もじもじトーク[47]明朝体を20個並べて観察してみました
── 関口浩之 ──

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こんにちは。もじもじトークの関口浩之です。

みなさんは、明朝体とゴシック体、どちらを好んで使いますか?

パワーポイントでビジネス資料を作る時は、メイリオを使うことが多いのではないでしょうか。マックユーザーの方はヒラギノ角ゴを使ったり、フォントを購入してロダンを使う方もいるかもしれませんが……

ビジネス資料をMS明朝で作るケースは少ない気がします。実際、僕もゴシック体を中心に資料を作ります。

今回のもじもじトークは、日頃、よく目にしているけど、あまり観察したことのない「明朝体」にフォーカスしてみたいと思います。

まずは、僕が知ってる明朝体(および明朝体の系列)の中から20書体ピックアップして、Webフォントで並べてみました。はい、こちらです。じゃーん!
http://goo.gl/skEzjl




使用した書体は、「リュウミン・ヒラギノ明朝・イワタUD明朝・NUDモトヤ明朝・マティス・凸版文久明朝・秀英明朝・筑紫明朝・筑紫オールド明朝・筑紫アンティークS明朝・イワタ明朝オールド・秀英初号明朝・凸版文久見出し明朝・見出ミンMA3・マティスUB・テロップ明朝・筑紫オールド・丸明Shnano・モード明朝・秀英アンチック」の20書体です。

パッと見た感じでは、前半の10個の明朝体はどれも似ているような気がしますよね……

この20個の明朝体を眺めて、個人的な感想を書いてみようと思います。

・漢字の部分だけ見比べると、違いがよく分からないですね。僕も違いがよく分かりません(笑)

・漢字の部分だけみて、「この書体名は?」と聞かれて全部答えられる人がいたらすごいと思います。とりわけ、前半の書体(リュウミンから筑紫明朝あたりまで)の漢字の部分で書体名を見分けるのは難しいかもしれません。

・「ひらがな」の部分はそれぞれ特徴がありますね。「そ」や「な」は、かなり違いがあります。とはいえ、この「そ」を見て、「これは○○明朝です」と答えられる人は少ないと思います。

でも、凸版文久明朝の「そ」は他の明朝体にはない特徴があるので、答えられますね。

・I-OTF-UD明朝Pro M(イワタ)とNUDモトヤ明朝 Std W3は、UD(ユニバーサルデザイン)フォントなので、他の明朝体と比べて、字面(文字の大きさ)が大きいですよね。

ユニバーサルデザインとは「年齢・性別や障害に関係なく、あらゆる人が商品・サービス・住居・施設を快適に利用できるように配慮されたデザイン」ということです。イワタのWebサイトで詳しく解説されていました。
http://www.iwatafont.co.jp/ud/


・一番見慣れている明朝は、最初の二つ、リュウミンとヒラギノ明朝です。デジタル時代の明朝体の代表選手です。美人さんの明朝体ってイメージです。

・筑紫明朝、筑紫オールド明朝、筑紫アンティークはフォントワークスの藤田重信さんが作った書体です。この書体は独特の雰囲気がありますね。上品な色気を感じます。

・凸版印刷の凸版文久明朝と大日本印刷の秀英明朝の2書体は、独特の佇まいを感じます。日本の代表活字である、築地活字と秀英活字がルーツになっています。

・後半の秀英初号、凸版文久見出し明朝、見出ミンMA31は、骨格がしっかりした見出し用書体です。ひらがなが特徴的です。

・マティスUBは、エヴァンゲリオンで使用されて書体ですね。エヴァフォントと呼ばれています。

・最後のほうの丸明オールドと丸明Shinanoは砧書体制作所(カタオカデザインワークス)の片岡朗さんが5年がかりで作った書体です。

「丸明=丸い明朝体」ということで、うろこが三角でなく、丸いエレメントでできています。15年前に発表された書体ですが、今でも広告ポスターなどでたくさん使用されています。

・モード明朝は明朝体骨子で作られていますが、横線も太いデザインになっています。明朝体は通常、横線が細いのが特徴です。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」の番組テロップで、この書体が全面的に使われています。

・一番最後の秀英アンチックは、漫画のふきだしの中で使用される書体です。漢字がゴシック体で、ひらがな/カタカナは明朝体という組み合わせです。

あくまでも個人的な感想ですが、実際に明朝体を20書体並べてじっくり観察してみたら、結構おもしろかったです。

記憶が定かでないですが、自分が小中学校の頃(つまり45〜50年前ですが)の書籍、雑誌、百科事典などで使用されてた書体は、ほとんど明朝体だったような気がします。そんな身近な明朝体、みなさんも、たまには、明朝体のことをじっくり観察してみると新しい発見があるかもしれません。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。

小さい頃から電子機器やオーディオの組み立て(真空管やトランジスタの時代から)や天体観測などが大好き。パソコンは漢字トークやMS-DOS、パソコン通信の時代から勤しむ。家電オタク。テニスフリーク。