同様の質問がありました。
僕は、デザイナーではないので、表現が正確でないかもしれませんが、心地よい広告ポスターには、先ほど書いた要素がバランス良く考慮されていると思います。
僕はデザインに関してまだまだ修行の身であります。これからも、文字とデザインについて勉強し、分かりやすい記事を書いていきたいと思ってります。
▽FONTPLUS DAYセミナー Vol.4 togetter まとめ
http://togetter.com/li/1002491
▽FONTPLUS DAYセミナー Vol.4[グラフィックデザインから見るWebデザイン]
http://fontplus.connpass.com/event/35272/
【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/
1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。
その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。
小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。