もじもじトーク[64]書体ウォッチャーという新たな称号
── 関口浩之 ──

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明日で57回目の誕生日を迎えます。パチパチパチ! あれっ、なんか、おっさんやん。これからも、元気で楽しく「もじもじトーク」を隔週木曜にお送りしますので、よろしくお願いします。

●おかげさまで3周年

もじもじトークの第1回を書いたのが2014年7月11日。おぉ、もうすぐ三年になるのですね。

正直なところ、僕は、文章を書くの、どちらかというと得意なほうではありませんでした。今もそんな気がする……。

中学の頃、数学や英語は得意なほうでしたが、国語はわりとダメでした(笑

数学や英語は、答えが間違ったとき、その理由が明確に分かるので好きなのですが、国語の場合、そうはいかない場合がありますよね。

例えば「僕はこの文章を読んでこう感じました」と回答しても、「作者はこういう意図で書いてます」と先生から言われて、得点がもらえないことがたびたびありました。

なので、読書感想文は苦手でした……。

三年前、「デジクリに記事を書かないか」と声を掛けられた時、「大変そうだけど、少なくても三年間、休まずにがんばって書き続けよう」という目標を立てました。

その目標はどうにか達成できそうです。ついでに、もう数年、頑張って続いちゃおうかなと思ってます。





●書体ウォッチャーという新たな称号

『オトナンサー』というWebメディアにて「書体ウォッチャー」として記事を書くことになりました。不定期に(一〜二か月に一回かな)、登場しますので、その時はもじもじトークでお知らせさせてください。

先月5月25日に、『日本酒ラベルはさまざまな「感情」を持っている』というテーマで配信されました。
https://goo.gl/Ez0M81


日本酒ラベルに注目して、ラベルに使われている書体を観察しました。すると、9割以上が毛筆体で書かれていることが判明しました。

【集計結果】
1位 毛筆体(筆文字) 57本
2位 デザイン書体 3本
3位 明朝体 2本

予想はしていましたが、毛筆体比率がここまで高いと思いませんでした。ちなみに、僕が調べた棚には、ゴシック体のラベルは一枚もありませんでした。

お酒のラベルをたくさん調査したので、オトナンサーの記事で掲載できなかった部分を、今回、番外編として、もじもじトークで取り上げます。

●焼酎のラベルを観察してみた

最初、お酒全体でラベルを観察したんですが、お酒には、さまざまなカテゴリー(日本酒、焼酎、ビール、ウィスキー)があることに気づき、オトナンサーでは日本酒ラベルに限定することにしました。

では、焼酎のラベルはどうだったでしょうか。

焼酎も日本のお酒ということで、やはり、毛筆体が圧倒的な強さでした。8割ぐらいは毛筆体でした。

日本酒では重厚感のある伝統的な毛筆体が多かったのですが、焼酎ラベルでは、可愛らしい筆文字や弾けた感じがする筆文字が多数です。

焼酎は炭酸水で割ったり、果汁入りチューハイもあるので、重厚感よりもポップ感を演出したい時もあるんだと思います。

そして、毛筆体の以外の書体を使うケースは日本酒よりも多かったです。明朝体やゴシック体、デザイン書体も2割ぐらいありました。僕がとくに気になった焼酎ラベルのベスト3をご紹介します。
https://goo.gl/jVsrNo


「大河の一滴」は、明朝体の骨格ですが、古印体のように、ほどよい虫喰いと墨だまりがあり、長期熟成した焼酎って感じがします。

「百年の孤独」は、美しい明朝体で、活版印刷を思わせる風合いです。百年の孤独という、ネーミングにも魅せられました。

誰もが知っている「しろ」。これは、文字もインパクトだけでなく、余分なものが排除されたシンプルなデザインの勝利だと思います。

「しろ」のテレビコマーシャル、僕、大好きなんです。尊敬する副田高行さんがプロデュースした映像作品です。

大好きなので紹介しちゃいます。映像と音楽と、ほんの少しだけの言葉と文字の作品です。
http://www.hakutake.co.jp/ad/tv/


副田高行さんの映像ワールドとキャッチコピー、片岡朗さんの丸明オールドとのゴールデンコンビ、素敵ですよね。

僕は、焼酎がまったく飲めないのですが(もともと、お酒は弱いほう)、焼酎が飲みたくなりました。

日本酒と焼酎カテゴリー以外のお酒のラベルでも、たくさん、素敵な書体を使ったラベルがありました。書体ウォッチャーが選んだ、気になるお酒ラベル、勝手にベスト3をお送りします。じゃーん!
https://goo.gl/eEwOvw


とくに、最初のタイプライターのような欧文で組まれたバーポンのラベル、逸品じゃないですか! 実際、飲んだら美味しかった。

二つ目の日本製ウィスキー、セリフ体の欧文と品のある毛筆体が、とてもマッチしています。

そして、三つ目の「水曜日のネコ」「よなよなエール」「僕ビール、君ビール。」、パッケージデザインとキャラクターの勝利のような気がしますが、書体もゆるくていいよね。

●なぜ「書体ウォッチャー」に?

小さい頃から、ホーロー看板の文字、レコードジャケットで使われている文字、コカコーラなどの製品ロゴなどが気になってました。

そして、僕のiPhoneの写真フォルダの中には、街中で見つけた素敵な文字の写真が数百枚、いつも収められています。

あれっ、すでに、書体ウォッチャーじゃん……。

なんで声がかかったかというと、とあるタイポグラフィの協会に「文字に関する楽しい記事をWebコンテンツにしたい」という相談があったそうです。

「だったら、フォントの記事を書くのが得意そうな人がいるから紹介するよ」との意見が協会員の数名から出たようです。それが、僕だったのです。

僕は、文字が好きなだけで、タイポグラフィに関しては初心者なので、推薦していただき、とても光栄でした。

編集の方といろいろ話をするうちに、「書体ウォッチャーがピッタリかも」ということになりました。

もじもじトークの記事の中では、ある時は「丸明ハンター」、ある時は「筑紫明朝ハンター」、ある時は「パルラムネハンター」だったりします。

そして、ある時は「書体ウォッチャー」として登場しますので、よろしくお願いします。


【せきぐち・ひろゆき】sekiguchi115@gmail.com
Webフォント エバンジェリスト
http://fontplus.jp/


1960年生まれ。群馬県桐生市出身。電子機器メーカーにて日本語DTPシステムやプリンタ、プロッタの仕事に10年間従事した後、1995年にインターネット関連企業へ転じる。1996年、大手インターネット検索サービスの立ち上げプロジェクトのコンテンツプロデューサを担当。

その後、ECサイトのシステム構築やコンサルタント、インターネット決済事業の立ち上げプロジェクトなどに従事。現在は、日本語Webフォントサービス「FONTPLUS(フォントプラス)」の普及のため、日本全国を飛び回っている。